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2008年6月16日 (月)

「教えることの復権」 大村はま・苅谷剛彦・夏子著

ようやく読み終えました。
内容が難しかったわけではないのですが、なかなか落ち着いて読む時間が取れず、また、ざっと読んで終わりにしたくはない内容でもありで、時間がかかりました。

「教えることの復権」 大村はま・苅谷剛彦・夏子著 ちくま新書

評価 ★★★★★

大村はま先生のお名前は以前から存じ上げていたのですが、なぜなのか、これまで一度も先生の著書を読んだことはありませんでした。
そして、この本ももともとはなんで買ったんだったかな?という感じで、恐らく、以前に苅谷剛彦氏の著書を読んで、苅谷氏ご夫妻と大村先生との共著というところが気になったというところだったかと思います。

しかし、この1冊だけでも、大村先生がどれだけ偉大な方だったのかが十二分に伝わってきました。
今後、先生の著書を何冊か読んでみようと、今は思っています。

うちの教室では「教えない」ということにこだわっていますが、ある意味、それと相反するタイトル。
どんな内容なのかと思いながら読み進みましたが、大村先生のすごさにも心底感心し、苅谷ご夫妻の書いておられることにも納得、共感し、個人的にはとてもいい本だったと思っています。

序章で夏子氏が、小学校時代の国語の授業が面白くなかったということを書いておられるのですが、私にとってはそれは小学校だけにとどまらず、中学でも同じで、少なくとも現代国語の範疇の授業は、どの先生に教わったからといって、特にできるようにもならないし、先生によってできなくなるというものでもない・・・という捉え方をしてきました。
実際、そう思ったから、仮に教え方が下手でも子どもには被害が及ばないなと、国語の教員免許を取った身ですから・・・。

しかし、それは全く間違った思い込みだったのだと言うことを、このたった1冊の本で嫌と言うほど思い知らされました。
もし私が学生時代に大村先生の著書に出会っていたら、私は国語の教師には絶対なれないと思っていたことだろうと思います。

とにかくすごいのです。神様のように思えます。
先生の実践をもっと知りたいと思います。
ただ、もし国語の教員志望の学生が大村先生の実践記録などを読んでしまったら、「自分には無理・・・」と思って教員の道を諦めてしまうかもしれないとさえ思います。

読み始めは、きっともともと素晴らしい才能と情熱の持ち主でおられたんだろうと思っていたのですが、後半である事実が書かれていました。
先生は戦後に、それまで20年近く指導していた旧制高等女学校から、「産声をあげたばかりの新制の中学校」へ移られたそうです。

戦後の極貧の中、子どもたちは学校に来ることすらままならないような環境で、先生ご自身も、これは無理だと諦めかけられたそうです。
しかし、そのときご相談に行かれた西尾実先生がおっしゃったそうです。

「死んでしまったり病気になってしまったら困る。でもそうでなければ、これが本物の教師になるときかな」

と。
その言葉に感動され、その後、教科書も何もないところで、新聞紙を集めてそれを教材にし、新聞だけでなく、雑誌や看板、町の掲示板などからも教材になるものを見つけ・・・と、そんな風に先生の国語の実践は始まったそうです。

何もないところで、目の前の子どもたちをどうにかせねばならない・・・そういう環境に置かれ、もちろん、もともと素晴らしい才能をお持ちだったのは間違いないとは思いますが、仮にそのまま高等女学校で指導を続けておられたら、そこまでの実践はなされることはなかったかもしれないと、そんなことを思いました。

そして、苅谷ご夫妻が書いておられることも素晴らしく、とてもよく似た価値観をお持ちのお三方が集まられての共著なんだなという気がしました。

更に、大村先生の国語教室では、先生はたくさんのてびきを用意し、子どもが詰まったら、さりげなく助けを出し、気づかれないように引く・・・そんな風に指導をしておられたようですが、この本の中で語られる「教える」ということは、私がイメージする「教えない」ということとほぼ重なるような気がしています。

手も足も出ない状態の子どもを放置するのは指導者としての役目を果たしていないわけで、「教えない」といっても、それぞれの子に最低限必要な部分は「教え込む」のではなく、気づかせるきっかけを与えるというような「教える」ということは必要になるでしょう。

また、大村先生たちがおっしゃっている「教える」は一方的に知識を教え込むのではなく、「考える方法」、「議論の方法」などを「教える」ということであり、確かにそれは教えなければできないことでもあるのだろうと感じました。

かなり感動したのですが、うまくまとめきれずです・・・。
時間を置いて、また読み返してみたいと思います。

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