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2006年5月20日 (土)

子どもの表情

先日、中学のときに通ってくれていた子が試験前で、高校数学を見てもらいたいという話になりました。

しかし、悲しいかな、私が高校生の数学を見たことがあるのは遥か遠い学生時代のこと。さすがにもう何もかも忘れてしまっています。
以前時間があったときに、もう一度解き直したらどこまで理解できるかやってみようと、まずは数Ⅰのチャートを買って途中までは解いたものの、結局なんだかんだと忙しくなりそのままになってしまいました。

ただ、基本的に高校生はお受けしていないので、そのときだけお知り合いのお子さんで理系の大学生の子に見てもらうようお願いしました。

私は別の子達とレッスンをしていたので、彼が説明しているのが耳には入っていたのですが、指導の仕方には何の問題も感じませんでしたし、丁寧にゆっくりと進めてくれていて、指導経験がまだ殆どないにしては上出来だなと思っていたのです。

ですが、レッスンが終わった後、彼が言った言葉であることに気づきました。

「僕の説明でわかっているのかわかっていないのかがわからなくて困った。」

彼はそんなことを言いました。そういえば、レッスン中に彼が何度か高校生に向かって「わかります?」「わかりましたか?」と尋ねていたことを思い出しました。

確かに高校生の子はマイペースでほわんとしたタイプなので、私が一緒にレッスンをしていた頃も「あぁ、そうか!」とか「わかった~!!」みたいな反応はありませんでした。
ですので、彼には「うん、そうよね、ちょっと反応がわかりにくいよね」と答えたのですが、彼を見送った後ふと気づいたのです。最近私は子どもが理解したかしていないかがわからないと感じたことはない気がするということに。

塾に勤めていた頃には子ども達に向かって「わかった?」と尋ねることがありました。けれど、教室を始めてから、そのセリフを口にすることが殆どなくなったのです。

最大の理由は殆ど「説明」をしなくなったということだとは思います。
けれど、さすがに説明なしにはできそうにないところなどは必要最低限の説明はします。それでも尋ねなくなったのです。

もちろん、きっとたまにはそれに近いことは尋ねていると思います。けれど、仮に「わかった?」と尋ねて、子どもが「わかった」と答えたとしても、その答え方で本当に理解したのか、何となくぼんやりとしかわかっていないのかがある程度わかるようになったのだと思うのです。

おまけに、わかってないときの顔とわかったときの顔はそれこそ天と地ほど違う表情だったりもするのですから、きっと一目瞭然なのです、本来は。

どんな子でも理解できていないときの表情はどこか曇っています。けれど、それを超えたときには本当に雲が切れるかのようにぱぁっと明るい表情になります。

ひとりひとりをきちんと見ていれば、使う必要のない言葉なのかもしれないとも思いますが、じゃあ大学生の彼は高校生をきちんと見ていなかったのか?ということになってしまいます。決してそんなことはないはずですし、私だって勤めていた頃にも、精一杯子ども達を見ているつもりでした。それでもやはり判断がつかなかったのです。

経験を積んだこともあるのかもしれません。
けれど、もしかすると、私はこの教室で子ども達が本当に理解したときに見せてくれるあの素晴らしい表情を沢山見せてもらえたからこそ、見分けられるようになったのかもしれないとも思うのです。

わかっていないのに「わかった?」と聞かれて、「わかりません」ときっぱり言える子はどのぐらいいるでしょう?特に学年が上がるほど、人前で「わからない」ということは恥ずかしいと思うようにもなるでしょう。

それを考えると、子ども達に向かって「君たちわかったか~?」なんて質問は実は教える側の気休めに過ぎないのではないかと、そんなことを思ったりしました。

子どもにもプライドがあります。
だから、仮に半分ぐらいしかわかっていなくても、みんなの前では「わかった」と答える子も少なくないでしょう。
だから私はそんな子には表情を見ながら、「半分ぐらいわかったかなぁ?」と尋ねたりもします。そう尋ねて「ううん、全部わかった!」と答えられたことは今のところありませんが、仮に本当によくわかっている子にそう尋ねてしまっても「全部わかった」と答えればいいことですから、その答えに躊躇うことはないでしょうし、仮に半分わかってない子でも「半分」は「わかった」と答えられるのですから、やはり「わからない」というより遥かに答え易くなるのではないでしょうか。
そして、仮にほぼ全く理解していない子にそう尋ねてしまったとしても、きっと曖昧に「う~ん」と返事をするか、そうでなければ「わからない」と答えるでしょうから、「わかった?」と尋ねるよりは遥かに子どもの立場に立った問いかけではないかと思います。

「わかった?」よりは「わかる?」の方がまだ現在形で、今はまだわかるところまで行っていないという印象ですし、「半分ぐらいわかった?」とか「どのぐらいわかった?」とか聞けば、自分の理解の具合を少しは詳しく答えてくれるかもしれません。

言葉ひとつですが、子どもに対して「わかった?」という問いかけは、あまり意味がないのかもしれないな。改めてそんなことを思いました。

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