子ども達はやっぱりすごい。
普段、ブログには「スーパーちゃん」のことを書くことが多いのだが、やはり中には単元の内容その他によって苦戦する子もいるし、機械的大量反復などの影響で、見事に数量感がないままやってくる子もいるので、なかなか結果が現われず、自分の無力感を感じることもまだまだ少なくない。
また、生まれつきなのか、ご家庭で意識していないけれど子育ての際に何か好影響を与えるものがあったのか、やはり小さい頃から算数などのセンスが抜群の子もいれば、そうではない子もいる。
そして、その子の性格的な影響で、失敗しても笑って済ませられるタイプの子もいれば、失敗することを極端に嫌い、失敗するかもしれないこと、難しそうに感じることには最初から挑戦しないタイプの子もいる。
更に、幼児や低学年だと、例えば4月生まれの子と3月生まれの子であれば、ほぼ1年の差があるわけで、同じ1年生といっても、一方は早々と6歳になり、他方はあと数日遅ければまだ幼稚園だったというような子が学校の同じ教室で同じように学習するということも当たり前に起こる。
しかし、もちろんこれも個人差があるとはいえ、その頃の1年の成長の差はやはり大きいように感じるし、早生まれの1年生が他の同級生より理解に時間がかかっても、それは当然なのでは?とも思える。
もともと、うちのメインの教材は普通にやっても学校の進度より十分先に進めるものだから、最近はその子の状況に応じて、その教材の進めるペースを調整して、必要に応じて別教材を挟み込む度合いを増やしたりもしているのだが、そういう「ペースのゆっくりな子」や「早生まれの子」、「失敗を恐れて新しいことになかなかチャレンジしようとしない子」たちの成長をこのところあちこちで感じることがある。
それは本当にとてもとても嬉しいことだ。
ある年中さんは、運筆がなかなか思うようにいかず、また積み木などの形のレッスンもかなり苦労することが多くて、それに関してはおうちの方も心配しておられたようだ。
しかし、5歳のお誕生日が過ぎたあたりから、色んなことがひと段階ぐんと伸びたように感じる。
本人にも「さすが5歳になったらお兄さんになったね~。」と、これもこんなに上手にできるようになったね、こっちも前よりずっと早くできるようになったね、そう言えることが増えた。
もちろん、子どもの成長は直線状に行くものではないのだろうから、行きつ戻りつかもしれないが、伸びるまでの期間が他の子達より長くかかっても、こんな風にぐんと伸びる瞬間があるのだなぁと改めて感じた。
また、これもかなり感動したのだが、1年生のある女の子は失敗することがとてもイヤなようで(私もそういう子どもだったが)、見た目が難しそうだとその問題を避けようとするタイプの子だった。そういう性格であることをお母さまもよくわかっておられ、これまでも習い事などに慣れるのに時間がかかったり、色々なことがおありだったとも伺っていた。
その彼女は3桁同士、4桁同士の暗算に強烈な抵抗を示した。それは去年の秋頃のことだったと思う。
2桁同士はある程度ちゃんとできていたし、学校よりは十二分に進んでいたこともあり、お母さまのご希望も考慮して、しばらくパズル問題など違うことをやったり、暗算は一旦保留にして先に筆算に進んだりして、少しずつ彼女に自信をつけていってもらった。
パズル問題であれば、間違っても消して何度もやり直せるようだったのが予想外に嬉しいことだったが、結構気に入って色々な問題に取り組んでくれた。それで少し自信を取り戻したところで教具を見せつつ数量感をしっかり身につけてもらえるようレッスンを繰り返し、けれど、暗算には拘らず、ひとまず筆算に進んでみた。
筆算はどれだけ桁が多くてもバッチリできるようになったし、それは彼女にとって大きな自信になったようだ。
更に、彼女は図形などの問題は得意に感じているようで、その単元に進んで更に自信を深めた様子だった。
手元に数ヶ月前やりかけで保留にしたままだった3桁同士、4桁同士の暗算のプリントが数枚と、色々な数直線の問題のプリントが1枚残ったままで数ヶ月が過ぎた。
その日のレッスンもとても順調に進み、彼女もご機嫌で、次に進むには中途半端な時間が残った。
そこで、ずっと手元に置いてあった暗算のプリントを取り出してやってみてもらうことにした。
以前の彼女なら、難しそうなプリントだと感じた時点ですぐに表情に表れ、やるのを嫌がるという感じだったので、表情の変化に気をつけながら、「筆算してもいいからやってみて」と、内心はちょっとドキドキしながらも、軽い感じで差し出してみた。
すると、全く表情を変えることなく、「うん、わかった。やってみる。」そう答えたかと思えば、筆算を書こうともせず、暗算で考えてみようとしている。
それも、比較的簡単な暗算だったため、本来の彼女の力なら十分解けるものではあったのだが、以前はやってみようとさえしてくれなかったそのプリントを、「なんか簡単そう♪」とまで言って真剣な表情で問題に取り組んでくれている。
すごく嬉しかったし、すごく感動もした。
そのプリントをやりながら彼女が、「なんでできなかったんだろうね?」とさえ言った。
「そうだね。なんでできなかったんだろうね?不思議だね。」と答えると、「うん、不思議、不思議~。」と楽しそうに言った。
この分ならこれもやれるかな?と、過去最高に抵抗を示し、1問やっては預かり、また1問やっては預かって、それでもそれ以上進めなくなってしまっていた数直線の問題のプリントを取り出した。
そのプリントには10月の日づけが書かれていた。
さて、これにはどんな反応をするだろうと、やはりちょっと心配しながら取り出すと、初めの問題はやはり少し難しかったようで、一瞬表情が曇りかけたのだが、少しだけ手を貸すと、後は自分で考え始めた。
そして、以前は難しいからといって全く手を出そうとしなかった問題までも、「これもできそう、やってみる!」と彼女自らそう言って、取り組み始めてくれたのだ。
そして、無事そのプリントも終えることができた。
もともと、レッスンをしていても、頭のいい子だということは何度も感じていた。ただ、失敗を避けたいという気持ちが強すぎて、新たな問題に取り組んでもらうのが非常に困難ではあった。能力的な問題ではなく、気持ちの問題だったのだと思う。
その彼女が、少し時間をかけて、少し回り道をして、他のことでいっぱい自信をつけて、当然数ヶ月の間に成長もしたのだろう、こうして自らひとつのハードルを乗り越えてくれた。
レッスン後お迎えにこられたお母さまは心から感動されて、少しほろっとされていたが、私も同じ気持ちだった。
子ども達は成長する。
すぐに目に見えて成長する子もいれば、じっくりゆっくり時間をかけて、大人が諦めかけた頃にぐっと伸びる子もいるのだろう。
先日も書いたばかりだが、「できない」ことを必死になってやらせようとすると、お互い苦しいことばかりで、結局本当に才能を潰してしまうことだってあるだろう。
今回の彼女も、もしお母さまがカリキュラム通りの指導を望まれていたら、回り道でもゆっくりでもいいからと言ってくださっていなければ、無理矢理でもそれらを指導して、彼女の中には嫌な記憶だけを残してしまっていたかもしれない。
子ども達は本当にそれぞれ違っている。
私ももっともっと学んで、成長しなければと思う。
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