「覚えなくていいの?」
今日のレッスンでのこと。
5年の終わり頃から来てくれるようになった6年生の女の子とレッスンをしていたときのことです。
彼女はそれまでにも塾に通っていたものの、どうも数量感覚がアヤシイと心配されたおうちの方がうちへ移ることを決めてくださったという経緯の子で、当初は確かに数量感覚も単位換算もあやしく、ちょっと心配な状態でした。
ただ、とても真面目な子で、塾に通っていたときも学校の授業でも、習ったことを一所懸命覚えてその通りにやろうと努力していたようで、算数に関してはそのことがあだになっていた面もあるだろうと思います。
うちに来てくれるようになって最初は図を描いてもらうだけでも、バランスがおかしかったりと色々苦労がありましたが、徐々に感覚がついてきて、当初に比べると随分図も描けるようになり、考える力もついてきたように感じます。
そんな彼女とのレッスンで、列車がトンネルに完全に隠れている間や鉄橋にさしかかって渡り終えるまでの間の時間が与えられていて、速さを求めるという、やや応用の問題を考えることになりました。
普段は例題や解説は読ませず問題に行くことが多いのですが、応用で問題量が少なかったので、とりあえず例題のところを読んでみるよう促しました。
すると、真剣にそれを読んだ後、「このやり方を覚えたらいいの?」と尋ねてきたので、もちろんそんなつもりで読んでもらったわけではなかったため、即、「覚えなくていいよ。覚えんといて。」と言うと、「え?!覚えなくていいの?」と驚いたように言いました。
「やり方覚えたら忘れるでしょ?覚えなくていいから、絵描いて。」
そう言うと、「わかった。」と言って絵を描き始め、問題にあった絵が描けると、その後はどう考えたらいいかほぼ間違えずに理解できたので、少しずつパターンが違う問題も引っかからずにクリアすることができました。
もしこの問題を、先に図を描かせることなく、やり方を覚えてやってみてと言った場合、どの場合に足し算、どの場合に引き算、どの場合は何もせずで割り算をすればいいのか、ごちゃごちゃになる子が多いだろうと思います。
しかし、図を描いて、列車や車などの先頭部分の移動距離を意識するようにすれば、間違いは格段に減るはずです。
小さい頃からうちに来てくれている子たちは、算数は覚えるものではなく考えるもので、覚えるのは語句や記号など必要最低限のものでいいと思っているはずですが、学校や一般的な塾、教室などで学んでいる子たちの多くは算数も「覚える教科」になってしまっているのではないかと思います。
覚えることがとても得意で苦にならないという子であったり、どうしても算数が苦手で考えることが困難だという子などは別として、多くの場合、暗記した知識はよほど反復しない限りこぼれ落ちていきますし、混乱もします。それが原因で算数が苦手になったり、嫌いになったりということも、実際には起こっているのではとも思います。
覚えなくても考えればできることは覚えない。
そのぐらいのつもりで算数を学ぶと、算数はきっともっと楽しくなるのではないかなと思っています。
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