他者の視点(2)
会社を辞めて外から見たら、なんでこんなことに気づかなかったんだろうと思うことが山ほどあった。
そして私はその後、子どもたちと共に学ぶ道を進み始めたのだけれど、もともと自分自身が全く塾にも予備校にも通ったことがなかったので、私の中で「塾」というものは初めて勤めた個人塾が基準になった。その頃は他塾の方とは直接お知り合いになることもなかったので、広告や子ども達の話、多少の噂などでわかる範囲でしか、他所のことはわからないままだった。
オーナーの決定が全てで、その考えと自分の考えが合わないときにも、私の経験自体があまりにも乏しく、狭い世界しか知らない状態だったため、結局意見を押し通すこともできなかった。
最終的に決定的な埋めがたい価値観の違いに耐えかね、そこを辞めることになったのだが、新しく自分で教室を始めるときにも、結局はその塾での経験がベースになってしまった。
その塾にいた頃、広告を折り込んでも反応が0ということが結構あった。だから私にとって、広告は反応がなくて当然という意識があった。
そして、一時一緒に仕事をさせて頂いていた時間講師のお母さん先生がご自宅で生徒を指導するようになり、子どもが6人になったという話をオーナーが「個人で家でやってるのにすごいよね」と言ったので、そうか、6人ってすごいんだと思ってもいた。
だから、教室を立ち上げた最初の広告で3件の問合せがあり、そのうち2組が入ってくれたことは、私にとっては上出来だったし、初年度で15人以上の子たちが来てくれることになったことも奇跡のように思えた。
けれど、ブログを始め、他塾の先生方ともお知り合いになり、私の「常識」は全く常識ではなかったことを知った。
集めている人は1回の広告で何十人もの生徒を集めている。1年で100人を超す生徒を集めている。そんな事実に驚いた。
あるとき、ブログがきっかけで参加させて頂いた勉強会でお知り合いになった先生が教室に来てくださったときに指摘されたことにも少し驚いた。
中が見えないドアは開けるのに勇気がいる。
いくら2階に大きく名前を出していても、殆どの人は上など見上げて歩いてはいない。
他にもいくつかのアドバイスを頂いた。
言われて初めて、そうか、そうかもしれないな。。。そう思った。
会社を辞めたとき感じたはずなのに、結局どっぷりと中にいる私には見えていないことが沢山あるのかもしれない。
特に私は子どもをいかに伸ばすかということばかり考えているから、それ以外のことには殆ど目が向いていないのではないかと思う。
もちろん、子どもを伸ばすことが何より大切なことだと思うし、それは今後も変わらないと思うけれど、子どもを伸ばすために、私自身がもっと広い視野でものを見られるようになる必要があるのだろうとも思う。
そして、世の多くのお母さん方にも、それは当てはまるのかもしれない。
個人的な感覚だし、全員がそうだとも思わないけれど、自分が産んだ子という部分でやはり「母親」と「父親」では子どもに対する距離感のようなものが違うような気がする。(私は産んだことがないので、実際は違うのかもしれないが。)
多くの父親はよくも悪くもどこか子どもを「他者」として見ることができるのに対し、多くの母親は自分の分身、もしくは一心同体的な意識がどうしても強くなってしまうところがあるように感じるのだ。
だから、多くのお母さんから聞く「ダメだと思うんですけど、つい我慢できなくて口出ししてしまうんです。」「自分の子だとダメなんです。」そういうことが起きてしまうんだろうと思う。
大好きなあまり、わかっているのにセーブがきかない。そして、言ってしまった後で反省や後悔をするお母さんはきっと数え切れないほどおられるのだと思う。
だから、お子さんの教育にはお父さんも絶対協力してほしいし、お母さんは自分のお子さんだけを見るのではなく、ほかのお子さんも見たり、先輩お母さん達のお話を聞いたり、時には専門家にアドバイスをもらったりしてはどうかと思う。
もし可能であれば、お子さんの勉強を見るときに、お友達と一緒に勉強させてみたりすれば、感情的になるのを抑えられるかもしれないし、お母さん自身がお友達と交代で自分のお子さんとお友達のお子さんを見たりすれば、そのことで何か新しい発見があるかもしれない。
特に最近は一人っ子さんも多いし、一人っ子さんでないにしても、上のお子さんは何もかも初めての経験で不安になることも多いのではないかと思う。だからそんなとき、何人かのお友達と一緒にお勉強したり、交流することで、不安が減ったり、お子さんに感情的になるのをセーブできたりするのではないかと思ったりもするのだ。
教室を始めて3年弱。出会ってきたお母さん方は本当に皆さん熱心で、何よりもお子さんのことを心から大切に思っていることがよくわかる。それだけに「叱らないでください」「口出しせずに見守ってください」というのは簡単だが、そうは簡単にいかないものなのだということもひしひしと感じている。わかっているのに言ってしまうお母さんの苦悩も。。。
仕事でも子育てでもなんでも、じっとひとつのことばかり見つめて考えていては、きっと見えなくなるものがある。
私も時々は、意識的に他の世界に目を向けたり、自分を客観的に見ることを心がけなくてはと思う。
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コメント
客観性って、とても難しいです。で、祖父母や、幼稚園・小学校の先生方、おけいこごとの先生方に、母の知らない子供の一面を教えていただいたりするんですよ。長女は、意外とおちゃめだったり、二女は負けず嫌いで努力家だったり、長男はクラスのムードメーカーだったり。確かに親に見せない顔を外でしているんですよね。いろいろな人と交流することは、本当に大切。家はくつろいで、力を蓄える場所なんでしょう。ああ、そこで、ガミガミいっちゃいけないんだった。(反省)
投稿: kanachan | 2006年3月24日 (金) 22時11分
kanachanさんのコメントで昔話を思い出しました。
うちの兄の極度の目の悪さに最初に気づいたのは母ではなく学校の先生でしたし、
私が実はかなり神経質な子どもだ(昔はそうだったんです。(笑))ということを母に
気づかせてくれたのは幼稚園の先生でした。
やはり、他人だから見えることもあるんですよね、きっと。
投稿: TOH | 2006年3月25日 (土) 09時33分