嬉しいけど悲しい
今日、ある小さな子とレッスンをしていたときのことでした。
その子は以前、他の教室に通っていたことがあるとのことだったので、うちの教室では初めてやることでも、もうやったことがあるものもあるのではないかと、何かしてもらう前に「これ、知ってる?」とか「これ、やったことある?」とか尋ねるようにしています。
これはその子に限らず、既にできることをあれこれ言われるのは面倒でしょうし、時間もムダになりますので、既に知っていることやできることはまずやってみてもらうようにしているからです。
で、あるプリントをその子はやったことがあると言ったので、まずはやってみてもらうことにしました。
ただ、どうも表情が不安げだったので、やり方や考え方を教えるのではなく、まず1問目の問題の選択肢のひとつを指して「これが答えかもしれない?これにはならない?どっちかわかる?」というような感じで尋ねたところ、ほんの少し考えて「ならない」と言ったので、「じゃあ×してくれる?」と言い、また次の選択肢を同じように尋ねたところ、今度はもう少し考えていたので「答えかもしれない?」とだけ尋ねるとうなずきました。そこで、「じゃあ、これは答えかもしれないからちょっとそのままにしといて、これはどう?」と更に次の選択肢を指すとさっと×を書いたので、最後の選択肢へ。そこでまた少しためらったので、「これかもしれない?」と尋ね、うなずくのを確認してから「じゃあ、これとこれ(先ほど×をつけなかった2つ)はどこが違う?」と尋ねてその2つの違うところを見つけてもらい、「じゃあどっちになりそう?」と。
すると、少し考えてきちんと正解を選ぶことができました。更に「どうしてこっちは違うの?」と選ばなかった方を尋ねると、何が違うのかそれもきちんと説明することができました。
同じ要領でもう1問やってみてもらい、それが正解になった時点で先ほどより表情が明るくなり、次の問題からは私が手伝わなくても、今一緒にやったように自分できちんと考え始めました。
そして、次々と正解していきます。
1問正解するたびにどんどん表情が明るさを増し、半分済んだところで教室におられたお母さまに「ママ!できた!」と言って更にやり進め、全て正解になったところでもう一度、「全部できた!」とニコニコ、満面の笑みでお母さまに報告。
そこまでは、ああ、本当に嬉しいんだな、こんなにニコニコしてくれて私も嬉しいなと思っていた次の瞬間、私の方を向いたその子の口からは
「あの先生(私は存じあげない方ですが…。)のところでは全然できなかったの。」
との言葉が出たのです。
その言葉を聞いた瞬間、泣きそうな気持ちになり、なんとも申し訳ない気持ちにもなりました。
その子が取り組んだ問題は小さい子でも具体物を使いながら一緒にゆっくり考えれば、できない子はまずいません。少なくともうちの教室に来てくれた子で、一緒にやってもそれができなかった子はひとりもいません。
もちろん、やり方を教えたわけではなく、具体物を使って実感して感覚的に理解できるようになったという感じです。
そういう、日常の中でも経験できるようなことに関わる問題が「全然できなかった」と小さな子が思ってしまうようになるなんて、どんな授業をしておられたのだろうと悲しいような腹立たしいような気持ちになりました。
でも、幸いまだ小さい子なので、できるようになるのも早いですし、できるようになれば自信が持てるようになるのか、来てくれた頃と比べても、取り組んでいるときの表情が明るく楽しそうなときがどんどん増えているように感じます。
その子の笑顔がもっともっと増えるようがんばろうと思います。
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