考えない子に
教室に来てくれている子達の中に、これまで速く解くことに意識が向いて、じっくり考えることが苦手になっている子が、過去にもいましたし、最近も何人かいます。
そういう子達は、ぱっと読んだだけではわからないような問題に出合うと、しばしば「これ足すの?」などと、何の計算をすればいいのかを尋ねてきたりします。
そういうとき、私は大抵「さあ、どうやろね」などのようにはぐらかし、「たすと思うんならたしてみたら?でも、答えが合ってても違ってても、なんでなのか説明してもらうよ?」とか、「自分でこうやと思うことをしてみたらいいんじゃない?」とか言ってみます。
考えられない程度がひどい子の場合はそれだけでは本当にどうにもならないこともあるので、それはその子の様子を見ながら助けるところは助けますが、とにかく、自分で考えさせる。わからなければ式は書かなくてもいいから絵を描いたり何をしてでも答えを考えるよう促すなどしてみます。
ただ、これまでゆっくり時間をかけて考えるということをあまりしてこなかった子は、どうやって考えたらいいのか本当にわかっていないこともあるので、そういうときには問題を読みながら、時には身振り手振りも交えて、問題に書かれていることをイメージさせるようにします。(小さい子の場合は問題の登場人物をその子やその子の家族など身近なものに置き換えて問題を読んであげるのも効果があります。)
今週のあるレッスンで、3年生さんがちょっと面倒な文章題を読み終えたかどうかの段階で「これ足すの?」と聞いてきました。実はその問題は、一度の計算では終わらない上に、学年を考えると決して簡単ではない問題でした。
出てきた数を全て合わせてから割り算をするのですが、割り算も余りがあり、最終的な答えは余りの分を1切り上げるというものでした。
はなから考えていない様子だったので、「ちょっと想像してみてよ。読まなくなった本を集めて寄付するとかって、そういうことすることあるでしょ?まだしたことないかもしれないけど、小さい頃に読んでた絵本とか、もういらないけど捨てるのもったいないから寄付しようってことになって、班ごとに集めたのよ。で、集めた本を10冊ずつ箱に入れていくって、想像してみてよ。」そんな言い方をしてみました。
すると先ほどまでとは表情が変わり、班ごとの本の数を全部たした後、本の合計を10で割る式も書くことができました。そして、割り切れなかったあまりも書いて、最後はどうするかなと見ていたら、きちんと割り切れなかったあまりの本を入れる分、1箱増やして答えを書くこともできました。
じっくり考えたことがない子にただ「考えて」とか「よく考えて」とか言ったところで、どうすればいいかわからない場合があります。絵を描いてと言っても何を描けばいいかわからないこともあります。
だからといって、こう考えなさいとか、こういう風に描きなさいとか教えてしまうのは、結局子どもが考えたことにはなりません。やり方を真似た、覚えたということです。
絵を描いてと言っても手が全く動かない、考えてと言っても何をしていいかわからない、そういう子には、問題を読んであげながら、想像してねとか思い浮かべてねと言ってみるのもひとつの方法だと思います。
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