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2006年8月10日 (木)

ある言葉

今日レッスンをしていたある子たちのお母さんが何気なくおっしゃった言葉が強く印象に残った。

そのお母さんの子ども達はまだ2年生と年長さん。6月から一緒にレッスンするようになったのだが、算数が苦手だったらしい2年生さんも、見る見る伸びて「ホントに算数苦手だったの?」という状態だ。そんな様子を見ていたお母さんがおっしゃった。

とても可愛くて素敵な、おまけに頭もいいお母さんなのだが、ご自身が子どもの頃ずっとプリント反復による学習をしておられたらしい。今でもお友だちのお子さんなどでその教室に行っている方がおられるという話だったのだが、お母さんはこうおっしゃったのだ。

「これ(うちの教室での学習法)を知ったら、○○○に腹立ってきますね。」

正直なところ、私は塾などお勉強系の習い事を一切したことがないので、大量の機械的プリント反復学習の弊害については大人になって、こういう仕事をし始めてから徐々に感じるようになり、独立して今の学習法を知ってから、一層そのことを強く実感するようになっただけで、自分の実体験からの言葉ではない。

また、かつてそういう方法で学習をしてこられた方の中には、やはり迷わずお子さんにもそれをさせる方も少なからずおられるだろう。

しかし、それをやっておられたお母さんご自身が「腹が立つ」とおっしゃった言葉がなんとも印象深く、ご自身がされていたのに、その方法ではなくこちらを選択してくださったことに改めてありがたいと思った。

もっと知ってほしい、そう思う。
小さいうちにあんなに大量のプリントを繰り返さなくたって、子ども達はちゃんとできるようになるのだ。

実際、夏休みだけの4回体験で来てくれた1年生の男の子は今日が4回目のレッスンで、思ったより捗ったので、最後にちょっとやってみようと20までの数から5を引く引き算をやってみることにした。

もちろん学校ではまだやっていないとのこと。まずは教具を数分見せ、次に絵の描いてあるプリントを2枚。そのあとに式だけが書かれたプリントを差し出すと、ちょっと考えながら彼は正解を出していった。

もちろん、ほんの10分足らずのことだったので、まだ完全に納得とまでは行っていないだろう。そうだとしても、ほんの10分でやったことのなかった計算を自分で考えられるようになったのは事実だ。

私の叫びなんてあまりにも小さすぎて、ごく限られた方にしか届かないことはわかっている。
それでも私の叫びを聞き止めてくださった方が、また誰かにそれを伝えてくださったら、ほんの少しずつかもしれないけれど、しなくてもいい(むしろするべきではない)努力をせずに済む子どもが増えてくれるかもしれない。

大量の反復はもっと大きくなってからで十分間に合う。
子どもの頭が柔らかいうち、「つ」のつく間、せめてその間は、「時間をかけてゆっくりじっくり楽しみながら」ということを心がけて頂けたらと改めて思う。

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受信: 2006年8月10日 (木) 21時57分

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