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2009年7月 2日 (木)

先回りしない。

育児書や教育書などを読んでいると、ときどき、最近は子どもが失敗する前に失敗の可能性を先回りして回避させてしまう親が少なからずいるというようなことを目にすることがある。

恐らく、昔の親が放任だったとか、過保護な親が増えたとか、そういうことではなくて、昔は大人が見ていなくても子どもたちだけで自由に遊びまわれる場所があったし、子どもの数も今より多かったということもあるだろう。それに比べて最近は、子どもたちだけで自由に遊べる場所も限られてきているし、子どもの数も減って、ひとりひとりの子を見ていられる時間も増えたというようなことも関係しているんだろうと思う。

親は我が子が可愛いものだと思うので、目の前で転びそうだったら、転ばないよう手を貸すなり声をかけるなりしてしまうだろう。
何もせず黙って転ぶのを見ていられる親はまずいないと思うし、仮に我が子じゃなくても、子どもが怪我をしそうだったら、やはり怪我をする前に声をかけてしまう大人は多いだろう。

もちろん、命のかかわるような危険なことを黙って見ている必要はないわけだけれど、小さな怪我、小さな失敗は、可能な範囲で経験させるのがいいのではないかと思う。

で、前置きが長くなったが、同じようなことが勉強でも言えるのではないかなと思うことがある。
例えば、今日のレッスンでひとりの子が、2桁同士の掛け算に取り組んでいた。2桁同士の掛け算の筆算はまだやっていない段階で、その子が今知っていることは2桁×1桁、3桁×1桁の筆算まで。
その状態でいきなり2桁同士の掛け算をやらせるのはもちろん少しハードルが高い。

というわけで、まずは2桁×1桁(これはおさらいの内容)と2桁×何十の掛け算を考えてもらった。

2桁×1桁は割とすらすら解いていく。でも、89×8の計算のとき、ふと見ると、89を縦に8つ並べて足し算の筆算をしている。
その子の力からすると、80が8個と9が8個に分けて考えれば、筆算を書かなくても答えは出せるのだけれど、自分で考えてそうしているので、そのまま様子を見ていた。

次に2桁×何十の計算になったとき、その子ならわかるかな?と思ったのだけれど、どうも全然ぴんと来ていない様子だった。
そこで、まず2桁×10を考えてもらうことにした。×10はぱっとわかりそうな気がしたのだけれど、どうも今日はイマイチ調子が出ていないらしくて、数を10個書いて筆算をしている。
それでも黙って見ていた。
最初は77×10だったので、「770」と答えを出したその子に、「じゃあ×40だったら?」と尋ねると、ほんの少し考えて、770を4回足し算した。

次の問題もまず×10を尋ねたのだけれど、どうもまだピンと来ていないようで、また10個書き並べている。
それでも黙って見ていた。
当然のことながら、それも2桁の数に0が1つついた答えになった。それをもとに今度はその×20の答えを出した。

そのあたりで、「77×10=770」「86×10=860」と2つ式を書き並べて見せた。
すると、「あ!」と言って、そのあとは数を10個書き並べなくても答えが出せるようになった。

そしてまた次の段階。

今やった2桁×1桁のプリントと2桁×何十のプリントを2枚並べて、次のプリントを出した。

それぞれのプリントの1問目は「77×2=154」「77×20=1540」「77×22=  」となるようにしてある。
それを並べて見せて、「これ、77が20個やんね?で、ここに77が2個。じゃあ、77×22は?」と尋ねてみた。

少し考えていたけれど、初めは全くわけのわからない答えが出された。あまりに違い過ぎて、どう考えたのかも思いつかないような数字だったのだけれど、こりゃわかってないなと思い、プリントの裏に「ここに77、22個書いて。」と言った。

書き終わったところで、まずそのうち20個を○で囲み、「これでいくつ?」と尋ねた。
すると、きちんと「1540」と答えたので、○の横にその数を書いてもらった。

で、そのあとに22が2個残っていることに気づいたその子は「あ!」と言って、「1540+22+22」として答えを出した。
この時点ではまださっき計算した77×2=154の式には思いが及んでいないようだった。

次の問題もまだピンと来ていないようだったので、もう1問同じように考えてもらうと、そのあとは数何十個を書き並べなくても答えを出せるようになった。
それでも、3問目ぐらいまでは×1桁の方は相変わらず、数を3個だの5個だの書いて足し算をしている。

しばらく黙って見ていたあとで、×9をする問題になった。黙っていたらその子は恐らく9個書いて足していたかもしれないが、そこで「ねえ、9個ってこれよね?」とさっき解いた「×9」の式を指差した。

するとまた「あ!!」と言って、その後はもうたくさんたくさん数を書いて足すこともなく、答えを出せるようになった。

もちろん、このやりとりも、その子その子の能力やその日のコンディションによっても反応が違ってくるので、みんなに使えるとは考えていないけれど、まずは子ども自らが考えた方法で答えを出してもらうことはとても大切なのではないかと思っている。

それが大人から見たらどれだけまどろっこしい方法でも、まず自分がこうだと思ったやり方でやってみてもらって、それが面倒だと感じているようだったり、なかなか答えが出せずに困っているようだったり、子どもが何か困難や不便を感じているなと思えば、そこで最低限の手助けをする。

苦労した後なら、「ああ、この方が簡単だ」とか「この方がわかりやすい」とか、子ども自身比較することもできるし、便利だなと感じれば、しっかり印象に残るだろう。

最初からやり方を教えられてその通りにやれば、その方法の便利さ、楽さを実感することはないままに過ぎてしまうだろうし、印象に残らなければ忘れるのだって早いだろう。

回り道のように思えても、小さい子には多分結果的に近道になるんじゃないかなと思う。

特に、九九を習った後の子であれば、例えば37×8を計算するのに、37を縦に8個並べて足し算の筆算を書いたとしても、答えを出す時には恐らく、7(一の位)×8と3(十の位)×8を使って計算するだろう。もし、それに気づかず1つ1つ足している子がいれば、タイミングを見て「足していくんじゃないやり方ないかな?」などと声をかけてみれば、きっとほとんどの子が気付くのではないだろうか。

とすれば、見た目は足し算8段重ねの筆算でも、答えの出し方は掛け算の筆算と同じになっている。
それを何問かやった後に掛け算の筆算(2桁×1桁)をやらせれば、子どもたちはより深く意味を理解できるのではないかと思う。

こうしたら楽だよという方法は先に言うのは極力控えて、子どもの先回りをせずに(でも、必要な時には必要なフォローができるように)見守るのが、子どもの学びに大きなプラスになるのではないかと思う。

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