ゆっくりじっくり
自分もいわゆる「教育産業」の端っこの方には引っかかっているので、なかなか難しいところではありますが、同じ業界の色々な話を聞くにつけ、なんとも複雑な気持ちになることが少なからずあります。
例えば、中学受験の塾といえば、ほとんどの方が思い浮かべられるであろういくつかの大手塾がありますが、その大手塾は僅かな差はあるにしろ、ほぼ全て同じようなカリキュラムで同じようなことをしていますから、中堅の受験塾なども結局はそれに倣ってしまい、その結果、中学受験を考えておられる保護者の方の大半が、あれをやらないと受験には合格できないと考えてしまいがちです。
ただ、あの方法が決してよい結果を生まない場合が少なからずあるということは概ね間違ってはいないだろうと思います。
もちろん、あの方法がばっちりはまるお子さんも少しはおられるでしょうし、どんな方法でも悪い影響を受けないほど飛びぬけたお子さんというのもおられるでしょう。
ですが、恐らく少なくない割合で、特にそういう学習を続ける年数が長ければ長いほど、何らかの悪影響があるのではないかと思います。
これは中学受験の塾にとどまらず、少子化で生き残りをかけているのかもしれませんが、だんだんと低年齢化し、中には幼稚園のお受験や小学校受験でさえも、テクニックを教え込み、大量に反復をさせるという方法をとっている塾や教室もあるようです。
よそのお子さんが早くからお勉強の教室に通っていると聞けば、大切な我が子が遅れをとっては可哀想と思われる保護者の方も少なくないでしょう。
その結果、早くから子どもを囲い込みたいと思っている塾や教室のニーズが満たされるということになるのかもしれません。
そして、そういう方が増えるにつれ、それが普通ということになり、ますます早期教育が過熱していく可能性もあります。
少し前までは中学受験といっても5、6年の2年間塾通いというのが一般的だったのではないでしょうか。
それが少子化が進んでいるはずなのに、今では4年生からが当たり前で、更には3年生から始めないと出遅れますよなんて話もあったりするようです。
それはどんな根拠があってなんだろうと思えてなりません。
こういう話の厄介なところは、子ども達はひとりひとりそれぞれに違いますから、同じ子どもを使って比較をすることができないということです。
全く同じ子どもに異なる方法で学ばせた場合の結果の差を比較できれば、話はもっと簡単になってくるのだと思いますが、それができない以上、可能性としての話しかできないわけです。
それでも、もともと持っている能力が抜群に飛びぬけているようなお子さんの場合は別として、多くの場合、幼少期は机上での学びよりもっともっと大事にすべきものがあるのは間違いないと思いますし、先を急ぐあまり、子どものペースを無視して必死に手を引いたり、お尻を叩いて早く進ませるのは、多くの場合悪影響はあっても、よい方向へ進むことはまずないと思います。
これまで教室に通ってくれた子ども達を見ていても、それはほぼ間違いないのではないかなと思います。
小さい頃はゆっくりゆっくり。
子どものペースに合わせて、大人はそれを少し離れて見守りながら、本当の本当に必要なときだけ最小限の手助けをする。
そして、受験を意識し出しても、もちろんお子さんのタイプにもよりますが、詰め込みのパターン暗記のような学習はできるだけ先延ばしにする。
そういうことが子ども達にとって大切なのではないかなと思います。
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