なんだかなぁ・・・。
子どもの頃からの年中行事のひとつにお盆の15日の精霊流しがある。
うんと幼い頃は、確か川の下流から海にそのままお供え物などを流していたような気がするが、さすがにそれは環境によろしくないということで、いつ頃からか、地元の有志の方なのだろうか(恥ずかしながら、相変わらず親についていっているだけなので詳しいことはわからないまま…)、お供え物やら初盆の方などは立派なお舟をこしらえて持ってこられたりするのやらを受け付け、お舟に乗せて海に向かって出て行ってくれるようになった。
まあ、そのお舟は送る人たちから見えなくなったところで止まり、そのあとは環境局の方の管轄になっているようだけれど、私たちとしては、お線香をあげ、お舟が出ていくのを手を合わせて見送るのが例年のことだ。
それが今年、何かの規制が入ったのか、近隣の方の苦情でもあったのか、事情はわからないけれど、例年、煙がもうもうと上がっているお線香を立てる場所から上がる煙が少ないように感じた。
そして、ふと目をやると、簡易で土が盛られた線香場の向こう側にまだほとんど燃え残っているお線香が大量に投げ出されていた。
そのとき、係の方らしい男性がこれまで聞いたことのないことを何度も繰り返しているのが聞こえてきた。
「今から火を消しますから、お線香は真ん中より西に立ててください。」
初めは何を言っているのかよくわからなかったが、何度も繰り返すその男性の手にはじょうろがあり、どうやらお線香の火を消そうとしているのだとわかった。
そういえば、お線香を立てるとき、雨でも降ったのかな?というぐらい土が濡れていたのだが、燃え残ったお線香も土が濡れていたのも、そういうことなんだなと理解できた。
しかし、問題はそのタイミングだ。
その男性は「今から」と言ってからも数分呼びかけ続けた。
ちょうどそのとき、私たちが預けたお供え物を積み終えた船が海に出て行こうとするときだった。
船は2艘の船が交代でお供え物などがある程度まとまったら海へ出る。
私たちがその場に行って、お線香を立ててから、船はまだ一度も海に出ていなかったのに、その男性は火を消すと何度も何度も繰り返す。
なんでこのタイミングなんだ?と内心なんだか腹が立っていたが、すぐ側にいた上品な感じの老婦人がつぶやくようにおっしゃった。
「なんで今消すのよね。お船が行ってからでいいじゃない。何のためのお線香なのよ…。」
本当にそうだ。
私は詳しくはわからないけれど、お線香を立てること自体、故人を送るための行為で、その故人がまだ海に出ないうちに火を消されてしまったら、一体何のためのお線香なんだろう…。
船が動き出す直前、とうとうその男性は水をかけ始めた。
じょうろでの作業なので、一度に全部が消えたわけではないが、あとほんの1、2分、どうして待ってくれないのだろう。
私は故人を送ると言っても、父方の方は私が生まれる前に亡くなられた方ばかりなので、直接知る人はいない。
直接知っているのは唯一、母方の祖父だけで、数年前までは祖母も一緒に来ていたが、足を悪くしてからは母がお供え物を預かって一緒に流している。
今日のこの場に祖母がいたら、さぞ悲しんだことだろうと思う。
新盆の方など、お見送りしている傍でお線香の火を消されていくのは、やはり悲しいことなのではないだろうか。
どういう事情で火を消すようになったのかはわからない。もちろん、何かのご事情があってのことなのだとは思う。
ただ、もう少しやり方はなかったんだろうかと、なんとなくすっきりしない気持ちでその場を後にした。
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