« 「お母さんと一緒にお料理で学ぶ小学算数」  大嶋秀樹著 | トップページ | 「世界最大の虫食い算」 安福良直著 »

2009年2月 2日 (月)

「心からのごめんなさいへ」 品川裕香著

あるブログで取り上げられていて、品川氏の著書は以前にも発達障害関係のものを読んだこともあり、タイトルにも惹かれ、読んでみることにしました。

「心からのごめんなさいへ 一人ひとりの個性に合わせた教育を導入した少年院の挑戦

品川裕香著 中央法規

評価 ★★★★★

本に関してはあまりもったいないと思わず、次々購入するくせに、どこかで1500円を超えると「高い本」と思ってしまうところもあり、そういう意味でこの本は微妙に高く、もし紹介されたブログと出会わなければ読むことがなかったかもしれないなと思ったりしています。

おまけに、届いた本は280ページ近くのボリュームの上、活字も小さめでかなりぎっしりたっぷり書かれているという印象で、難しい本が苦手な私は読もうとページを開いたときには一瞬躊躇ったほどでした。(苦笑)

この本はサブタイトルにある通り、「少年院」での取り組みについての取材を中心に書かれています。
正直言って、今の私の仕事のどこに「少年院」と関わりが?とお思いになられるかと思いますし、実際、今のところ色々な意味で自分とは離れたところにあるものでもあります。
しかし、読んでよかった。そして、多くの大人、特に子どもの教育に関わっている大人の方には読んでみて頂きたいと思いました。

本の帯に、日本LD学会会長の上野一彦先生が言葉を寄せておられます。
そこにはこのようなことが書かれています。

本当にダメな人間なんて一人もいない。
一人ひとりの子どもと真剣に向き合う矯正教育。
その力強い実践に「どうしたら
少年院に入れてもらえることができるのですか」
と思わずつぶやいた母がいたという。
ここから私たちは明日の教育の鍵を
きっと見つけだすだろう。

確かに、この本に書かれている「宇治少年院」での実践を知ると、何の罪も犯していない子を持つ親御さんでも、その教育を受けてみたいと思われる方はおられるに違いない。
そう感じました。

本書の初めに、品川氏がはこう書かれています。

 最初にお断りしておきたいことがあります。
 この本は、少年犯罪の加害者を弁護するために書くものではありません。
 「加害者だって社会や環境の被害者だ」というような類の本ではありません。悪いことをやって少年院に入ったのです。個々の特性や環境に比重を置き、加害行為を弁護するつもりはありません。
 それから「少年院の教官だって、こんなにがんばっています」という本でもありません。お給料をもらっている以上、そんなことはやってあたりまえだと考えています。
(後略)

こんな書き出しですが、そして、ご本人がどう思っておられるかはわかりませんが、この方は本当に本当に真剣に子どもたちと向き合い、子どもたちを心から大切に思っておられるのだろうということや、本書で取り上げておられる少年院で仕事をしておられる方、それに関わっておられる方全てに敬意をお持ちであろうということなどが伝わってきます。

この本を読みながら、色んなことを考えさせられました。
少年院に入る子どもたちの多くにLDやADHDの疑いのある子、そのような傾向を示す子がいるということ。(本書に何度も書かれていますが、LDの子、ADHDの子がいるのではなく、そういう疑いのある子、そういう障害と似たような傾向を示す子ということで、発達障害のある子が犯罪を犯すという意味ではないということが、きちんと断られています。)
そういう子達にどういう働きかけをすれば効果があるかということ。
それらのことにもとても驚き、色々なことを考えさせられました。

また、タイトルになっている「心からのごめんなさいへ」というのも、確かに少年院で一定期間教育を受けて社会に戻っても、本当の意味で反省をしていなければ、また同じことを繰り返すことになるでしょう。
自分の気持ちさえわからない子どもが他人の気持ちがわかるはずがないというのは、確かにその通りですし、そんな子どもにどれだけ反省しろと言っても、どう反省していいのかわからないのも無理はないことです。

少年院というやや特殊な環境だからこそ、一層こういう指導が重要になるのかもなと思いながらも、帯に上野先生が書かれているように、この本の中に「明日の教育の鍵」があるようにも思います。

発達障害というものが広く意識されるようになってから、まだそんなに経っていません。
教育関係者でもそれがどういうものなのか、どういう対応の仕方が望ましいのか、きちんと理解している方はまだ極少数なのだろうと思います。(私もまだ全然…のレベルです…。)

現在、少年院では「宇治方式」と呼ばれる指導が広がりを見せているそうですが、犯罪を犯してしまった後でしかその指導を受けられないというのも複雑な気持ちになります。
実際のところはわかりませんが、恐らく少年院でお仕事をされている方たちは相当にお忙しいのではないかと思います。その方たちの中に、子どもたちへの愛情、真剣な思いに突き動かされ、こうして個々の子どもに合わせた指導スタイルを確立させてこられた方おられるということは、やはりすごいことだと思います。
少年院に関わる方とそこにいる子どもたちだから可能になったということではないはずだとも思います。

私自身、色々考えさせられることの多い本でした。
一度読んだだけではダメだなとも思っています。
お勧めです。

|

« 「お母さんと一緒にお料理で学ぶ小学算数」  大嶋秀樹著 | トップページ | 「世界最大の虫食い算」 安福良直著 »

コメント

あんさま、はじめまして。
コメントありがとうございます。
コメント頂くまで、逮捕のニュースは知りませんでした。
公務員であるとか以前に、人として考えられないようなことをしていたということが
ニュースに書かれていましたね…。
もちろん、この本を書かれた時点で、品川さんはお気づきでなかったのだと思い
ますが…。
考えがまとまらなくて、なんとも中途半端なレスで申し訳ありません…。

投稿: TOH | 2009年8月15日 (土) 01時02分

この本の主人公は逮捕されました。
彼を安直に賞賛したジャーナリストは、これについての何らかの見解を公表すべきでしょう。

投稿: あん | 2009年8月14日 (金) 22時23分

改めてご丁寧なコメントを頂き、ありがとうございます。
正直申しますと、最初のコメントを頂いたときは「unknown」さんということで
どうコメントをお返しするか迷いました。

ただ、私がここに書いていることは確かにたった1冊の本に書かれたことを
全て素直に受け止めての感想でしたし、私自身、ある出来事でマスコミなど
の報道は必ずしも正しいとは言えず、何らかのフィルターにかけられたもの
なのだなということを痛感したことがありましたので、気をつけねばと思った
次第です。

改めて頂きましたコメントを拝見しますと、きっと何らかの少年院、少年犯罪
などに関係がおありの方なのかしらと思っております。
そして、もしそうでいらして、もし仮に事実とは異なることが本にまとめられ、
それを評価している人間がいると、何か言いたくもなられるだろうなと。

うまくまとまりませんが、どうぞお許しください。
コメントありがとうございました。

投稿: TOH | 2009年7月13日 (月) 00時39分

たいへん謙虚にご自身を内省される方のようで感服しました。

確かに、あの本の中に載っていた元在院少年のことは事実だろうし、素晴らしいことには違いありません。ただ、それは宇治少年院だけのことではなく、地道に少年たちに向き合っている他の少年院でも同じことは起こります。外国のプログラムが導入されているかとかは、ほとんど関係ありません。
少しばかり少年院を見学した人が書いた、単純な英雄物語で語り尽くせるほど少年院現場は安っぽくありません。心ある現場職員は、鼻白んであの本を見ています。
宇治、広島で発生した事態の要因は安直な欧米風プログラムの導入にあります。この事件で、どれだけの職員が傷付き、日々真面目に非行少年の改善更生に取り組んでいる職員がどれだけ迷惑していることか・・・・・・。

どうかご理解ください。

投稿: あんのうん | 2009年7月12日 (日) 17時57分

どなたか存じませんが、コメントありがとうございます。
実際に現場を見たことがありませんし、不祥事は現実に起きたわけですので
不祥事は不祥事。当然素晴らしいことなどではないだろうと思います。

そして、本に書かれていること、報道されていること全て、本当の「真実」は
メディアを通しての情報からではわからないのだろうとも思います。

ただ、この品川さんが書かれた本で、元少年院にいた青年へのインタビュー
などがまとめられていたのですが、それが事実なのであれば、そのことに
関してはやはり素晴らしいことだと感じます。

ですが、どんなことにも色々な面があるのに、一面から見たことだけが全て
正しいと思ってしまいがちな自分を振り返るきっかけを頂きました。
ありがとうございました。

投稿: TOH | 2009年7月11日 (土) 21時24分

でも、その後、宇治はめちゃくちゃ(閉庁になったから目立たないだけ)、広島少に至っては前代未聞の不祥事。
それでも、すばらしいのですかね。

投稿: あんのうん | 2009年7月11日 (土) 18時01分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/96750/43935302

この記事へのトラックバック一覧です: 「心からのごめんなさいへ」 品川裕香著:

» 公務員の給料 [公務員の給料]
公務員の給料は、一般の企業の平均給料といわれています。給料の低い企業もあれば、高い給料をもらっている企業もありますが、その標準的な額が公務員の給料となっています。 [続きを読む]

受信: 2009年2月 5日 (木) 00時36分

» 発達 障害の子育て教育体験記 [発達 障害の子育て教育体験記]
この子をどうやって育てればいいやら・・と 発達 障害のお子様のことで悩んでいませんか? ここに発達 障害のお子様が”おりこうさんになる方法” があります。 [続きを読む]

受信: 2009年2月 5日 (木) 18時29分

« 「お母さんと一緒にお料理で学ぶ小学算数」  大嶋秀樹著 | トップページ | 「世界最大の虫食い算」 安福良直著 »