今週のレッスンでまたも不安になることが…。
恐らく素質的にはかなりいいものを持っているのだろうと思われる低学年のお子さんがいるのですが、そのお子さんは教室に来てくれる以前からご家庭で算数を先に進めておられたようです。
そのため、来てくれた段階で、計算などは随分先のことまで知っていて、その他のことも教室でするより先に知っていることが多いのです。
そのご家庭はここの教室の趣旨をご理解くださっているはずなのですが、中学受験をさせることは間違いないようですので、早くから先に進んでおいたほうがいいとお考えなのだろうと思います。
ただ、算数を先取りして学習をする場合、ほぼ例外なく、問題集などでやり方を説明してあるものを読んで、それを真似て解くことになりますから、意味を考えなくても、書かれていることを真似れば答えは合うということがしばしば起こります。そして、そんな形の勉強は子どもにとってほとんど力になりませんし、時間が経てばやり方も忘れがちです。
先週のレッスンでその、本来賢いはずのその子はどちらが長いかを比較する問題で、不等号を右に開いたかと思えばこちらを見て、左に開き直すというようなことをしていました。それでは意味がないということを真剣に話したのですが、今週もまだそんなことをしようとしました。
何度でも言うしかないのだろうと思いながらも、先取り学習をするにしても、考えて意味を理解しながら進めていればこんなことを言う必要もないのになと悲しくもなりました。
例えば、そういう子は珍しくはありませんが(うちの教室ではほぼいませんが。)1mは何cmかというような単位換算の問題で、「10cm?100cm?」などのように答えを聞いてくるということがあります。聞いて教えられれば、そこから比較することはできるとしても、聞かなければわからないのであれば、テストなどの際には役に立ちません。
定規でmmやcmを測ったり、線を引いたりして体感し、その後巻き尺などでmについても体感し、そういう学習をした後であれば、自分の身長は1mより長いとかいうことも理解できるようになるはずです。
そうやって、段階を経た後であっても、速く答えを出すことを習慣づけてしまうと、じっくり考える前に適当に答えを書こうとしてしまう子は珍しくありません。その子の頭には長さのイメージが全く浮かんでいないのです。
今週のレッスンで、1001mmと1mの比較や、8765mmと87mの比較の問題で、もちろん難しいのですが、またも左にしたり右にしたりと、答えを何度も変えようとして、1mが1000mmだと分かった後でも、8765mmは87mだと答えるような状態でした。
それらは何度かやり取りをしてどうにかきちんと説明してもらうことはできましたが、なんと、4m8cmと49cm3mmの長さの比較に、49cm…の方が長いとしたのです。
結局、その子の頭には全く長さのイメージがされぬまま、単に数字の変換として、1mは100cmで1000mmだったな…という風に覚えているだけなのだろうと思います。
何度やり取りしてもぐっと考える表情に切り替わらず、悲しい気持ちになりながら、これで無理なら今日もこれは保留だなと思ってこう尋ねてみました。
「4m8cmって、○○くんの身長より長い?短い?」
1mの長さをイメージできている子(教室では巻き尺などで実際に見てもらっていますし、その子にも20mの巻き尺を1m、3m、…と20mまで全部出して見てもらったのですが。)なら、すぐに身長より遥かに長いというでしょう。
その子はようやくそこで少し立ち止まって考える様子を見せ、「長い」と言ったので、「どのぐらい長い?ちょっと長いぐらい?ずっと長いぐらい?」と尋ねると、「ずっと長い」と言いました。
そこで続けて、「じゃあ、49cm3mmって、○○くんの身長より長い?短い?」と尋ねました。
その子の答えはこちらの方が長いことになっているわけですから、その答え通りだと「長い」と答えて、それも先ほどより更にもっと長いと答えなければならないはずです。
しかし、ようやくそこでまた少し立ち止まって考えた後、「短い」と答え、「ちょっと短いぐらい?だいぶ短いぐらい?」と聞くと、また少し考えてから「だいぶ短い」と答えました。
つまり、その子は考えられないわけではないのだと思います。ただ、普段考えずに答えを出すことが癖になっていて、簡単には切り替わらないのだろうと思うのです。
どうすればいいのか、少し悲しい気持ちになっています。
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