教えないことの醍醐味
これまでにも何度も、教えないからこそ、子どもが自分にはなかった発想をして驚かされることがありました。
学生時代に家庭教師のアルバイトをしていた時や、その後、塾講師をしていた時などは、まずこちらが説明するところから始まることがほとんどだったので、説明のベースになるのはこれまで自分が習ったこと、経験したことになってしまいますから、教科書などに出てくることもなく、先生から教わることもなかったことは、気づかぬまま通り過ぎていることも少なくありません。
つい先日も、これまで自分どころかどの子も辿り着かなかった(もしくは、きっかけがあれば辿り着いていたかもしれないのに、私の頭の中にない発想だったので、それ以外のものが出てきたらそれでマルを付けて完了していた)答えを見せてくれた子がいました。
正三角形や二等辺三角形など、色々な三角形を組み合わせてできる四角形を考えるというものだったのですが、同じ直角三角形2つを組み合わせてできる四角形は、長方形、平行四辺形、凧形(小学生だと名前のない四角形の扱いで可)。これまでその3つのイメージしか浮かんでおらず、子ども達もそれ以外のものを見せてくれたことはなかったと思うのです。
しかし、その問題で悩んでいた子に直角三角形のプレートを2つ渡して、実際にあれこれ作って考えてみてもらったところ、ちょっとバランスの悪いブーメランのような形を作ったのです。
自分の経験上、同じ長さの辺をくっつけなくては四角形はできないと思ってしまっていたのですが、どちらも直角を持っているので、長さが違うところでも、直角が合わさって180度になるように使えば、辺の数が増えず四角形になるんですね!
大学などで数学を学んだようなバリバリの方にとってはもしかしたら当たり前のことなのかもしれませんが(もしかしたら、どういう形は作れるけれど、どういう形は作れないなどの証明とかもあるのかもしれませんし)、空間認知能力は持って生まれなかった身で、理系には進めなかった私にはそれを作った子に心から「すごいね!」と言えました。何度も褒めて、感心したので、その子も嬉しそうで、そのほかの問題ももっと何かできるのではないかと一所懸命考えてくれました。
その子はどうかわかりませんが、そんな風に、教えられたわけではない上に、大人が気づいていないことに気づいて称賛されるという経験は、算数がより好きになるきっかけになるのではないかと思います。そういう意味でも、説明から始めないということはとても大事なことではないでしょうか。
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