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2006年6月23日 (金)

形を捉える

教室に来てくれる子ども達を見ていると、時々驚くことがある。
感激に近い驚きを感じることもしばしばあるが、時折、大人からすればあまりにも簡単なことに思いがけず苦戦する子どもの姿に出会うこともある。

教室を始めて間もない頃はまだ幼児・低学年の指導の経験は殆どないに等しかったので、子どもの躓きひとつひとつが新鮮で意外だった。
そんな中で最初に私が驚いたのは「箱の絵が描けない4年生の女の子」だった。

彼女は就学前ぐらいから反復プリント学習教室に通い、小4にして既に中学生の内容にまで進んでいるという子だった。しかし、図形になると全くお手上げ状態とのことで通ってくれることになったのだが、一番初めのレッスンで、図形ができないといってもお手本を見て真似して図形を描くだけなのだから、当然できるだろうと思って差し出したプリントに彼女はひとつとして「お手本に似た絵」を描くことはできなかった。
サイコロがひとつ置かれた絵は何度もトライした末かろうじて形になったが、サイコロが下に3個上に1個重なった状態の絵は何度挑戦しても重なった状態に描くことはできなかった。

その後、彼女には図を描く練習をさせたわけではなく、能力開発系の教材をメインにしてしばらくレッスンを続け、ふた月あまり経った頃だっただろうか、またお手本を真似て図形を描くプリントが登場した。
それまでに特に図形を描く練習はさせていなかったし、レッスンは週1回1時間だけだったので、果たしてどうなるのかと内心ドキドキしながら見守っていたが、そこにはかなりお手本の姿に近い図が描き上げられていた。

その日、彼女が帰った後お母さんから「とても驚いた」というメールが届いた。私自身、短期間でこんなにも変化があることにとてもとても驚いたのだが、幼い頃から機械的に反復をさせられ続けた彼女には空間把握などの能力が育つ機会が殆どなかったということなのだろう。機械的反復の弊害を身をもって感じた最初の出来事だった。

少し話が逸れたが、その後色々な子達に出会ってきたが、やはり今でも計算はできるのだけど。。。というパターンで出会うことになる子達がいる。
そういう子達は概ね図形が苦手だ。やはり育つべき能力が育っていないということだろう。

積み木の45度の角度がぴったり合うはずの場所に積み木の直角を持っていって置いてみる子もいるのだ。45度の場所に60度を持っていくなんてことは、図形が苦手な子にはしばしば見受けられる。45度と60度ではとんがり方が明らかに違うはずなのに、彼ら、彼女らの目にはその違いが見分けられないらしい。

もちろん、まだ3歳や4歳の子で、色々置いてみて気づくという子はいる。その年齢であれば、あれこれ試行錯誤する中で経験として、これは大きいけどこれは小さい、こっちはとんがってるけどこっちはあまりとんがっていない、そういうことを覚えていくのだろう。
とすると、中学年や高学年になっても同じことをしている子たちは、本来試行錯誤すべき時期にそれをしなかったということなのかもしれない。

ただ、やはり個人差はある。普段からブロックや積み木が好きな子や、ケーキなどを切り分けるときに大きさに意識がいく子、お兄ちゃんやお姉ちゃんなどがいて、幼い頃から色々なものに触れる機会のあった子などは空間把握が得意なことが多いし、そういう機会が少ない子はどちらかといえば苦手の傾向があるように感じる。生まれながらにしての能力やセンスの違いなどもあるのかもしれない。

それでもやはり具体物を操作しながら経験をさせ、能力開発用の教材などに取り組ませることで苦手な子にも改善傾向は見られる。空間把握能力は実生活でもとても大切な能力だから、なるべく早い段階で苦手克服をさせてあげてほしい。

なぜ実生活で大切かというと、以前テレビでもやっていたけれど、「片付けられない」ということに繋がるからだ。「この空間にはこの大きさのものをしまえるかどうか」というのはわかる人にはひと目見ただけでわかるのに、空間把握が苦手な人は絶対入りそうにないものを入れてみようとしたり、入れる順番がめちゃくちゃで無駄なスペースが沢山できたりということが起きるようだ。
また、距離感などが把握できなければ、何かに頭をぶつけたり、躓いて怪我をしたり、さらには事故に遭う確率も上がるだろう。
大袈裟なと思うかもしれないが、決してそんなことはない。

またまた話が広がってしまっているが、図形が苦手な子どもにちょっとしたアドバイスをすると、あっという間に変化が見られる場合がある。

先日、教室に通ってくれて3年目になる男の子が図形の模写のプリントを前に「俺、これ苦手やねんなぁ」と言った。その子が図形が苦手だという認識がなかったのでちょっと驚いたのだが(積み木などの問題はいつも問題なくクリアしているし)、とりあえず描いてみてといって描かせると、確かに苦戦している。

面白かったのが、サイコロの上部の隅がサイコロを8等分した1個分の大きさ切り取られた形の立体の図を描くときのこと。(説明が難しいのだが、角が凹んでいるような形)
描き始めの2本の線がいきなり垂直に交わっている。その図の中に垂直になっている部分はひとつもないのだから、そう描き始めては完成しようがない。

何度か消しては描きを繰り返したのだが、どうにも困っている様子。
そのとき、彼が直角に描いてしまう理由にちょっと心当たりがあった。彼の中では実際のサイコロが思い浮かんでいるのだろう。サイコロはどの角も全て直角なのだから、それを描くには垂直な線から描かねばと思ってしまっているのではないか。そう思い、図形の中の1面だけを赤鉛筆でなぞって見せた。
赤鉛筆でなぞられた図形はひし形が一部欠けた状態のもので、その部分だけを浮き上がらせたことで彼は気づいたらしい。

「な~んや、そうか。」

そう言って、見る見る箱の絵を完成させてしまった。要するに、彼はどこに目をつけたらいいのかがわかっていなかったのだ。

普段も図形を模写するのが苦手な子には、図形の中の何本かの辺を赤鉛筆でなぞって見せたり、どこかひとつの面だけを指さして、まずそこを描かせたりしてみる。すると、大体はクリアできる。

また、積み木や色板などをお手本の上に同じように置くようなものも苦戦する子がいるが、その場合にも図形の中のどこかの辺やどこかの角を指して、それと同じ長さや大きさを持つものがないか尋ねてみる。すると大体は答えに辿り着く。やはりどこに注目すべきなのかがわかっていないのだろう。

実際に色々なものに触れて経験をさせることが最も大切だということは間違いないが、既に苦手になってしまっている場合、どこか目をつけるポイントを示してあげると、子ども自身の力で答えに辿り着ける場合があるので、お子さんが図形が苦手だという場合は一度試して頂けたらと思う。

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コメント

はじめまして。どんぐり倶楽部からこちらのサイトを知りました。神戸に住んでいますがどんぐりの教室があると聞きました。くわしい連絡先とご住所等を知りたいのですか御連絡いただけますか?

投稿: 3年ママ | 2006年6月29日 (木) 23時10分

3年ママさん初めまして。
コメントありがとうございます。
メールさせて頂きますので、宜しくお願い致します。
ただ。。。どんぐりさんの教室ではないのです。
そのあたりもメールにて。

投稿: TOH | 2006年6月29日 (木) 23時47分

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