出会いと転機(8)
仕事がいやだからとか、人間関係に我慢できないからとか、そういう理由での退職だけはしたくない。そう決めて仕事を続け、その頃までには恐らく何百回も会社を辞めたいと思ったような気がしますが、6年目を迎えた頃には、仕事への不満も人間関係のストレスも、殆ど感じることはなくなっていました。
そして、震災に遭いました。
間違いなくこれもひとつの大きな「出会いと転機」をもたらしました。
私自身、揺れが収まった部屋でかすり傷ひとつない自分にまたひとつの奇跡を感じました。自分の上に落ちてきたものの順番がひとつでも違えば、少なくとも大怪我は免れなかったという部屋の状態でした。
震災で色んな人の本質が見えました。
普段意識していなかった人の心の温かさ。逆に、普段はいい顔していた人の心の冷たさ。
そんなものに沢山触れました。
震災後、生活がある程度落ち着くまで会社で仕事を続けていました。
ストレスもなく、待遇への不満もなく、ただ、とうとう会社でやりたいことが見つけられなくなっていました。どう探しても目標が設定できなくなってしまったのです。
親会社から天下りでやってくる社長は、入社後既に3人目になっていました。
ただ、親会社は国内有数の総合商社だったため、その企業からの天下りというのは、正直なところ頭はよくても現場には合わない印象がありました。
しかし、3人目の社長は違いました。本社社長の秘蔵っ子とも言われていた社長は、大変な切れ者で、人の心も大事にする尊敬できる方でした。
この社長がいるなら、もう少し頑張ってみようかなと思ったりもして、退職願を出す前に相談させて頂いたのです。
社長の口から出た言葉は次のようなものでした。
「君のためを思ったら、辞めて他で頑張った方がいい。」
やっと巡り合った尊敬すべき社長。とても可愛がってくださった社長。
その方にそう言われ、私の気持ちは固まりました。
ただその後、次に何がしたいのか明確なビジョンのないまま、社内的な事情を考慮して、あろうことか次の仕事を決めずに退職することになりました。
(つづきます。)
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