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2007年8月 9日 (木)

素敵な姿なんだけど・・・

今年は時間的にも体力的にもさすがにちょっと無理かなということで、新年度から中学生の募集を休止している。
ただ、友人の甥っ子が、7月に体調を崩し学校を少し長い間休んでしまい、そのフォローをということでとりあえず夏だけ、数学だけという限定でお預かりした。

お母さんのお話では計算はできるけど文章題が苦手でという、「よくある話」だったので、さてどんな感じなんだろうと期待半分、不安半分でレッスンを開始した。
確かに計算は相当よくできる部類に入るだろう。正直言って、スピードでは私はかなわないほどだし、かなり正確だ。

しかし、単に機械的にやっている雰囲気ではなく、どうも数量感覚もセンスも感じる。
本当にこの子が文章題が苦手なんだろうか?
そう思いつつ、復習を兼ねて1年の範囲の方程式の利用の問題をやってみることにした。
すると、いきなり「俺、文章題ダメっす。」と来た。
まだ読んでもいないのにだ。

更に続けて、「俺、国語ダメなんで・・・」と来る。
まあ、まさにありがちなパターンだけど、少なくとも彼に関してはどうも本人がそう思い込んでいるだけのような気がして、じゃあとにかく読んでみようとやり始めた。

すると、たまたま続けて何問か、小学生でもできるよね?みたいな問題が続き、私がふと「これ、方程式使わなくっても見たら解けるよね?」と尋ねると、しっかりしたまなざしで「はい。」と答えたかと思えば、「○○っすか?」と答えをいう。

じゃあこれも解けるよ?と別の問題を指差すと、やはり何も書かず問題だけを見て、「△△っすか?」と。
そんなことが何問か続いて、ちょっと調子が出てきたので、「俺、速さダメっす。」というのを無視して、問題を図に描かせてみた。すると、それを見ながら考え始め、結局解いてしまったのだ。

その後、何回かのレッスンでずっと文章題をちょっとずつやっているのだが、先日のこと。問題を見た彼が私に尋ねた。

「これ、式作らなくっても解けますか?」

問題を見ると、これならこの子なら解けそうだという感じの問題だった。(ちなみに連立方程式の利用。)

「う~ん、多分解けると思う。」

そう答えると、「ちょっと待ってください」と言って、じっと考え始めた。決して簡単な問題ではなかったのだが、頭の中だけで考えて答えを出してしまった。

どう見ても、彼は文章題が苦手なわけではない。
ノーヒントで問題をにらみ、自分で解いているのだから。

しかし、これが学校の授業やテストとなると、立式せずに答えだけ書いたら減点されるとかバツにされるとかってことが起きるのだろう。
うちのスーパー君やスーパーちゃんたちが学校の算数が面白くないという理由もその辺にあるのだろうと思う。
もちろん、問題によっては式を作らないと考えにくいものもあるし、そういうものは臨機応変に考えればいいのでは?と思うのだが、恐らくそれは学校では通用しないのだろう。

甥っ子くんは絶対に数学のセンスはあるし、決して文章題が苦手だなんて感じない。
目の前の彼はまるでクイズを考えるように、心なしか楽しげに問題を考えているのだから。
しかし、学校でも彼が行っていた塾でも、そんな風に楽しく文章題を考えることはなかったのかもしれない。そしてそのうち、彼は文章題が苦手だと思い込んでしまったのだろう。

そんな子は少なくないのかもしれない。
もちろん、大量反復などの学習法で学んできた子たちの中には、実際に計算しかできないという子は存在する。そういう子は別として、本来柔軟な発想ができ、考えることが好きな子までもが、もしかしたら潰されてしまっているのかもしれない。

目の前で一所懸命問題を考える彼の姿はとても素敵だけれど、学校ではそれが通用しないのかもしれないと思うと、なんとも複雑な気持ちになる。

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