2007年6月21日 (木)

「ひとりで、できた!」 池田政純・池田則子著

またまた「モンテッソーリ」関連書籍を読んでみました。
読めば読むほど、もっと知りたくなってきますね。

「ひとりで、できた! 子どもは手を使いながら一人立ちする

相良敦子監修 池田政純・池田則子著 サンマーク出版

評価 ★★★★☆

相良先生の本は既に何冊か読みましたが、今回は相良先生が監修され、京都で「くすのき保育園」をしておられる、池田政純先生、池田則子先生が書かれた1冊です。

帯に少し小さな字でこう書かれています。

保育園の先生たちが考えた、
「モンテッソーリ流」
教具の作り方と活用のヒント。

ここからもわかるように、本書では実際の教具が写真つきで沢山紹介されています。
6章構成になっており、それぞれの章のタイトルは以下のようになっています。

第1章 子どもは幸せになるよう、創られている
第2章 「敏感期」は、自然がくれた成長のためのチャンス
第3章 子どもたちの、心の声 -「くすのき保育園」の日常から-
第4章 遊具作りのポイントと活動をサポートするコツ
第5章 基本の動きを楽しくマスター 家庭で作れるアイディア遊具
第6章 動きながら自分磨き 感性や知性を高める遊具

第1章から第4章までは主に読み物、第5、6章は主に教具(遊具)の作り方とその遊具の効果などが書かれています。

とても大切なこと、素敵なことがたくさん書かれていますが、一部引用してご紹介します。

第1章より

 幼児期は、人間のハードウエアにも相当する感覚器官や運動器官、そして脳を完成しなければならない時期です。だから、この時期の子どもの周囲には、「感覚器官を洗練することのできるもの」「運動器官を洗練したり鍛えたりすることのできるもの」を豊かに準備してやることや、脳をよく使うことのできる経験をたくさんさせてあげることが大切です。
 感覚器官や運動器官がすでにできあがってしまったおとなが、おとなの価値観で「良い」と思ったものは、必ずしも子どもにとって価値があるとは限りません。
 たとえば、この時期の子どもは一生のうちでこの時期一回きりというほどに全力投球で体を動かしたいのです。
 ところが、都市化された現代社会には、子どもが思う存分に体を動かせるスペースがありません。外から家の中に追いこまれた子どもたちを待っているものは、テレビやビデオ、そしてゲームやパソコンです。
 視覚だけしか使わない、しかも平面の電子画面しか見ないという悪条件に加えて、早期教育のビデオの前に座らせれば意義があると思いこんでいるおとなのせいで、子どもたちのメディア漬けは恒常化してきました。
 その結果は、「新しい荒れ」といわれる、子どものさまざまな問題を生み出しています。(後略)

第2章より(「敏感期」に関する内容から一部引用)

 30年近くもの間、現場で0歳児の赤ちゃんから6歳ごろまでの子どもをたくさん見てきていますと、子どもの動きがどう変化し、体や心はどんなふうに発達するのか、知性がどのように芽生えだすのか、そのときどきで子どもは何に興味をもつのか、という一連の流れがくっきり浮かびあがるように見えてきます。

第3章より

 子どもはおとなが考える以上に、本質を見抜いたり、美しいものに対して敏感な感性をもっています。ごてごて飾りつけたものより、シンプルだけど機能美にあふれるものを好むのです。
 教具も、要素が一つだけのわかりやすいものが好きなのはそのせいです。また、清潔ですっきり整理整とんされた室内にいると、気持ちが落ちつくようです。子どもを取り巻く環境が、おとなの勝手な思いこみで"子どもだまし"にならないよう、注意してください。

第4章では、遊具作りのポイントと子どもの活動をサポートするコツがわかりやすくまとめられています。

第5章では、押す・引く・開ける・閉める・貼る・はがす・・・などの基本の動きをマスターするために有効な遊具とその作り方の紹介がされており、見ていても楽しくなります。
ただ、これらを一般のご家庭で全て作るのは、手間的にもスペース的にもちょっとキビシイのでは?と思うところもあります。ご近所のお友だちなどと手分けして、あの子のおうちではこれとこれ、この子のおうちではこれとこれ・・・という風にできるなら、より有効に色々なものを使えるのかもなぁと思ったり。

第6章では、「折る・切る・貼る・縫う」という指先運動に関する教材などが色々紹介されており、こちらは第5章ほど大掛かりではないものも多いです。(第5章より高度な能力になるのかと思います。)

見れば見るほど、いいなぁ、幼児期にこれがやれたらなぁ・・・と思ってしまうのですが、現状、私の教室でこれだけのものを準備するには、まだまだ勉強しなくてはいけないことも、準備しなくてはいけないものも、クリアしなくてはならない問題もあまりにも多すぎて、部分的に参考にしたり、指導の際に心がけたりという風にしかやれそうにありませんが、こういうことをしっかり堪能して育った子どもは、恐らく心の安定した賢い子になるに違いないと感じています。

幼児のおうちの方は一度読んでみられてはと思う1冊です。

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2007年5月24日 (木)

「そのオモチャ、本当に買ってあげていいの?」 ガリー・バフォン著 

書店に行くとついつい買い込んでしまうため、最近は極力ネット書店利用なのですが(届けてくれるから重くもないし)、子ども達の本は中を見ずに買うのは難しく、取り扱いもまだ限られているので、そういうときについつい他の棚も覗いてしまいます。

そのとき目に留まった1冊がこちら。
なんとも心にひっかかるタイトルだと思いませんか?

「そのオモチャ、本当に買ってあげていいの?」 

ガリー・バフォン著  遠藤 公美恵 訳  

ディスカヴァー・トゥエンティワン

評価 ★★★★★ (私にとってはかなり興味深かった。)

著者であるガリー・バフォン氏は著者紹介によると、臨床心理学者であり、裕福な家庭特有の「心の問題」を扱う第一人者となっています。
実際、この本自体もアメリカの上流階級に属している親向けに書かれているそうで、内容としては日々の生活には全く困らないだけの資産がある、経済的に成功した親が子どもにどう接するべきかという形で書かれています。

更に、アメリカを基準に書かれた本ですので、普段の私であれば、国も違う上、私自身を取り巻く環境とも無縁の層に対するものであり、読もうとさえ思わないはずなのですが、これは違いました。

アメリカではこういうことが上流階級のみで問題になっているのかもしれませんが、本書で扱われている「シルバースプーン症候群」と呼ばれる症状は日本の多くの子ども達にも共通する症状が出ているのでは?と、読めば読むほど感じました。

そもそも「シルバースプーン症候群」というものがなんなのか。
私自身、この本を手に取るまで聞いたことのなかった言葉ですが、本書によると「豊かさが子どもにもたらす弊害と、それによって引き起こされるさまざまな症状」のことをそう呼んでいるようです。

ちなみに、本の表紙を開くと、こんなことが書かれています。

あなたは、こんなふうに思っていませんか?
!「子どもには、自分たちがもてなかったものを与えてやりたい」
!「子どもに好かれたい」
!「すばらしい子ども時代を与えてやりたい」
!「お金の苦労をさせるのはしのびない」
!「ちゃんとお金がすべてではないと教えているから大丈夫」
その思い込みが、子どもをダメにする!

ここだけ読んだら、どういうこと?という感じかもしれませんが、お子さんを持つ親御さんでここに挙げられていることの多くに頷かれる方は、是非一度読んでみられてはと思います。

本書は前書きと後書き他10章から成っており、それぞれの章のタイトルは以下のようになっています。

はじめに お金があれば幸せになれる?
第1章  「シルバースプーン症候群」ってなんだろう?
第2章  忙しい親がおかす五つのあやまり
第3章  処方箋① 必要以上にモノを与えない
第4章  処方箋② モノではなく愛情を与える
第5章  処方箋③ 努力して手に入れさせる
第6章  処方箋④ 金銭管理のスキルを身につけさせる
第7章  処方箋⑤ 親が身をもって示す
第8章  お坊ちゃま、お嬢ちゃま病を予防する(3~12歳)
第9章  反抗期を乗り越える(13~20歳)
第10章 一人前の大人として旅立たせる(20~30代)
おわりに 子どもに本当に遺したいものは?

更に、症候群の診断テストが全部で7つ載っており、現在の我が子の状況を簡易診断できるようにもなっています。

因みに、「シルバースプーン症候群」の診断テストでは以下の5つの質問が挙げられています。

① お子さんは、何事につけやる気がなく、本来の能力を発揮できていないようですか?
② お子さんは、自分の思いどおりにならないとかんしゃくを起こしますか?
③ お子さんは、欲しいものは何でも努力せずに手に入れられると思っていますか?
④ お子さんは、お金をきちんと管理するのに必要な知識やスキルが欠けていると思われますか?
⑤ お子さんは、流行最先端のおもちゃやブランド物の服、ステータスシンボルになるような車をもっていないと、自信がもてませんか?

この本自体、幼い子だけでなく、親にとっての子ども、それこそ、成人して社会に出て独り立ちするまでのことについて書かれているため、小さいお子さんをお持ちの方だと上の5つのうち殆ど当てはまらないと思われる方も多いかもしれません。

ただ、内容的には読めば絶対共感したり、子どもへの接し方を振り返ったりするきっかけを得たりされる方が多いのではないかと思いました。

「努力せずに手に入る」「与えられることが当たり前である」
これらは、少子化が進み、「6ポケッツ」という言葉まで使われるようになった現代の多くの子ども達には決して珍しいことではないように思います。(もちろん、私自身、「裕福な家庭」とは言えませんでしたが、実家を離れるまでは生活の全てを親が面倒を見てくれて、大学の学費を出してもらうのも当たり前のことのように思っていましたので、自分は違うというつもりはありません。)

しかし、それに慣れ切って育つことで、目標が見つからないであるとか、何事に対しても真剣になれないであるとか、人をお金のあるなしで判断するであるとかいった人間に成長していく危険性をこの本では教えてくれているように感じます。

最後に訳者である遠藤氏が書いておられることから一部を引用します。

 もたざることに苦しんだ世代。より多くもつことを目指してきた世代。もっていることを当たり前だと思っている世代――そしてついに、もっていることに毒され、苦しむ世代が登場している。常にアメリカの後追いで社会現象が生じる日本においても、これはけっして対岸の火事ではない。本書が想定する読者は世帯年収が十万ドル以上――日本の共働き夫婦であれば、ごく普通に達成できる金額だ。
 しかも、たとえそれほど収入がなくても、子に不自由な思いをさせまい、引け目を感じさせまいと、親は無理をしてでも子どもの欲求をかなえてやろうとする。「人並み」であることを重視する日本人はその典型で、本書の警告やアドバイスは、だれしも思い当たる節があるのではないだろうか。遊びに連れて行ってあげなければ、自分の部屋を用意してあげなければ、携帯電話をもたせてあげなければ、私立の学校に行かせてあげなければ、「子どもがかわいそう」。しかし、本当にそうなのだろうか?
 あなたも、自分自身に問いかけてみてほしい。
「そのオモチャ、本当に買ってあげていいの?」

長い引用になりましたが、遠藤氏の言葉に何か感じられた方は是非ご一読をお勧めします。

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2007年5月14日 (月)

「モンテッソーリの教育 〇歳~六歳まで」 M・モンテッソーリ著

モンテッソーリについてもっと知りたくて、相良先生の本はとても素敵で読みやすいのですが、それだけ読んでいては偏ってしまうのかな?と、ちょっと古そうな本を1冊とりあえず注文してみました。しかし・・・。

「モンテッソーリの教育 〇歳~六歳まで」 

M・モンテッソーリ著 吉本二郎・林信二郎訳 あすなろ書房

評価 ★★★☆ (私にはかなり読みづらかった・・・)

1982年に出版されたこの本は、1946年にマリア・モンテッソーリが書いた“Education for a New World”の全訳とのことで、書かれたのが60年以上前、訳されたのも25年も前であり、文字が小さく、また表現も難しく、私には読みきるのっが非常に困難でした。
(年代だけでなく、ただ単にもともと私が難しい本が苦手ということも大きな原因だと思いますが・・・。(苦笑))

また、訳者のお一人の林氏がおわりに解説で述べておられるのですが、これも読みづらかった理由のひとつなのかもしれません。(以下引用)

 本書を一読してもわかることであるが、その随所に示唆に富むものを多く含みながら、それを全体のまとまりとしてとらえようとするとき、少なからず困難をおぼえるものがある。これは、本書もそうであるが、その著作の大部分が講演の書きおろしであること、また、著者が女性であることもあって(←ここは私としてはわかるようなわからないような・・・。今の時代にこれを書いたら問題になりそうですよね・・・。)、反復が多かったり飛躍があったりして、そのつながりが判然ととらえにくいところもある。

また、別のところにはこうも書かれています。

 いま一つ、本書を理解しにくくさせているものに、彼女の教育思想の背景にあるキリスト教精神、正確にいえばカトリックの精神があることである。随所に神がでてき、宗教になじみのうすいわが国の読者にとっては、やや唐突に感じられたり、納得しがたかったり食いたりなく感じられるところがある。これは欧米の文献についてほとんど共通にいえることで、そのようなキリスト教的素養のない国民にとっては、まぬがれがたい障害であり、限界であるといわなければならないであろう。

とりあえず、どうにかこうにかひと通り読みましたが、ためになったとか、モンテッソーリ教育についてより理解が深まったとかいう感じは残念ながらありませんでした。
こちらを読まれるのであれば、相良先生の本などを読まれる方がよりよく理解できるのではと思います。(日本人で同性ということもあるのでしょうか・・・。)

この本ではモンテッソーリが実際に経験したこと、発見したことなどが色々書かれているものの、対象が他の国の子ども達ということもあり、今後は日本でモンテッソーリ教育を実践されている方の著書を中心に読むほうがいいのかなと感じました。

ただ、印象に残るところももちろんあり、読んだけどムダだったというわけではありません。単に、モンテッソーリ教育について知りたいという方であれば、これを最初に読まれるよりは他のものを読まれる方がいいのかなという印象を受けたということです。

因みに、印象に残ったところのひとつを引用します。何か考えさせられませんか?

 教師は、子どもたちが自分自身で活動できるように準備するだけで、背景にひきさがるべきであるということが、ますます経験から明らかになっています。わたしたちの仕事は、干渉は不必要なものであり、有害でさえあることを教師に納得させることです。わたしたちはこれを『無干渉の方法』と呼んでいます。教師は、苦心して主人の飲み物を用意しておいてから、かれが随意飲めるようにそれを残して去る召使のように、何が必要とされているかを判断しなければなりません。教師は、ひかえ目になることを学ばなければなりません。(中略)
 わたしたちの教育方法に一番熱心に協力してくれるのは、下層階級の親たちです。子どもがはじめて字を書くと、父親や母親は書けないわけですが、その書いたものを見て拝まんばかりに驚嘆し、興奮を子どもに伝えます。
 ところが、金持ちの親たちは、ほとんど興味を示さず、おそらくは、学校でかれに技術を教えなかったかどうかを聞いてみて、それならかれがやりあげたことはあまり意味がないとみなします。そうじをしたがる子どもは、それは召使の仕事で、そんないやしい仕事を学ばせるために学校にやっているのではないと、しばしば語って聞かされます。さらに、自分の子どもが、その年齢にはむずかしすぎると思われるような数学を学習しているのを見ると、ある母親は、かれが脳せき髄膜炎になるのではないかと心配して、その勉強をやめさせたがります。そのようにして、子どもは優越感か劣等感のとりこになり、ついには、精神的にそこなわれてしまうのです。
 したがって、教育上の実験にとって不利と思われる状況そのものが、実際には適切なものなのです。(中略)自分たちの子どもが知っているために、親たちも読み書きを学びたがりました。このようにして、環境全体が子どもをとおして変わりはじめたのです。わたしたちは、魔法のつえを手中に持っているかのようでした。

もちろん、これは日本では文字を読めない人が殆どいませんし、また時代的にも国柄的にもそぐわないところも多いかと思いますが、それでも何か大事なことが書かれているように感じました。

モンテッソーリ教育については更に学んでいきたいと思っています。

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2007年4月16日 (月)

「お母さんの工夫」 相良敦子・田中昌子共著

先日ご紹介したモンテッソーリに関する相良先生の本を読んだ後すぐにこれを読み終えたのですが、いかんせん、紹介文を書く時間が・・・。
実は今日もかなり断念したい気分ではあるのですが、週2回更新って決めた限りはやれるところまでやり続けようと。
手短なご紹介になるかもしれませんが、何卒ご容赦ください。

「お母さんの工夫」 相良敦子・田中昌子共著 文芸春秋 

評価 ★★★★☆

本書は相良先生と、モンテッソーリのIT勉強会「てんしのおうち」を主宰されている田中先生との共著になっており、1・2章を相良先生が、3・4章を田中先生が書いておられます。

本の帯にはこう書かれています。

子育てに悩めるお母さん、
「手に負えない!」と嘆いていませんか?
医学にもとづく確かなメソッド、
モンテッソーリ教育で、ぐんと子育てが
楽しくなります。

それぞれの章のタイトルは以下の通りとなっています。

第1章 豊かに育つモンテッソーリ教育
第2章 モンテッソーリによる子どもの見方・たすけ方
   1 子どもの見方しだいで、子育てが楽しくなる
   2 一人でできるようになる、お母さんのたすけ方
第3章 お母さんが家庭でできる工夫
   1 お母さんが家庭でできる工夫
   2 お受験とモンテッソーリ教育
第4章 算数・言語、そして平和教育
   1 子どもの成長に合わせた独自の算数・言語教育
   2 幅広い視野を養う文化教育

前半ではモンテッソーリ教育の概要や、その教育を受けて育った子ども達のその後の傾向などが紹介され、後半では本のタイトルからもわかるように、お母さんがご家庭でできる工夫などを具体的に色々紹介しておられます。

読みながら、ますます伊藤先生はモンテッソーリをベースに教材や教具を考えられたに違いないと思うに到っていますが、この本を見ながら、この教具を私も作りたいとか、こんな(時間で切らず、やることをこちらから押し付けず・・・などなど)幼児教育だったらやってみたいけれど、週1回のレッスンだけではダメだよなぁとか、ぼんやり色んなことを考えました。

実際、教室のレッスンでも活かせそうな教具などが紹介されており、作ってみたいものもあるのですが、とりあえず今は時間が・・・。
ですが、モンテッソーリについてはまだしばらく色々読んでみたいと思っています。

この本の中で印象に残ったところをいくつかご紹介しますと・・・。

「『お母さんのイライラ』が解消する知識」という項目ではこんなことが書かれています。

・「子どもを見る」大切さに気づくこと、
・「子どもの見方」のための知識をもつこと、
が必要になります。

そして、次の項では「子どもの見方」の知識があれば「カーッと怒るかわりに、ニンマリ笑い、相手に『変わりなさい』と強いるかわりに『自分を変える』努力をするようになります。」とも、「知識をもっているか、いないかでは、忍耐力もやさしさも大きく変わってきます。」と書いておられます。

また、モンテッソーリ教育を受けた子ども達がその後どんな成長をしていくかを2001年度以降情報を集められたと書かれているのですが、そこにはこんな共通の特徴が見られたそうです。

【人格】にかかわる面
  ・自分で判断し、自分の責任で行動する
  ・自分の考えをしっかりもっている
  ・自分なりの表現をする
  ・自分の行動や態度に自信がある
  ・マイペースである
【生活】にかかわる面
  ・生活のリズムを規則正しく実行する
  ・時間を効率よく使う
  ・忘れ物をしない
  ・挨拶がきちんとできる
  ・人前で堂々と振る舞う
  ・食事の仕方がきれい

以下、【人間関係】にかかわる面として15、【仕事】にかかわる面として6、【学習】にかかわる面として4のことが挙げられています。

これらの傾向を持った人間は間違いなく素晴らしく、周囲からも慕われ、頼られるだろうと思うようなことばかりです。

読みやすさで言えば、先日ご紹介した本の半分ほどの時間で読めるような印象です。
ですが、内容はご家庭で実践できるようなことも沢山書かれており、お子さんをお持ちのお母さんには大いに参考になるのではないかと思います。

読んでいて穏やかな素敵な気持ちになる1冊です。

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2007年4月12日 (木)

「子どもを伸ばす毎日のルール」 辰巳 渚著

ネット書店でちょっと気になったので注文してみたのですが、どうやら最近どこかで話題になったのでしょうか?
少し前に読み終わったのですが、なかなか紹介記事を書く時間が取れず、ご紹介が遅くなってしまいました。。。

子どもを伸ばす毎日のルール 子どものうちに身につけたい100のこと

辰巳 渚著 岩崎書店

評価 ★★★★☆

個人的にはかなり好きな1冊です。
というか、私が子どもの頃、母にこういうことを厳しく言われたなぁと思うことが沢山書かれており、なんだか懐かしいなぁと思いました。

本書は3章からなっており、1章は「家庭での毎日のルール50」、2章は「家の外での毎日のルール25」、3章は「おとうさん、おかあさんへの25のこと」と題されています。

1章、2章は、右ページが子ども向けに書かれ、左ページが親向けに書かれています。
子ども向けは文字も大きく書かれてはいますが、このことを親御さんが躾けるような年代だと、漢字にルビもふっていないので、自分で読んで理解するというのは難しいかと思います。

ただ、ネット書店のレビューなどで、このページをお子さんが読んでほしがると書いておられた親御さんが何人かおられましたので、子どもにとって何か興味を引く表現なのかもしれません。

3章は親向けに小さな文字で25のことが書かれています。

目新しいことが書かれているというよりは、昔は各家庭で当たり前にされていたことなのに、今では忘れられてしまっているようなことを思い出させてくれるような内容だと感じました。

1、2章の見出しをいくつか挙げてみますが、これを見ても、「そんなの当たり前でしょ?」と思われる方もおられることでしょう。

3  よばれたら、すぐに「はい」と返事をする
7  食事の最中にテレビを見ない
11 「麦茶!」ではなく「麦茶ください」と頼む
18 おとうさん、おかあさんのお客さまに「こんにちは」と言う
41 寝るときには「おやすみなさい」と言う
45 「○○ちゃんだって」と言わない

51 人を指差さない
56 近所の人に会ったら「こんにちは」と言う
67 人がずるをしていてもまねしない

他にも、書かれている多くのことを、そういえば子どもの頃親から繰り返し言われたなぁと思いました。
私がそう感じるのであれば、今小さいお子さんの親御さんは大抵の方が同年代なのですから、きっと同じように言われて育った方も多いのではないでしょうか。

それなのに、私自身、これを読むまですっかり忘れていたことも沢山ありますし、今、食事の時間にテレビを消しているご家庭はどのぐらいあるのだろう?とか、子どもは夜9時になったら寝なさいと言っているご家庭はどのぐらい??とか、そのぐらい、今では「当たり前」ではなくなってしまっていることも多いのではと感じました。

3章では親向けに25のことが書かれているのですが、こちらもいくつか見出しをご紹介します。

80 子どもの友だちの悪口を言わない
84 「よそはよそ、うちはうち」でいい
87 子どもの友だちも自分の子と同じように叱ろう
95 子どもを通して伴侶への不満を言わない
97 子どもの前でずるいことはしない

他にも、ちょっとドキッとすることや、うんうん、ごもっともと思うことなどが書かれています。

非常に読みやすいですし、私達が忘れてしまいがちな「大切なこと」が沢山書かれているように感じました。
小さいお子さんをお持ちの方は是非一度読んでみられてはいかがでしょう。

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2007年4月 9日 (月)

「ママ、ひとりでするのを手伝ってね!」 相良敦子著

随分以前、モンテッソーリ教育に関する新書を1冊読み、なんだかとても共感できることが多かったのですが、毎日継続して関わるのであれば絶対これって素敵だよなぁと思いつつも、自分の仕事としては活かせる部分が限られているようにも思え、この本もネット書店で何度かタイトルは見ていたのですが、出版されたのが1985年とかなり古く、さすがに中身もわからないのに買うのは躊躇われるなぁと、そのままになっていました。

それが偶然、つい先日、教室に来てくださっているお母さんが、よかったら読んでみてくださいと持ってきてくださったのです。
ありがたく、早速読ませて頂きました。

「ママ、ひとりでするのを手伝ってね!」 相良敦子著
 講談社

評価 ★★★★★

実は、相良先生の著書は既に2冊購入して、未読の本の中にもあることを発見したのはこの本をお借りする直前。
今読んでいる本を読み終わったら、そのうちの1冊を読もうと思っていたところにこれをお借りできました。順番的にもきっと、こちらを先に読むほうがいいのだろうという気もして、本当にありがたかったと思っています。

今回の評価は(いつも結構そうですが)、私がこの本を好きかどうか、この先生に共感できるかどうかでつけさせて頂きました。
やっぱりいいですねぇ、モンテッソーリ。もっとちゃんと色々読んでみたいと思っています。
特に小さいお子さんをお持ちの方は、是非一度読んでみて頂きたいと思います。

以前から、私はあまり就学前の幼児さんのレッスンには積極的ではないということをもうひとつのブログで告白していますが、というのも、週1回1時間ほどのレッスンだけでは「やらないよりマシ」という程度でしかないのではと思っているからということもあります。

小学生になると、算数の学習という色が少し濃くなることもあり、週1回のレッスンでも十分成果が上がっているように思うのですが、就学前の幼児さんにとっては、毎日の日常そのものが全て「学びの場」なのではないかと思っており、プリントでものの大小判断をしたり、決められたテーマの塗り絵や切り絵をしたり、教具を上手に扱えるように練習したりということより、時間の制限なく、それぞれの子どもが心ゆくまで塗りたいものを塗りたいように塗り、作りたいものを時間を切られることなく納得行くまで作り、ということの方が遥かに素晴らしい「幼児教育」なのではないかと思っているのです。

その思いは、この本を読んで一層強まりました。
20年以上も前に書かれた本ですが、今読んでも全く時代を感じさせるどころか、かえって今だからこそ真剣に受け止めなければならないのでは?と思うことが多いように感じます。

かなり細かい字で200ページちょっとあるため、読むのが遅い私は特にここ2週間ほどはバタバタしていたこともあり、なかなか読み進められませんでしたが、時間をかけてゆっくりと堪能して頂きたい内容のように感じます。

また、書かれている内容はピグマリオンの学習法にもかなり通じる部分が多く、伊藤先生はきっとモンテッソーリも学ばれたんだろうなと思っています。(直接お尋ねしたことはありませんが。)

20年余り前に書かれた本の「はじめに」を少し引用しますが、ちょっとドキッとしませんか?

 

このごろの子どもの手が不器用になったことを調査した先生が、日本教育学会で発表されたときに聞いたことです。ある幼稚園児が自分で顔が洗えない。両手で水をすくうことも、顔まで水をもっていくこともできないという不器用さ。驚いた先生が、「おうちで、どうやって顔を洗ってるの?」とたずねますと、こう答えたそうです。「あのね、ママがね、タオルをぬらしてね、電子レンジに入れてね、チーンと鳴ったらね、タオルが温かくなってね、それでママがふいてくれるの」
 文明器具が家庭生活の中に浸透し、それに比例して、子どもの手、腕、指先がいかに不器用になったかを調査したその発表は、当時大きな反響を呼びました。(中略)

 「子どもの知能は手を使わなくてもある水準に達します。しかし、手を使う活動によって子どもの知能はさらに高められ、その性格は強められます。逆に、子どもが手を使えるものを見いだせず、手を使って周囲にかかわる機会をもたない場合、また、手を使いながら深く集中する体験をしたことのない子どもは、幼稚な段階にとどまり、人格は極めて低いものとなります。
 そんな子どもは、素直になれなかったり、積極性を欠いたり、無精で陰気な性格になってしまうのです。ところが、自分の手で作業できた子どもは、明瞭な性格とたくましい発達を示します」(中略)

 子どもが大人に求めている援助は、電子レンジでタオルを温めて、自分の代わりに顔をふいてくれることではありません。むしろ、自分で顔が洗えるように、洗面台に届くような足台、自分の手につかめる大きさの石けん、自分で手を伸ばしてとったりかけたりできるタオルかけ、自分の手にちょうどよい大きさのタオルなどがあるように、大人が手伝ってくれたらどんなにうれしいでしょう。そして、顔を洗うにはどうすればよいかを、自分がよくわかるように、ゆっくり、ていねいにして見せてくれて、今度自分がやってみるとき、少々失敗しても必ず上手になろうとがんばっているのだから、待って見ていてくれたら、子どもはどんなに安心して喜ぶことでしょう。

長い引用になりました。
しかし、本当ならもっともっと沢山ご紹介したいところだらけです。

これまで読んできた沢山の育児書や幼児教育に関する書籍より、まずこれをしっかり読み込めばよいのでは?と思えるような1冊です。
もしも自分に子どもがいたら、是非これを実践し、小学校入学頃からはピグマリオンやどんぐりなどもできたらどんなに素敵だろうなぁと、現実味のないことを思っています。

お借りしたものなので、ざっとひと通り読んだだけですが、どうにか時間を見つけて、たまっている未読の本と折り合いをつけながら、モンテッソーリ教育についてもっと知りたいなと思います。

小さいお子さんがおられる方、小さいお子さんに関わるお仕事の方にはかなりオススメの1冊です。

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2007年3月22日 (木)

「隣の子供はどうやって東大に行ったのか」 講談社&東大脳研究会

今年1月に出版されたばかりの本ですが、私が注文したときに既に第3版。きっと結構売れているのだろうと思います。
今何かと話題の「東大」に「隣の子どもは・・・」というタイトルとなれば、お子さんをお持ちの親御さんは興味を持たれるかもしれませんね。
早速私も読んでみました。

「隣の子どもはどうやって東大に行ったのか─東大生親子1000人に聞いた子育て術 

講談社&東大脳研究会

評価 ★★★★☆

インパクトのあるタイトル。さて、どんな内容なのだろうと思って読み始めましたが、基本的には東大生親子1000人を対象に調査したデータをもとに書かれているものの、私としてはとてもいい本だと思いました。

こんな風に子育てをして、子どもが東大に行ける可能性が広がるのであれば、東大っていうのはとっても素敵なところだなぁと思いますし、実際の東大生親子のアンケートでこの結果が出たのであれば、尚更、お子さんに必死で勉強をさせておられる親御さんたちには参考になること、目からウロコなことが色々書かれているようにも感じます。

本書は6章からなっており、それぞれ以下のようなタイトルがつけられています。

Part1 食の力
Part2 家族の力
Part3 暮らしの力
Part4 習慣の力
Part5 運動の力
Part6 遊びの力

それぞれの章の項目をいくつか紹介しますが、これまでにご紹介した著書の中で他の先生方もおっしゃっていることがかなりあり、何人もの方が同じことをおっしゃる上、この本に関しては1000人アンケートによる結果でもあるようですから、ある程度信頼できるのではないかと思いました。

例えば、Part1では「朝に『ごはん』をしっかり食べる」とか「頭がよくなる食事は和食が基本」とか書かれていますが、これらはかげ山先生や先日ご紹介した安河内先生、他にも伊藤真先生だったでしょうか、朝は「ご飯」がいいというご意見はよく目にします。(我が家の朝はパン食だったので、そこが足りなかったのかもしれません。(笑))

Part2では「家族の会話こそ、最高の『脳トレ』」であるとか、「『~しなさい』と言わない会話術」、「『ほめる技術』が子の才能を引き出す」、「『好きなこと』で学習力が高まる」など、やはりこれまでご紹介した本の中でもしばしば述べられていたことに共通するところが多く見られます。

Part3では「日中よく遊べば『早寝習慣』がつく」や「『お手伝い』で脳が活性化」、「料理で頭をよくする」や「東大脳は正しい生活習慣がつくる」、「日々の暮らしで算数に強くなる」など、こちらもやはり色々な先生方が述べておられることと通じるところが多いです。

Part4では「勉強は『リビング』で」や「環境に左右されない『切り替え力』」など、こちらも、「頭のよい子が育つ家」などで取り上げられていたことに共通するところがあります。

Part5は「運動習慣のある子は頭がよくなる」や「全身運動と指先運動を」、「公園に行こう」などとなっていますが、こちらは私が尊敬している幼児教育や小学生教育の先生方などが主に述べておられることに共通するところかと思います。

Part6では「『孤独力』が勉強継続のカギ」や「シンプルな遊びが東大脳をつくる」などがありますが、こちらも共感できるところが多いように感じました。

項目を挙げていてお分かり頂けるかと思いますが、いかに勉強させるかということより、いかに正しい生活習慣を身につけさせるか、いかに「家族」という存在が大事か、いかに遊びも含めた運動が大事かというような、子育てする上で東大に興味のない方でも大いに参考になりそうなことが多いですし、もし仮にそれを実践することで「東大脳(というものがあるのかどうかわかりませんが)」に近づけるのであれば、やってみる価値はある気がします。

少なくとも、この本で取り上げられ、述べられていることは、一般のご家庭でも気軽に手軽に取り入れられる、意識できるということが殆どのように感じますので、そういう意味でも読んでみられる価値はあるのではないでしょうか。

教育書や育児書などを沢山読んでおられる方には「目新しさ」はないかもしれませんが、この本が東大生の親子へのアンケートを基にして書かれているということですので、そういう意味で新たに参考になることがあるかと思います。

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2007年3月 5日 (月)

「『早起き力』で子どもが伸びる!」 神山潤監修

以前ご紹介した神山先生が監修された「子どもの早起き・早寝」に関する新しい著書が出たようです。
子どもがしっかり寝ることは賢くなるためにも大切なのではないかと常々感じているので、早速読んでみました。

「『早起き力』で子どもが伸びる!早起き・早寝作戦で差をつける

神山潤監修 子どもの早起きをすすめる会編 廣済堂出版

評価 ★★★★

以前ご紹介した神山先生の著書でも、幼児の睡眠の重要性や睡眠不足の子ども、睡眠が不規則な子どもにどんな影響があるかなどが紹介されていましたが、こちらは全部で130ページあまり、見開きで1テーマ、更にそこに4コママンガが書かれていたりしますので、立ち読みでも1時間かからずに読めるのではと思いますので、購入されるかどうかは別として、小さいお子さんがおられる方は是非一度読んでみられてはと思います。

内容は、小さいお子さんがおられる方には読んでみる価値が十分にあると思うのですが、このページ数、これだけあっさり読めるにしては安くはないかなと思ったりもしますので、まずは書店で手にとってみられるのがいいかもしれません。

本の表紙にはタイトルのほかにこんなことが書かれています。

朝に強い子と、
夜更かし・朝寝坊の子では
能力の発揮に大きな差がつきます。
(赤字は実際に赤字表記)
早起き習慣をつけるための作戦とは!

また、「はじめに」にはこんなことも書かれています。

(前略)しかしそうはいっても、さまざまな刺激に取り囲まれた今の社会で、「自分の子どもが思うように寝てくれない」「なかなか起きてくれない」という悩みを抱えている方もきっと多いことでしょう。
 この本では、まず「早起き」からスタートすることを提案しています。
一日を「早く起きる」ことから始め、朝ごはんをきちんと食べること。そうしてこそ、昼間を元気に活動し、また夜も早く眠くなるというように生活のリズムを立て直していくことができるのです。(後略)

という書き出しの後、4章の構成になっています。

1章 なぜ「早起き・早寝」が必要なの?
2章 「早起き・早寝作戦」開始!
3章 小さなことでも効果は大
4章 「早起き・早寝」を続けるコツと裏ワザ

因みに、1章の始めに書かれていますが、日本の子ども達は世界一夜更かしだそうです。
また、これは他の本にも書かれていましたが、睡眠中に記憶が整理されるため「学力は睡眠中にアップする」ということも書かれています。

2章では、具体的にどんな「作戦」で早起き・早寝をさせたらよいかを実践しやすい方法で、わかりやすく紹介してあります。
特に今の子ども達に関係が大きそうなのは、「寝る一時間前にテレビはオフ!」でしょうか。(テレビにはテレビゲームやビデオももちろん含まれます。)

3章では朝ごはんや昼間の運動の重要性、夕ご飯はどう取るのがよいかなどがやはりわかりやすく紹介されています。

4章では、早起き・早寝作戦を実行するベストシーズンや、どうすれば続けていけるかのコツなどが紹介されています。
そして、最後には、うまくいかないからと親御さんが煮詰まりすぎないように「どうしてもだめなら一度あきらめる」と親御さんを配慮した言葉で締めくくられています。

あとがきの言葉も一部ご紹介します。

 早起き早寝朝ごはんが定着すれば、五〇年後、百年後の日本が大きく変わる可能性があります。なぜなら子どもたちの質が高まるからです。最近三十年で日本人の睡眠時間は三十分減りました。これに対応して日本人の質も低下したのではないでしょうか?いま日本人が三十分早く就床し、睡眠時間を三十分増やせば、現在の日本の課題の多くが解決するのではないかとすら、私は考えています。「大人も子どもも三十分早く寝よう」は、日本がぜひとも早急に取り組むべき方策です。この本をきっかけに子どもたちが、そしてその見本となる大人も元気になることを期待します。

このあとがきが何か心に残った方は是非一度読んでみられてはいかがでしょうか。

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2007年1月29日 (月)

「ことばの遅れのすべてがわかる本」 中川信子監修

書店の店頭でなんとなく目に留まり、少し関心もあったので読んでみることにしました。

「ことばの遅れのすべてがわかる本」 中川信子監修 講談社

評価 ★★★★

何版と呼ぶのでしょうか、B5の縦を短くして正方形に近くしたぐらいのサイズで、挿絵を多用し、2色刷りで作られており、とても読みやすい本でした。

著者の中川氏は「言語聴覚士」という資格をお持ちのようですが、実はこれまで私はそんな資格があることを全く知りませんでした。国家資格で、言語関連の悩み、障害について広い知識を持っており、そういうことに関して悩んだり困ったりしておられる方の相談、指導、療育などを行うお仕事だそうです。

そんなお仕事の専門家でおられる著者が書かれているからということもあるのか、とてもわかり易く、悩んでいる方、不安に感じている方にはとても参考になるのではないかなと♪思いながら読みました。

著書は5章からなっており、

第1章 ことばをはぐくむ10のポイント
第2章 うちの子は、ことばが遅い?
第3章 原因探しより、対応が大事
第4章 困ったときは、専門家に相談
第5章 対応のゴールは、楽しく暮らすこと

それぞれ以上のようなタイトルになっています。
私は子育てをしたことがありませんし、教室に来てくれる子達も基本的にしゃべれる、ある程度はひらがななども読めるという状態になってからの子達ですので、直接何か参考になるということはありませんでしたが、読みながら、お母さん(お父さん)方は子どものことで本当に日々色々なことを考え、迷い、悩みながら育てておられるのだなぁということも改めて感じました。

特に、今のように情報が氾濫している社会では、一層他のお子さんとの差が気になることもあるでしょうし、子どもの数も少ない分、その差が目立ってしまったりすることもあるのかもしれないなと思いました。
そんな中、お子さんのことばのことで悩んでおられる方には十分参考になるのではないかと思います。

また、「ことば」に関することがメインで書かれてはいますが、ことばの発達に関しては特に気になることがないという方でも、子育ての参考になることが色々書かれているのではと思います。

まず1章の「ことばをはぐくむ10のポイント」で書かれていることからいくつか紹介しますと、「ことばを教える前に心と体を育てよう」とか「発音が間違っていても、気持ちを受け止める」とか、「テレビを消して、話す時間を増やす」とか、これまでに読んだほかの育児書、教育書でも大事だとされていることなどが挙げられています。

要するに、「ことば」を育てたいからといって「ことば」だけを教え込もうとしても望むような効果は得にくいということなのだと思いますが、結局子どもを育てるにはバランスよく、体も頭もしっかり使うというようなことが望まれるということなのだろうなと思います。

また、4章「困ったときは、専門家に相談」に書かれているのですが、一部引用します。

迷っているなら、
行ってみたほうがいい

 相談機関や療育機関はそれぞれに特質が異なり、ことばにくわしいところもあれば、別の問題をあつかうところもあります。
 行ってみなければわからない、というのが現状です。行く前から悩まず、困ったらまず相談するようにしてください。主な悩みがはっきりすれば、その専門家を紹介してもらえるでしょう。

このように書いておられ、どんな相談機関があるかなども具体的に紹介してくださっています。
また、ことばが遅れている原因が「難聴」や「口蓋裂(上あごや唇が割れている状態のことだそうです)」など具体的に身体的な障害がある場合は、少しでも早く治療や手術などをすることでことばの発達を促すことができるとも書いておられ、そういう意味でも気になることがあれば早目に相談してみるということも大事なのだなと感じました。

私は本を読むときについつい感覚で読んでしまうところがあるのですが、著者はきっと愛情に溢れた方なのだろうなと、この本を読みながら感じました。
子どもへの優しい思い、悩んでいるおうちの方たちへの配慮が伝わってくるような、そんな1冊でした。

乳幼児をお持ちの方などは一度読んでみられてはいかがでしょうか。(他の方でも参考になることは色々あると思います。私でも興味深く読めたところが沢山ありましたので。)

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2007年1月11日 (木)

「赤ちゃんと脳科学」 小西行郎著

約1年前に読んだ「早期教育と脳」がとても素敵だったので、その後すぐこの本を購入したのですが、タイトルからして私にとって急いで読むべきものという意識がなかったため、他の本を先に先に読んでしまい、結局長らく「積ん読」になっていました。

「赤ちゃんと脳科学」 小西行郎著 集英社新書

評価 ★★★☆

以前ご紹介した本はとても興味深く読めたのですが、この本はまあ、確かに非常にタイトルに忠実で、そういう意味では評価は星5つでもいいのか?という話なのですが、「赤ちゃん」を「脳科学」の視点から見て、実際に色々なデータなどを紹介しつつ書き進められているものでした。

何度も白状しています通り、私は難しい本が苦手でして、この本も大半が科学的データや専門用語などで赤ちゃんについての研究結果が紹介されていたりして、読んでいてもどうもすっと頭に入ってこず、おまけに、そもそも現時点で(というかこの先も?)「赤ちゃん」について詳しく知りたいという欲求や必要性をあまり感じていないということもあるのか、尚更うわべだけを読み流しているような状態になってしまいました。

途中で読むのを断念しようかとまで思ったのですが、個人的に、4章以降は興味を惹かれるところも結構あり、どうにか最後まで読み通すことができました。後半部分は星4つか4.5個という感じです。

さて、本書の構成に戻りますが、全部で8章からなっており、それぞれの章のタイトルは以下のようになっています。

序 章 悩める母親の育児事情
第1章 誤解を生んだ「科学的根拠」
第2章 胎児の能力の不思議
第3章 生後二ヶ月革命
第4章 神経ダーウィニズムと子育て
第5章 テレビと育児
第6章 育児の目的と目標
第7章 子どもの発達を幅広く「見る」

私は第4章以降がと書きましたが、赤ちゃんをお持ちのお母さんやこれから出産される予定のお母さんなどは、きっと前半部分も参考になるところが沢山あるかと思います。

昨今の「脳」ブームや幼児教育ブームなどで数え切れないほどの情報が氾濫していますが、情報に振り回されるのではなく、どういう風に判断し、子育てをすればよいかなど、小西先生なりのお考えがデータと共に書かれています。

以前ご紹介した著書でも感じたのですが、小西先生の赤ちゃんや子どもに対する視点には愛情が溢れているように思います。また、絶対これが正しいのだ!というようなご意見ではなく、赤ちゃんや子どもが幸せになるためにはこの方が望ましいのではないかという控え目ながら納得の行くご意見が書かれているように思います。

本の帯にもこう書かれています。

「天才」に育てるより、
「幸せ」な人間に育てたい!


胎教、早期教育は有効?
三歳児神話の呪縛?
赤ちゃん学の第一人者が、
最新の脳科学の知見から、
赤ちゃんとの上手な
つき合い方を説く。

ある意味、この帯の言葉でこの著書の紹介が全てなされている感じですね。

第4章以降で特に心に残った部分を引用でご紹介します。

第4章より
 子どもを叱ることはいくらでもできます。観察などしなくても、自分の基準に合わなければ感情一つで怒ればいいからです。しかし誉めるのは、相手を見て、きちんと「観察」していなければできません。ですから「見守る」ことが重要なのです。
 子どもがその能力を伸ばすのは、脳に情報を詰め込んだときよりも、うまく誉められてやる気がでたときです。

同じく第4章の以下の文章からは、小西先生のお人柄、価値観がよくわかる気がします。

 二〇〇二年、NHKで『奇跡の詩人』という番組が流され、言葉も発せられないほど重度の障害児が素晴らしい詩を書いている、と賛美されました。(中略)
 しかし、私が思うには、重度の障害児が詩を書いたからといって、それを「奇跡」だとするその姿勢のほうが問題なのではないでしょうか。障害をもった子どもが訓練の結果で詩を書けた、だから素晴らしい、というのであれば、努力しても詩も書けず、言葉も発することができない障害児は素晴らしくない、ということにもなりかねないのです。
 どんな障害をもった子どもでも、あるいはのんびりした子どもでも、ありのままに人生を幸せに送ることができれば、それこそが素晴らしいことであると私は思うのです。

第5章は「テレビと育児」と題されており、小さなお子さんがおられる方は是非一度読んでみられてはと思うことが書かれています。
現代社会において、さまざまなメディアとのつき合いが必要なのは間違いないだろうとした上で、現在はまだ科学的なデータが限られており、テレビやビデオ、ゲームについて更に科学的研究をしなければならないとしておられます。

その上で、先生なりにこのように締めくくっておられます。

人間は、外部から与えられる情報による受動的な教育と自ら求めて新たな情報を得る能動的な教育のバランスを保ちながら、成長、発達を遂げていく生き物です。
 極端に生活の中からテレビを排除したり、逆に生後間もなくからテレビを長時間見せ続けるようなことは避けるべきです。

第6章より

ヨーヨー・マの姉の早期教育の例や、海外で暮らす親子の事例などを紹介しつつ、こうまとめておられます。

どのような教育方法であれ、将来に対する目的や目標を設定せずに、良いといわれることを人にいわれるまま、過剰に行うことに問題があるのではないでしょうか。

こちらもちょっと印象に残りました。

 よく小児科の外来で、子どもをスポーツや習いごとの教室とか学習塾などに通わせることについての相談を受けます。
「この子がサッカーをしたいと言うのですが、サッカースクールに入れたほうが良いでしょうか?」
 とか、
「この子がサッカーをしたいと言ったものですから」
 という母親は少なくありません。
 でも待ってほしいのです。子どもが「サッカーをしたい」と言っても、それは親や友人たちと「遊びたい」という意味で言っていることが多いのだと思います。たとえば父親と一緒にサッカーをすることで、ときには父親の偉大さがわかったり、案外へたくそでいっそう父親に親しみをもったりするかもしれません。

第7章では、小西先生の言葉ではないのですが、感動した言葉を引用させて頂きます。

福井大学で障害児教育に携わる松木健一郎助教授から聞いたお話ということで紹介されている文です。
障害によって生まれたときから寝たきりでチューブで栄養を取っていた翼(仮名)くんがあるときから医師に口まで流動食を運んでもらって摂取できるようになり、発達を上へ伸びることと捉えた場合、一般には、次は自分で・・・とか、固形物を・・・とかいう発想になるのかもという話の続きに書かれています。

しかし、松木氏の考えは違っていました。
「医師に口まで流動食を運んでもらい、飲み込めた翼くんは、次に母親に手伝ってもらって食べられるようになると思う。母親はそれを心待ちにしていたからね。で、次はひょっとしたら父親だろう。そうすると、相手によって会話の内容も変わるでしょう?
 中には食べさせるのが下手な人や、気の合わない人もいて、翼くんはいやがるかもしれないな。翼くんの感情はどうなるだろう?一人で食べられないとはいっても、他人との関わりの中で食事ができるようになれたんだ。大きな進歩じゃないか。私は、そうやって着実に翼くんの世界を広げてやりたい」

この後は小西先生の言葉です。

 誰が口まで食事を運ぼうと、翼くんが「他人に食べさせてもらう」ことに変わりはなく、発達の段階としては同じレベルにあります。
 しかし、木が上に伸びながら、同時に横にも葉を茂らせたり、花を咲かせたりするように、このときの翼くんも自分以外の誰かと関わる機会が増えることで、縦へ横へと広がったのだと思います。これが、本来の子どもの発達のあるべき姿だと私は思うのです。その意味で、子どもはやはり大きな可能性を秘めているのです。

きっと、小西先生はとてもとても愛情に溢れる素敵な先生なのだろうなと、この本を読んでも改めて感じました。

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