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2006年3月25日 (土)

校則にまつわる思い出

昨日、なぜか担任して頂いたことも、授業を持って頂いたことすらもない中学時代の先生のお疲れ様会(まあ、単なる食事会ともいう雰囲気だったのだが)に呼んでもらった。

声をかけてくれた子は、先生が私の担任だったのではと思っていたようだけれど、誘ってもらった私は行っていいものやらと悩みつつも、懐かしいお顔も拝見したくって、参加させてもらった。

私は仕事の関係で遅れての合流だったのだが、先生には誰が来るかを内緒にしていたらしい。
遅れて到着すると、友人達が私に気づき手を振ってくれている。そして、私の顔を見た先生が「おぉ、○○や。」そんな風に言っているのが微かに聞こえた。

お久しぶりですとご挨拶をしながら、改めて、私が来させてもらってよかったのかと尋ねると、いいよいいよと言ってくれたが、一度も持って頂いたことがないと思うのだけどと続けると、先生までが

「え?俺持ったことないか?でも、俺、○○知ってるぞ?」

そんなお答え。まあ、珍しい苗字の上、学級委員や生徒会役員などもしていたから、私のことをご存知ない先生は殆どおられなかったと思うので、別に不思議ではないけれど、その程度の関わりしかなかった私のことを、今でも見てすぐわかってくださることに感激もした。

小人数だったので、食事をしながら歓談し、あっという間に時間は過ぎた。
昔話をする中で、中学時代の同級生が集まると必ずというほど出てくるのは、今だったら大問題になるであろう理不尽な校則にまつわる思い出だ。

私達は多感な年頃だったし、あまりにも強烈な印象だったため、いつまで経っても覚えているのだが、先生は毎年新しい子達と出会い、校則もどんどん変わっていくものだから、別の意味で新鮮なようだった。

友人達が集まると必ずというほど出る話が、「茶漉し事件」や「お茶凍らせ事件」「修学旅行ワカメちゃん前髪ネタ」たちだ。
多分、私達の同級生が集まれば、きっと夜が明けるまでずっと語っても語りつくせないぐらい、校則や理不尽な規則、判断基準に関する思い出はあるのではないかと思う。

かなり有名な「茶漉し事件」などは、今だったらもう大問題のような話だ。

中2のとき、今だったら宿泊訓練とかいう呼び名だったりもするのか、2泊か3泊かの旅行行事の直前、学校で喫煙者を含めた校則違反者が見つかった。そのせいで、一時は旅行自体を取りやめるという話にもなったのだが、とりあえず行くことにはなり、行った先で延々と班で反省会、クラスで反省会、学年で夜にナイター照明のついたテニスコートで反省会。。。ほぼ全ての行事が取りやめになり、延々と反省会が続いた。

その頃学校では当たり前にあった抜き打ちの持ち物検査が、その旅行中にもされることになった。
各学級の学級委員数名と先生方がそれぞれ自分のクラスの子達の荷物を調べるのだ。運良く私に言いにくることができた子などは、持ってきていたリップクリームやソックタッチなどを鞄の底板の下に隠すことで難(?)を逃れたのだが、先生に調べられた子や委員に頼めなかった子たちの鞄からは「不要物」とされるものが没収され、その後大広間にその子たちみんなが一列に正座させられた。

その中に、学年でも真面目なことで有名な女の子が混じっていた。みんなも正直、なぜあの子が?と思っていたし、一体何を持ってきたのだろうとも思っていた。

すると、彼女の前に回ってきた先生が、彼女に向かって大きな茶漉しを突き出した。

「これは一体何や!」

すごい剣幕で茶漉しを手に怒る先生。普段、先生に怒られることなど皆無の彼女は恐怖に怯えながら、消え入りそうな声で

「コ、コンタクトを。。。」

と必死で説明をしていた。彼女の話では、コンタクト使用者の彼女は外して洗うときにもしも流れてしまっては困るのでと茶漉しで受けられるようそれを持ってきたというのだ。時代も時代で、使い捨てコンタクトなどなかったし、泊まりに行った先も設備の整ったところではなかったのだから、苦肉の策だったのだろう。

どう考えても「不要物」とは思えないし、そもそも、茶漉しを持ってきて一体どんな悪いことをするというのだろう。
けれど、恐らく「そうか、ならお前はいい」と言える状況ではなかったのだろう。結局彼女は許されることなく、その場に正座させられ続けたのだった。

その時代、私達の学校では体罰なんて日常茶飯事で、学年で先生に手をあげられたことのない子を捜すほうが難しいほどだったから、そのときの旅行にまつわる思い出だけでも、数え切れないぐらいの話がある。

「お茶凍らせ事件」もやはり抜き打ち持ち物検査で起きた事件(?)なのだが、その頃うちの中学ではお茶を凍らせて持ってくるのが禁止されていた。凍らせてきたらそれだけで校則違反なのだ。
けれど、夏は暑いし、こっそり凍らせてくる子は大勢いた。
ある日、クラスの抜き打ち持ち物検査で、私も含め15人ぐらいはいただろうか、お茶を凍らせていた子達が狭い進路指導室だったかに呼び出され、先生からまたお説教。
その中に、やはり真面目で有名な男の子がひとりいた。
そして、その子だけは「お茶」ではなく「梅ジュース(長らく梅酒だという誤解で語り継がれていたのだけれど)」を持ってきていて呼び出されたのだ。

正直言ってみんな驚いた。この真面目な子がなぜ?と。当然ながら、その子は誰よりも一番怒られた。
後で聞くと、梅は体にいいからと、お母さんが持たせてくれたとかなんとか。きっとお母さんもそんなものまで調べられるとは思っておられなかったのだろう。

その他にも、学校に紙袋を持ってきてはいけないという校則があり、その理由は「不良に見られるから」という訳のわからないものだったし、女の子の前髪は押さえて眉についてはいけないというあり得ないきまりによって、特にチェックが厳しくなる行事の前などには、ほぼ全ての女の子の前髪が「ワカメちゃん状態」へと変身するのだ。どんなに可愛い子でも、なかなか笑える姿になる訳だから、可愛くない子にとっては悲劇である。。。

とにかく、語っても語りつくせないほど、今では理不尽なことも多かった。いや、殆どが理不尽なことだった。

そんな話を聞きながら、今ではすっかり緩みきってしまった校則に対し、先生が口にした言葉は「子どもの人権」だった。

おかしな時代だ。

もちろん、子どもは守られるべき存在だと思うし、体罰がいいだなんて絶対に思わない。
ただ、今の子達の話では、中学生が授業中にMDなんかを制服に隠して聞いているだとか、携帯を持っているのなんて当たり前に近い状態だとか、「不要物」の検査など存在しないようだ。

実際、抜き打ちの持ち物検査などはできなくなっているのだろうと思う。
けれど、それは本当に「子どもの人権」に関わることなのだろうか?学校には勉強や部活をしに行くと考えたとき、それらに不要なものは持ってくるべきではないと思う。特に携帯やポケットゲーム、MDなどの小型の音楽プレイヤーなどは学校に持っていく必要はないと言っていいだろう。

けれど、持ち物検査もなければ、絶対持ってくる子はいくらでもいるに違いない。検査があってさえ「不要物」を持ってくる子達はいたのだから。

そして、それを持っていっていることを知らない親も多いはずだ。まさか自分の子どもが授業中に袖からイヤホンを通して音楽を聴いているなんて考えてもいないだろう。

きっとこの状態が続けば、ますますそれは広がり、「不要物」という定義さえ消えてなくなるのかもしれない。
けれど、本当にそれでいいのだろうか。

以前、幼い日の思い出を書いたが、それと同様に中学時代には本当に数え切れないほどの思い出がある。小学校、高校、大学と比べても、中学の3年間の思い出が一番多く、色濃く残っているのは、その多くがあまりに理不尽で印象的な出来事だったり、それにまつわる、今では恥ずかしくなるような「熱血」な思い出だったりするからなのではないかと思う。

すると、これほどまでに校則が緩くなり、何かを規制されることもなくなった子ども達は、大きくなったとき何を思い出すのだろう。
なんとなく楽しかったことなど、時間が経てば忘れてしまう。なんとなく苦しかったことだって、そのうち忘れてしまうのだ。

学生生活を振り返ったとき、今の中学生達はどんなことを思い出すのだろう。同窓会で集まったとき、どんな思い出話で盛り上がるのだろう。

「子どもの人権」というものが、どこか間違って振り回されているような気もして、今の子達と、規則にがんじがらめにされたいたあの頃の私達とでは、私達の方が「幸せ」を感じられる機会が多いのではないか。
そんなことを思う。

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コメント

こんばんは。校則に関する思い出ですが、自分の

地域は「丸刈り」が校則にあり、中学に入学する

と別に運動部でもない子でも丸刈りでした。

(ちなみに私は野球部だったためどっちにしろ、

丸刈りでしたが・・・)当時はそのような理不尽

な校則がたくさんありましたよ。

さすがに今はもうないようですが・・・

投稿: フク | 2006年3月25日 (土) 22時16分

フクさんこんばんは~。
コメントありがとうございます。
昨日、丸刈りのネタは出ませんでしたけど、うちの市もその頃はみんな
丸刈りでしたよ~。うちも今はなくなりましたけどね。
って、フクさん、男性だったんですか!?

投稿: TOH | 2006年3月26日 (日) 02時00分

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