幸せな瞬間
自分で教室を開くまでは、少人数ながらも一斉指導形式の塾で仕事をしていた上、殆どが小学校高学年以上だったこともあり、説明したことをどれだけ理解できているか、どれだけ覚えていて使えているかということに目が行きがちでした。
ですが、今の指導法に出会い、更に様々な本などにも出会い、子どもの能力を伸ばすには「教えない」「急がさない」「反復させない」(幼児~低学年に特に言えることですが。)ということが大事だと知り、その後の私の指導はそれまでとは130度ぐらいは変わったのではないかと思います。
一度に1~2人の子だけを丁寧に見る。見るけれど、説明は必要最低限しかしない。どの子にも、知らない言葉など絶対必要なこと以外は説明せずにまず問題に取り組ませてみる。意味も理解していないのにとにかく覚えろという指導はしない。そんなことを心がけるようになって、沢山のことを発見するようになりました。
その中でも何より嬉しいのが、子ども自身が本当に理解して、自ら会得した瞬間、発見した瞬間に出会うことです。
まだ2年半。全く0からのスタートだったこともあり、関わってきた子どもの数はまだ決して多くありません。それまで何年も、沢山の子達に関わっていたはずなのに、その頃にはその瞬間を感じた記憶がありません。けれど、自分で教室を始めてからは何人もの子の表情が変わる瞬間を見ることができるようになりました。
そして、今日もその瞬間に出会うことができました。
年中の冬から通ってくれている男の子。こちらに来てくれる前に既にプリント反復学習でひと桁の足し算引き算などを繰り返してしまっていました。
決して反応は悪くないし、手先も器用。本来ならもっとすんなり伸びてくれるはずなのに、正直言って相当苦戦しました。(しばらくの間は掛け持ちされていたようなので。。。)
そちらの算数を完全にお休みされたぐらいから、少し様子が変わってきたかなという雰囲気はありました。あと一歩というところまできているんじゃないかなと。
そして今日、以前にもやったけれど、復習を兼ねてひと桁の引き算をやっていました。
教具を見せておさらいをし、いよいよプリントをやり始めました。
最初のうちは、彼の口癖である「かんたん、かんたん」という言葉が出ていましたが、正直なところ「簡単」に解いている訳ではありませんでした。
それが、ある1問の問題でふと彼の表情が変わったのです。
もしかして。。。そう思ってみていると、それまでは間違えると消して適当に書き直すということもあったのですが、それが嘘のようにすらすらと答えを出していきました。
その後はひと桁であれば、ランダムに出た問題でも、少し他のことをした後で戻っても、もう間違えることはありませんでした。
そして、彼の表情は満足そうで、穏やかでした。
その瞬間、子どもたちは本当に見違えるように変わります。
ほんの数秒前までもたもたしていた、何度も間違えていた、嫌々やっているのが顔に出ていた、そんな全てが一瞬で嘘のように消え、本当に素敵な表情になるのです。
そんな瞬間に出会えることを心から幸せに思っています。
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