不覚…。
私は子ども達に怖いと思われていますが、怒っているときもあまり感情的に高ぶってということはありません。
子ども達やその場におられる保護者の方などにはそうは思えないかもしれませんが、ぼんやりしているような子にわざと大きな声で強めの口調で言うこともありますし、大抵の場合、そうは見えなくても、怒っているときもある程度意識しながらのつもりではあります。
ですから、後になってどう言ったかを思い出せないことはほとんどありませんし、思い出せない場合も、単に脳細胞の問題というか…感情が高ぶっていたから覚えていないということは本当にめったにありません。
しかし…今日はそのめったにないことが起きてしまった上、更にもっとめったにないことまで起きてしまいました…。
感情的に怒ることがめったにないのと同じぐらい、私は子どもの頃から、うれし涙とか卒業式でみんなとの別れが淋しいからとか、大好きだった恩師が亡くなられたとか、そんな涙は見られることはあっても、基本的に人前で泣くことはめったになく、泣いているのをみられるのもすごく抵抗があります。
悲しくて泣いたのを親に見られたことも恐らくほとんどないように思います。(最近は涙腺が緩んでいて、家族でドラマとか見ているときにも泣いてしまいますけど…。)
それが今日、本当に自分でも全くの想定外に、ああ、こんなところに私の地雷があったのか…と思う出来事があって、中1の子達の前で涙をこらえることができませんでした…。
今日のレッスンの子の一人は数学が苦手です。
5年のときから来てくれたのですが、その頃から、算数はかなり苦戦していて(英語は好きなようで努力もしていて、よくできていて、特に数学が苦手なようですが)、わからなくて煮詰まってしまうと、感情のコントロールがきかなくなることがあります。
今日のレッスン中、何度もものを見せながら、指で押さえ、ワークブックには赤鉛筆で印をつけているのに、特に苦手意識のあるところだったせいか、全く聞いている様子がありません。
集中していないように感じたので、少し大きめの声で強く再度それを言ったとき、ぷつんと線が切れてしまったようで、突然ばーっと自分の感情をぶつけ始めました。
期末テストが思ったように点が取れなかったのを気にしていたようで(それは少し落ち着いてから話してわかったことですが)、突然こんなことを言われました。
「テストの点悪かったから、むかついとんやろ!しゃーないやん、私あほやもん。先生みたいにかしこないもん。」
私は何度も繰り返しものを見せながら説明しようとしているのに、一向にちゃんと見てくれず、そのくせ半分怒りながら「わからん!」というその態度に対して、ちゃんと聞きなさい!という意味で多少腹を立てていたものの、本当に全くの予想外、青天の霹靂とはこのことか?というような衝撃的な言葉を投げつけられ、一瞬頭が真っ白になりました。
この子はそんなことを思ってたんだ…。
ただの一度もテストの点が悪くて怒ったことなんてないし、そもそも腹が立ったことなんてない。
それをこの子はこれまでずっと、そんな風に思ってたんだろうか…。
この数年間、ずっと一緒にレッスンしてきたのに、私はそんなヤツだと思われていたんだ…。
そう思ったら、全身から血の気が引いて行くのがわかりました。
悲しくて、悔しくて、どうしていいかわからなくなり、「そんなこと思ってるわけないやろ。それは私に絶対言ったらあかん言葉やで。」そんなことを言うのが精一杯。
もう一人、一緒の時間にレッスンしている子は、そんな状況でも、時々様子を伺いながら、黙ってがんばって問題に取り組んでくれていました。
テストの点が悪いから怒るようなヤツだと思われてたんだと思ったら、悲しくて、むなしくて、これまでの3年間はなんだったんだろうと、色んな思いがぐるぐる渦巻きました。
ただ、もう一人の子は何も関係ないわけですから、必死で平気なふりをして、その子とは明るくレッスンを続けていたのです。
でも、手の先が完全に冷え切って、足の震えが止まらないことに戸惑いながら、もう一人の子にバレないように必死でした。
悲しすぎて、今日は彼女とはレッスンになりそうになかったのと、期末も終わったところだったので、今日の分はおうちの方にお話してレッスンをしなかったことにさせてもらおう。
もうこの子とはレッスンできないかもしれない…。そう思いながら、「悪いけど、今日はもう帰って。あとでお母さんに連絡するから。」そう言い始めた途端、ぼろぼろ涙がこぼれてしまいました。
そして…不覚にもそれをもう一人の子に見られてしまいました。
視線の端で、その子が少し驚いた表情をしているのが見えました。
でも、どうすることもできませんでした…。
涙を拭いてもう一人の子とのレッスンに戻り、冗談っぽく、「まずいなぁ…。帰って報告されそうやなぁ。」というと、普段から優しいその子は「え?何?」と。
「先生泣いてんって言わんとってな。めっちゃ怒ったってのは言ってもいいけど。」
そういうと、「ああ。」とだけ言って、かすかに笑ってくれました。
あの場にいないとちょっと文章ではわかりづらいと思いますが、本当に優しくていい子だなぁと改めて感じました。(おまけに、普段以上に集中していて、いつもよりたくさんの問題を終えてくれました。(苦笑))
結局彼女は帰ろうとしなかったので、もう一人の子を見送った後、少し落ち着いた彼女と話をしました。
そのときもまだ私の震えは止まっていなかったのですが…。(怒りに震えていたわけではないと思います。そのときは感情としてはかなり沈み込んでいましたから…。)
あの言葉を言われた瞬間は、ああもう無理だ…と思いましたが、その後、彼女なりに一所懸命に気持ちを伝えようとしてくれて、少し救われました。
ただ、たったひと言でそこまでどうしようもなくなってしまったことに、我ながらただただ驚きました。
彼女は言いました。
「一生懸命教えてくれてんのに全然点取れへんくて、腹たつやろなと思って。」と。
その言葉を聞いて、また申し訳なくて悲しくて…。
彼女にも言いましたが、私はテストの点数をあまり気にしたことがありません。
もちろん、本人が努力して、その結果本人が満足のいく点数を取れればよかったなぁと思いますし、その子が喜んでいれば、もちろん私も嬉しいです。
そして、努力したのに結果が出なければ、残念だったなと思いますし、自分の指導力が足りなかったんだろうと反省することはあっても、点数が悪いから腹が立ったことは本当に一度もないのです。
ふざけていてやらなければ怒ることもありますが、一所懸命やっているのにできないとすれば、それを怒る理由はどこにもありません。本人は何も悪くないのですから。
昔、塾講師だった頃、あるベテランの先生が授業中、小学生に向かって、「こんなんもできへんの?!」と怒っているのを見て、内心思ったものです。
(言ってやれ!そんなんすぐわかるんやったら塾なんか来てませんって!)と。
どんな問題も、すぐわかる子もいれば、難しく感じる子もいるものです。
それぞれの子に得意不得意があります。
数学なんて、たくさんある教科の中の一つに過ぎませんし、その教科すらも、生きていく上で大切な数え切れないほどのことのうちのほんの一つにしか過ぎません。
もちろん、授業を受けなければならないのであれば、わからないよりわかる方が楽しいでしょうし、テストもできないよりできる方が嬉しいでしょう。
行きたい学校があって、ある程度数学ができないとキビシイというのであれば、必死になってやればいいと思いますが、苦手なものを我慢して何時間もやるのなら、得意なものをもっともっと得意にする方がいいような気もします。(結果的にその方が、苦手なこともちょっとやってみようかなと思える余裕を生むような気がします。)
そんなことも、彼女にわかりそうな言葉で伝えたつもりです。
しかし…しまったなぁ…。泣いてるの目撃されてしまって…。大の大人なのに……。
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