もしかしたら生まれて初めて感じたこと。
少し前から、事情があって小学校の頃からほとんど行けないまま中学生になった子と一緒にレッスンをさせてもらっています。
そんなに長い期間学校で勉強をしないとどういう状態になるのか、これまで考えたこともありませんでしたし、また、学校に行かずとも、自宅やその他の場所で学ぶことはできますから、学校という場所で「授業」を受けることなく成長すると、何をどれだけわかっていて、わかっていないものなのか、全く見当がつきません。
その子とのレッスンでは、何をするときにも既に知っているか、やったことがあるかを尋ねてから、様子を見つつ進めていくようにしているのですが、掛け算は九九の範囲はほぼわかっていたものの、その先はきちんと学んだことはなかったようで、また、割り算についてはこれまで学んだことがなかったそうです。
ただ、例えば2年生の年齢の子に掛け算を、3年生の子に割り算をそれぞれ指導することに比べると、これまで経験していることや精神面での成長などもあるのでしょうか、初めてだということでも、比較的短期間で理解してくれる場合が多いようには感じています。
そして、今回のレッスンでその子にとっては初めて「割り算」を学ぶことになったわけですが、実際、初めに様子を見ていると、分けるというようなことはもちろんわかってはいるものの、割り算というものについては本当に真っ白の状態のようでした。
少し不安そうな表情をしていたので、「まだちょっとモヤモヤしてるんよね?もう少しやったらスッキリすると思うよ。」と声をかけながら、うちの教室に通ってくれている子であれば、普通は2年か3年の初め頃までにやる教材で一緒に割り算のレッスンを進めました。
すると、最初のうちやっていたことは意味がわかっていたようですが、途中で少し混乱したようで、また不安げな顔になり、そこでまた教具を出して、それを見せながら確認すると、解くペースはゆっくりながらミスがなくなっていき、レッスンの終わりには九九の範囲の割り算についてはその子なりに意味を理解したようでした。
今回のレッスンに来るまで割り算を知らなかったその子が、ほんの1時間後には割り算の意味を理解し、比較的スムーズに計算ができるまでになりました。
その子が帰った後、ふと、これってすごいことなんじゃないんだろうかと。
その子はもう中学生ですから、一般的に言えば同年齢の子達はもうとっくの昔に割り算ぐらい当たり前にできるよ!という状態になっているわけです。でも、その子は今日まで何年にも渡って、「掛け算は知ってるけど、割り算は知らない」ということを心のどこかで引け目として感じていたかもしれません。
それが、たった1時間でその子の世界に「割り算」が加わったわけです。それも、授業で先生に有無を言わさず教わって…というような学びではなく、自ら学びたいと求めて出来るようになったわけです。
普段も子ども達と一緒にレッスンをさせてもらえることはとても幸せなことだと思っていますが、普通ならとっくに習っているはずのことを何年も知らずに過ごした子が新たな学びをしたその時間を共有させてもらったことが、なんだか殊更に尊い時間に思えて、涙が出そうになりました。
まだまだこの先もそんな時間を何度も共有させてもらえるんだなと思うと、本当に幸せなことだなと思います。
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