少し日が空きました。
そして、書きたいこともいくつかの方向に分かれています。(まあ、特に書かせて頂きたかったことはほぼ書かせて頂きましたが。)
今日は、これまでとは少しだけ違った方向で。
もうひと昔ほど前になるでしょうか、「話を聞かない男 地図を読めない女」という本がベストセラーになったかと思います。
その後、「男脳・女脳」という言葉がある程度広く知られるようになり、また、脳科学の研究も進んで、それまでは知られていなかったことも知ることができるようになったりもしました。
「話を聞かない…」の本を読んだとき、その中に自分の脳がどちら寄りかを判定するテストのようなものがついていたのですが、そのときの私は見事にニュートラルゾーン。
男でもなく女でもなくの位置だったように思います。
あの本を読んだとき、へぇ~と思ったことは色々あったのですが、「男脳」の持ち主は同時に複数のことを行うのが苦手であったり、「女脳」の持ち主は空間認知の能力が弱かったり(だから、地図は進行方向に向きを変えないとうまく見られないとか…)などということが印象に残りました。
実際、私は地図を見るとき、進行方向に向けないと見づらいですし、空間認知の能力もあまり高くない自覚があります。
中学生の頃、立方体の切断の問題で、断面がどんな形になるかがどうにもイメージできず、それは塾講師になってもそう改善されることはありませんでした。
ただ、想像できないものはわからないのだし、私のように想像できない子も少なからずいたので、授業などの際は発泡スチロールなどを実際に切って見せたり、事前に自分で何かを切って確かめたりということをしていました。
展開図の問題も苦手で、組み立てたらどの面がどの位置にくるか、どの辺がどの辺とくっつくかなど、いつも苦労していました。
子ども達が取り組むプリントの中に、立方体の積み木を色々な形に積んだ図を見て、積み木が全部でいくつ使われているかを考える問題が最初の頃に頻繁に出てくるのですが、教室を始める前、事前に全てひと通り解いてみようとしたとき、私自身、全体を見て数を捉えるのは困難で、ひとつひとつ数えていました。
その頃には社会に出てから随分と歳月も経っていましたから、脳の発達という面から考えると、そんな頃からいくら努力しても、そうそう成果は出ないと考えられているだろうと思いますし、私も期待はしていませんでした。
しかし、何度も何度もそんなプリントに取り組み、実際に積み木を積んだりもしていくうちに、いつの間にか初めの頃とは比べ物にならないほど(もちろん、得意な子達にはまだ追いつけませんが)速く数がつかめるようになってきました。
更に、立方体の展開図などの問題も、初めの頃に比べると随分イメージできるようにもなりました。
こんな年齢からやり始めてもこの程度は改善されるんだなということに少し新鮮な驚きを感じながら、教室の子ども達を見ていました。
すると、やはり一般的に男の子に比べて女の子の方がそういう類の問題は苦手とするようではあります。(もちろん、脳のつくりに関係しているようですから、性別とは必ずしも一致するわけではなく、男の子でも空間認知が苦手な子もいますし、女の子でもそういうのが得意な子もいますが。)
ただ、小さい頃からそういうものに慣れ親しんでいるからか、女の子だから極端に弱いというような子にはこれまで出会っていません。
むしろ、恐らくですが、ほとんどの女の子が女の子としては平均以上にできる子が多いのではと感じています。
その昔、まだ塾講師だった頃、ある男性講師が空間図形などを実際に見せるのは意味がないとおっしゃっていました。
また、空間認知系の問題はできる子はできるけど、できない子はできないとどこか諦めてかかっているような先生も少なからずおられました。
自分のことを振り返っても、それが苦手だからといっても、ではどんなことをすればいいかを教えてくださった方はおられませんでしたから、苦手なまま大人になったわけです。
ただ、今はその能力も意識すればある程度まで伸ばすことが可能なのだと考えています。
すっかり大人になってしまった後の自分でさえある程度能力を伸ばすことができたわけですし、教室の子達を見ている限り、小さい頃から意識的に働きかければ、さほど苦手にならずに、場合によってはかなり得意になれるのではと思います。
計算中心の問題に関してはドリルや一般の問題集など、いくらでも簡単に問題を手に入れることができますし、簡単に子どもに与えることもできます。
しかし、空間認知となると、そういうのが好きな子であれば小さい頃にレゴやプラモデルなどでたくさん遊んだりということもあるでしょうけれど、女の子に積極的にそういうもの買い与えるご家庭はそう多くないかもしれませんし、仮に買い与えてもさほど興味を示さないかもしれません。(そういうものが好きな子は多分空間認知もある程度できるのではないかと思いますし。)
そうなると、放っておくと苦手な子は苦手なまま成長し、いざそういう学習に直面したとき、全くイメージできずにお手上げになってしまうということもあり得るだろうと思います。
勉強の多くは、それができないからと言って実生活ではさほど困ることはないかもしれませんが、空間認知に関しては、得意であるに越したことはないような気がします。
何年か前、昔から親しくしている友人が買ったばかりの靴を箱から出して見せてくれた後、それを箱にどう戻したらいいかわからず苦労している姿に驚きました。
彼女は英語などが堪能で大学を出た後外資系の会社などでもバリバリ働いているような人なのです。
でも、どうやら空間把握がすごく苦手だったようで、私が難なく靴を箱に戻すと、尊敬のまなざしで見られました。
また、以前テレビで一定の空間に一定量の荷物を納めさせる実験をしていて、何人かの女性に、どういう順でどこに何を入れればいいかを考えながらものをしまわせていったのですが、真剣にやっておられるようなのに、え?それをそこにってのはあり得ないのでは?というようなところに配置し、納まりきらなくなったり、なんとか入ったと思ったらガラガラと崩れてきたりというような番組を見たことがあります。
ほかにも、スーパーなどで買い物をしたとき、どう考えてもそんな大きな袋でなくてもいいのでは?と思うのに全くサイズの合わない袋を出してくる店員さんも時々おられます。
要するに、それらの能力も空間認知の能力に関連しているはずで、そう考えれば、ある面では難しい計算問題が解けるよりずっと重要な能力なのかもしれません。
そして、その能力はある程度までなら伸ばすことが可能なのではないかと考えています。
小さい頃から先ほど挙げたレゴやプラモデル、積み木などで立体を作って遊ぶであるとか、箱を組み立てたり切り開いてみるであるとか、お豆腐やお野菜などを切るときに意識的に断面を見せてみるとか、そういう経験の場を増やしてあげることで、苦手な子でもある程度イメージできるようになってくるだろうと思います。
一概には言えませんが、数学の先生はそういう能力が高い方である場合が多く、苦労せずにイメージできる方にとっては、「イメージできないことが理解できない」という場合もあろうかと思います。
そうなると、先生の側ももともとできたことについて、できない子がどうすればできるようになるのかは思いつかないということがないとは言えません。
それは先生が悪いわけではなく、自分は当たり前にできたことですから、人に教えるのが難しいとしても不思議なことではないでしょう。
得意な子は苦もなく頭の中で展開図を組み立てたり切り開いたりできるようで、それは見ていて羨ましいなぁと思いますが、そうでない場合、早目にそういう機会を増やしてあげることで苦手意識を持たずに済む場合もあると思います。
特に何か立体を組み立てたりすることにあまり興味がなさそうな子などには、周囲の大人の方が意識して与えてあげるといいかもしれません。(もちろん、興味がなければ与えても取り組まないかもしれませんので、その場合は必要になったとき、具体物を使って何度も実際に目で見て確かめる経験をすると、ある程度までは理解できるようになるのではないかと思います。)
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