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2007年4月19日 (木)

幼児のレッスンで考えること。

昨年後半頃からそれまでを遥かに上回るペースで新しい子達が通ってくれるようになった。
新年度を迎えるにあたり、6年生が卒業したりしたが、結局はそれ以上に枠が埋まってしまった。

中でも、某有名受験塾がピ○マリオンを導入した影響で、幼児さんの問合せが急激に増えた。(正直なところ、それまでは私自身幼児さんは積極的に募集していなかったこともあり、ご兄弟関係やご友人関係以外では殆ど入会はなかった。)
そして、この3月、4月からレッスン開始になった幼児さんが、私にとってはかなり大勢おられる。(あくまでも私にとって。)

その子たちとレッスンをしながら、気になることが次々と出てくる。
以前から私が幼児のレッスンに積極的になれない理由は何度か書いてきているが、実際レッスンをしてみると、1回のレッスンで予定しているカリキュラム通りに進まないことも出てくる。

中にはこちらがちょっと怖くなるぐらい、こちらの指示通りに出されたものを出された通りやってくれる子もいるにはいるが、まだまだ小さい子たちなので、やってほしいと思うことをなかなかやってくれなかったり、違うことをやりたがったりということも決して珍しいことではない。

そんなとき、親御さんがそれを許してくださるのであれば、私は極力強制はせず、やんわりとやってくれるよう仕向けてみて、それでも無理ならまた今度しようと他のものに交換したり、本来の意図とは違うけれど意味のある別の課題に変更したりと試みる。

小学生であれば、あまりにふざけすぎていたり、おしゃべりが過ぎるとガツンと叱ることもあるが、目の前にいるこの子達はまだ就学前の幼い子どもだ。

自らの意志で何か目標があって学ぼうと思っているというわけではないだろう。
ただ単にレッスンが楽しいからとか、できなかったことができるようになって嬉しいからとか、そんな理由で取り組んでくれているに違いない。
自分がしたくないことを目の前に出され、それをやるよう強制され、やらなかったら叱られたり、無理矢理やらされたりするのは、なんだか違うような気がしてならない。
だって、まだ年端も行かない子どもなのだ。

つい先日のレッスンで、トンカチと小さな釘を使う教具でのレッスンをしようと女の子の前に出した。

初めの2つ、3つはすんなりやってくれたのだが、そこで突然止まってしまった。その後は小さな釘を入れ物から入れ物の蓋に移し替え、釘が何本か落ちると「3こ落ちた!」とか「1個落ちた!」とかと嬉しそうに言いながら、何度もそれを繰り返す。

こぼれては釘を拾い集め、入れ物に入れる作業を嬉しそうに繰り返す彼女を見ながら、初めのうちはいくつかパーツを取り上げて、「これはどこかなぁ?」とわからないふりをしてみたり、わざと違うところに置いて「これはここかなぁ?」と言ってみたり、別のトンカチでひとつトントンしてみたりしたのだが、今日の彼女は釘に夢中だ。

入れ物に蓋をしてカシャカシャ振りながら、やはりニコニコして「音がする」と言う。
目の前の課題はいっこうに再開される様子はない。

しかし、とても嬉しそうに釘を何度も何度も触りながら、しっかり指先を使っている彼女を見ると、それを制してこの課題に無理矢理戻すことが正しいとはどうしても思えない。

彼女のお母さんは恐らくこれを無理にやらせなくても理解してくださるだろうと思えたので、ある程度彼女が満足してくれるまで釘遊びに付き合って、他の課題に切り替えた。

しかし、もし仮にこれが普通の幼児教室で何人かのお子さんが一斉に同じ課題をやらされるのだとしたらどうなのだろう。
それぞれの子どもが好き勝手なことをしては到底レッスンが進められないから、叱ったりしてでもそれをやるように仕向けるのかもしれないし、母子同席の教室などであれば、きっとお母さんが隣りで必死にやらせようとするか、お母さんがやってしまうか・・・そんなことになるのかもと思う。

それって子どもはどう感じるんだろう?まだ物心ついていないから叱られても覚えていないのかな?やりたくないことを強制されても忘れてしまうのかな?

どうもうまく言えないのだけど、例えば私は子どもの頃ほうれん草が嫌いだった。どうしても食べられず、なんとかして食べさせようと思った母が私をひとり残し、鍵をかけて家を出て行ってしまったこともあるほどだ。(苦笑)
しかし、その辛く悲しかった記憶はずっと残っているし、かといって私はその後急にほうれん草を食べられるようにはならなかった。ただ、誰に強制されなくても、ある程度大きくなり、別に好きではないけれど普通に食べられるようにはなった。
あのときの母のとった行動は「私にほうれん草を食べさせる」という目的を達成することはできなかったのだ。

実際のところ、栄養面だけの話であれば、ほうれん草だけ食べないのであればそんなもの、他にいくらでも野菜はあるのだし、ほうれん草の持つ栄養を他のもので補うことは可能なのではないだろうか。

後に食べられるようになったし、わんわん泣きながら全然美味しくないほうれん草を2口だけ食べた頃、母が戻ってきてくれたという記憶は、懐かしい思い出となって何十年も経った今でもはっきりと記憶に残っているが、同じようなことでもそれが一生の心の傷になったり、苦手意識になったりしてしまうことだってあるのではないかと思う。

そう思うだけに、幼い子がやりたがらないことを、もちろん何度か水を向けてみたり、私が楽しそうにやってみせたりということはするにしても、それでも乗ってきてくれないときには、それは一旦諦めようと思う。
それをすることでしか伸ばせない能力はないはずだから。

というわけで、幼児さんのお母さん方に改めて申し上げます。
私は子どもが嫌がることを叱ってまでやらせるつもりは今のところ全くありません。なんとか乗せようと試みることはありますが、仮にそれでお子さんが乗ってきてくれなくても、お母さんはお子さんを叱らないでください。(私へのお気遣いはして頂かなくて結構ですので。)

もしももしも、幼いうちから何が何でもカリキュラム通り、与えられる課題を与えられた通りにやるお子さんに育ってほしいとお考えの方がおられましたら、うちではなくよその教室をお選びください。
少なくとも某有名受験塾さんなどでは母子同席でのレッスンのようですから、お母さんの思うようにお子さんに指示を出すこともできるはずです。

私のこの考え方、やり方でもいいと思ってくださる方に通って頂けると何より嬉しく思います。

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