出会いと転機(10)
そこから私は変わりました。
挑戦する前から諦めていたこと、だけど、ずっと自分の夢だったこと、それをやってみよう。もし1年やって全くダメだったとしても、まだどうにか20代。そこから再就職の道も見つけられるかもしれない。
色んな意味でギリギリのタイミングだったかもしれません。あの頃はまだ転職組でも女性は30歳というのがひとつの壁になっていました。もし、あのとき既に私が30を目前としていて、初対面の社長にあの言葉をもらっても、きっと決心はつかなかったのではないかと思います。
とにかく1年。そう決めて、自分のやりたいことを始めました。
まず探したのは「ものづくり」できる場所。
ずっと以前から私は何かつくる人になりたかった。職人に憧れていた。だけど、平凡な才能しかなく、それだけで食べていくのはきっと無理だと、やる前から決めてどこかで逃げていました。
そして、ものをつくるのと同じぐらい大きな夢は「子ども達と共に学ぶ」ことで、その両方をやることを選びました。
ものをつくるというのは、彫金教室に通うことから。子ども達と共に学ぶことは、たまたま見つけた個別指導塾の求人で講師のアルバイトから。そんなスタートを切りました。
既にひとり暮らしをしていた私の収入は激減しました。
転職先を探していたときは、以前の会社でもらっていたお給料は最低ラインで、そうでなければ生活できないと思っていましたが、会社を辞めてからの1年。私の年収は失業保険を合わせても100万ほどしかありませんでした。
将来の不安がなかったと言えば嘘になります。
ただ、大きな発見がありました。
会社員時代ずっと、お給料を頂くのは大変なこと。だから、嫌なことも我慢しなくてはいけないのだ。そう言い聞かせていました。好きなことをやって暮らせるはずなんてないのだと。
そして、そのとき得ていた収入でも自分では全く贅沢をしていた訳ではありませんでしたから、それ以下の収入ではとてもじゃないけれど暮らせない。そんな切り詰めた生活ではストレスが溜まるに違いない。そう思っていました。
けれど、それはどちらも思い込みだったことに気づきました。本当に大きな発見でした。
好きなことをしていれば、少々収入が減ったって、好きだった服が買えなくなったって、殆どストレスはありませんでした。ずっとおかしかった体調も気づけば全て治っていました。
そして、やりたかったことをして過ごす日々は、この上ない幸せを感じさせてくれました。
その後、個別指導のアルバイトを始め、それだけでは当然生活できるはずもなく、お昼間にできる某教育系出版社のFAX回答サービスのアルバイトを掛け持ちで始めました。
(つづきます。)
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