今日はあるご姉弟さんの体験レッスンをさせて頂きました。
高学年になったお姉ちゃんとまだ低学年の弟さんで、おうちの方からどういう状態なのか少しお話を伺った上での体験レッスンだったのですが、弟さんはこの感じだと、5を超えてくるとまだ数と具体物とがリンクしておらず、それで苦労しているのかなという印象で、本人がこの学習法でやってみようとさえ思ってくれれば、比較的早いうちに学校の進度に追いつけるのではないかなという印象でした。
おうちの方のお話だと弟さんの方が苦戦しているのかと思っていたので、なんだ、この感じならさほど心配いらないなと思ったのですが、一方のお姉ちゃんの方が、問題に出てきた数字を、適当に足したり引いたりしているような感じだったので、体験レッスンでありながら、いきなりちゃんと考えず、ただマルをもらえたらというお勉強は自分の役に立たないのだという話を少しして、慌てなくていいのでじっくり考えてと伝えました。
ですが、これまでやり方を教わってその通りにやるという勉強を積み重ねてきたからなんだろうなという感じで、その姿を見ていて、ああ、そういえば、こういう状態の子は世間一般にはちっとも珍しくないんだったなと、そんなことを思い出しました。
今でこそ、じっくり考えるのが当たり前、わからないのになんとなくマルになって先に進んでいくのは意味がない、そういうことが日常になっていますが、塾講師だった頃も教室を初めて数年の間にも、出てきた数字をとにかく適当に足したり引いたりかけたり割ったりする子は珍しくありませんでしたし、文章題になると、それまでスラスラ計算を解いていた子とは思えないぐらい完全にお手上げになってしまう子も何人も見ました。
そういう子達の多くが、小さい頃からやり方を教わってその通りに大量に反復してマルをもらうというような勉強をしており、「習ってないからわからない」と問題をろくに読まないうちから言ってしまったり、とにかく何か計算をしてみて、違うと言われればまた別の計算を、それも違えば更にまた別の計算を…ということをしてみたりという感じでした。
その状態の子達を自分の頭で考えるように変えるのは、学年が上がれば上がるほど時間がかかる感じで、おうちの方もよかれと思ってさせ、子どももコツコツ真面目に努力して、その結果が「考えない頭」になってしまう可能性が少なからずあることに悲しさと憤りを何度も感じたものでした。(とりあえず算数に限っての話ですが。)
今日のその子は2100円の本2冊と735円の本1冊を買って、1万円出したらお釣りはいくらかという問題を考えてもらったとき、内容としては学年を考えるとおさらいになるはずなのですが、「2100+2100=4200」の式の次に「4200-735=」と式を書いて計算し、それを答えに書こうとしました。
そこで、「その4200っていうのは何を表してるの?」と尋ねたところ、「2100円が2冊だから」とそこは答えられました。であればすぐ気付くのではと思ったのですが、なぜかその後が全く続きません。
そこで、買ったものの絵を描いてもらうことにしたところ、長方形を3つ、それぞれに「本」と書いて、その下にそれぞれ2100円、2100円、735円と何も言わなくてもちゃんと書いてくれました。
これが書けたなら自分の式がおかしいことに気づくと思ったのですが、「あ!」という反応が出ません。
そこで、絵を指しながら、4200円は2冊の本の値段、735円はもう1冊の本の値段、それを引いたらお釣りが出てくるのかを尋ねたところ「うん」と。
え?お釣りの意味を知らないの?と思い、「80円のもの買って100円払ったらお釣りがいくらかわかる?」と尋ねると「20円」とこれはすんなり。
ということは意味は分かっています。
数字が大きくなっているからぴんと来ないのかなと思い、駄菓子屋さんで10円の飴3個と30円のチョコレート1個買って100円払ったらお釣りはいくらかになるかを考えてもらうことにしました。
それでも初めは何かおかしな計算をしていましたが、どうにかお釣りが40円だとわかり、その後先ほどの問題に戻ったところ、ようやく本3冊分足し算をすることはできました。
そこからまた少しやりとりはありましたが、どうにか答えを出すことができました。
初めてで緊張していたこともあるのかもしれませんし、今日はたまたま疲れていたというようなことでも、普段できることが全くできなくなったりもしますので、この1回だけで判断はできませんが、もし普段からこんな状態なのであれば、高学年になっているだけに算数の授業がどんどん楽しくなくなっていくのではないかと、少し心配になりました。
ですが、やり方を教えてくれてその通りにしたらマルがもらえるという、あまり負荷がかからない勉強に慣れていると、じっくり考える学びは初めのうちはとても疲れるだろうと思います。
ですから、彼女は楽しかったとは感じていないだろうなと。
ということもあり、ご縁が頂けるかどうかはわかりませんが、もし一緒にがんばってみようと思ってもらえたら、私も一所懸命がんばりたいと思います。
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