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2006年4月21日 (金)

考えさせる(2)

この本で「ウサギ殺しの少女」を喩えにし、宮本先生がおっしゃりたかったことは、可愛いからといって手をかけ、何でも手伝って、その結果、子どもの生きる力、考える力を奪って、結局は「人」としての「死」に追いやっているということではないかと思うのです。

少女は動物が大好きで、赤ちゃんウサギに触ってしまうより以前から、ウサギ小屋の掃除などもし、お母さんウサギの世話などもしていたという設定になっているのですが、好きで可愛くて仕方なくて、つい触れてしまった。その結果、赤ちゃんウサギを死に至らしめてしまった。この喩えは私にとってあまりにも重いものだったのです。

私は子ども達が大好きです。塾に勤めていたときからずっと、ひとりでも多くの子にできる喜びを味わってほしいと思って頑張ってきたつもりでした。けれど、わかり易く教えれば教えるほど、ジレンマに陥っていったのです。
要するに、私がしていたことは、彼らの生きる力、考える力を萎えさせることだったのではないかと気づき、愕然としたのです。

独立を決めたとき、素晴らしい先生と今の指導法、宮本先生を初めとした素晴らしい先生方の著書に出会ったことで、私の考え方は180度近く変わりました。

いかに教えず、気づかせるか。子ども自身に考えさせるか。
今はそのことしか考えていないと言ってもいいぐらいです。

最初の頃は不安で仕方ありませんでした。
新しい内容に進むときも、まずやってみてとプリントなどを渡すのです。もしできれば私はマルを付けるだけ。それでお月謝を頂いていいんだろうか。。。ずっとそれが気になっていました。

教材だって、勤めていた頃は、教材費を頂いているのに使わないものがあってはいけないと言われていたし、やらずに残すのはもったいない(?)気もして、極力全てをやるようにしていたのに、今では1枚のプリントのうち数問やらせてみて、できていれば残りは手付かずのままおしまいにすることもあるのですが、それもいいのかと不安でした。

けれど、実際、その方が子どもは楽しくやれるし、1問に対する集中度も上がるし、頭にも残るのです。本当にいいことだらけ。(これに関しては小学生についてで、中学生などはある程度の量をこなす必要もあるかと思いますが。)

もちろん、私は子どもに気づかせるために必要な教材や教具を考えたり、わからないときには小出しにヒントを出せるよう準備はしたりしていますが、昔と今では指導スタイルは全く変わりました。

それでも、今の方が明らかに子どもたちは伸びているし、頭にも残っている。それは間違いありません。
教えなくたって、子ども達は初めて見る問題にでも自分なりに挑んでいきますし、考えている姿はとてもカッコイイものです。「知らないことだから初めに説明してやらねば」というのは、ある面では大人の勝手な思い込みに過ぎないのだと最近では思っています。

なぞなぞやパズルなどが好きな子達は、本来あれこれ考えることが好きなのです。
誰でもわかる簡単ななぞなぞなんて結局は楽しめないのと同じで、ちょっと骨のある問題の方が解き甲斐もあるのではないかと思います。
パズルの組み立て方、解き方を全部教わって、その通りにやってできたって、ちっとも嬉しくないように、説明を聞いてその通りにやって解けたって、結局何にも楽しめないのです。

幸いなことに、これまで「ちゃんと教えてくれない」と文句を言った子はひとりもいませんし、やり方を教えないことでお家の方から苦情を言われたこともありません。

もしこの先、「やり方を教えてくれないからイヤだ」という子に出会い、私の考えを伝えても納得して頂けないようなことがあれば、私は迷わず、「やさしく手取り足取り教えてくれる、昔の私のような先生」のところへ行って頂こうと思っています。

宮本先生のこの言葉がとても心に残っています。

「ウサギ殺しの少女ケース1はかつての私です。流血教師も熱血教師も間違いでした。二度と同じ過ちは繰り返しません。」

私は「流血教師」だった時代は一度もありませんが、一所懸命なつもりで子どもの考える力を奪う指導は、この先もう二度としないと、深く心に刻んでおこうと思っています。

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コメント

willseedsさん、お久しぶりです。

「いかに教えず、本人に気づかせるか」、大学生を教えるときにも同じことがいえると思います。その場で学生さんに満足してもらいたいがために、ついつい教えすぎてしまうのです。いつも後で、「しまった、あそこまで言わなくてもよかった」と後悔します。本人に考えさせて、本人が導き出した答というのは、ずっと頭に残っているものですよね。本人に考えさせる力を奪うような
指導は二度としない、、、改めてそう思いました。

この9月からハワイ大学の博士課程に進学することになりました。ハワイからもブログを発信しますので、これからもよろしくお願いします。willseedsさんのブログも楽しみにしていますので。

投稿: satchy | 2006年4月22日 (土) 21時05分

お久しぶりです♪
ブログ拝読して、すごいなぁ、留学されるんだぁと思っておりました。私なんて中学英語もかなり怪しい状態なので、本当にただただ尊敬です。
こちらこそ今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

あ、satchyさんが思う「中学生の」効果的な英語の学習法とかってありますか?もしあればご指導ください。私も勉強しますので。。。(苦笑)

投稿: TOH | 2006年4月22日 (土) 22時31分

効果的な学習法、難しいですね。中学生の間は、教科書の文章を暗記するくらい音読することでしょうか。といっても、中学は英語学習を開始する時期なので、英語とその背景にある文化に興味を持つことが何より大事なのかもしれないですね。その動機付けをどうするかが先生の役割なのでしょうね。「なぜ英語を勉強するのか」私の考えが正しいかどうか分かりませんが、自分の言葉で英語を学ぶ喜びを伝えていければいいなと思います。あ、何かご質問の本題からそれてしまったような。。。スミマセン!willseedsさんの学校には中学生もいらっしゃるのですか。中学生、、、私にとっては指導が一番難しい学年でした。

投稿: satchy | 2006年4月23日 (日) 11時40分

satchyさんこんばんは~。お返事ありがとうございます♪
私自身、英語は中1のときから好きじゃなかったので、
どうすれば楽しく勉強できるのかがわからないのです。。。
教室には中学生は数人しかいませんが、1人でもいたら
その子にとっていいことなら何でも知りたいのですよね。
また色々教えてくださいませ。
ありがとうございました~~。

投稿: TOH | 2006年4月24日 (月) 02時38分

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