出会いと転機(2)
1年の時の担任は、奇しくも数学の先生でした。その頃私がもっとも苦手としていた教科です。
その先生はある日こんな話をしてくださいました。
先生は地図に興味があって、地理を専攻したかったんだけど、目に問題があり、色がきちんと見分けられないため、その道を断念して数学の教師になったのだと。
夢を諦めても、高校の数学の先生になられたのですから、間違いなくとても頭のいい方だったのだと思います。ですが、そんなご経験があったからか、本当に親身に素晴らしいご指導をしてくださいました。
クラスの子の大半は、小テストでは当然満点。悪くても2問中1問は完答。そんな感じでした。その中にあって私は数少ない0点連発の生徒だったのです。
そのくせ、なぜか学級委員などをするハメになり、先生とは何かとお話をする機会もありました。正直なところ、いい加減にやっていて点が取れない訳ではなく、私が真面目にやっているということは先生は感じてくださっていたんだと思います。
用事で職員室に行くと、20点満点のテストでたった5点取っただけの私を「○○さん、今日は頑張ってたね~!」と褒めてくださるのです。決してとってつけた風でもなく、当然嫌みでもなく、笑顔で心からそう言ってくださるのです。
もう、何が何でもこの先生の教科だけはできるようになりたい!
そう思わせてくれました。しかし。。。いかんせん、既に数ヶ月躓きっぱなし、数学は2つに分かれていて両方とも目も当てられない状態。
何からどうすればいいのかもわからぬまま、日々出される大量の宿題の解答解説をひたすら赤ペンで写し、少しでもわかるようになりたいと必死で解説の意味を考える日々がしばらく続きました。
ノート提出があったとき、私のノートは見事に真っ赤っかで、多分ただの1問も自力で解いた問題がなかったのではないかと思います。それを提出した後、担任に呼ばれました。
「○○さん、これは何ですか!?」
確かに全て真っ赤で書かれたノートです。宿題をやったとは言えないのかも知れません。ですが、事実を言うしかない。そう思って、先生に伝えました。
「とにかく全部わかりませんでした。だけど、提出しないといけないし、だからと言ってできないのに答えを黒で丸写しする訳にもいかないのでこうしました。」
先生は「わかりました。」とだけ言って、そのノートを受け取ってくださいました。
それからもしばらくは真っ赤っかのノート提出が続きました。一応は進学校でしたから、1回の試験の範囲がかなりあり、ただひたすら読んで写す作業にもかなりの時間がかかりました。でも、なんとしてもこの数学だけはできるようになりたいと、他の教科を犠牲にしてでもその先生の数学だけは試験範囲の問題の解答解説を全てとにかくしっかり読み、わからないながらも問題と照らし合わせながら、ノートに写す。そんなことをしばらく続けました。
サボっていてできないのではないということを考慮してくださってか、1学期の数学は2つともかろうじてぎりぎり赤点を免れました。ただ、相変わらずわからないまま、チャートや問題集を写す日々が続いていました。
(もう少し続きます。)
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