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2007年8月13日 (月)

「小川未明童話集」 小川未明作

もう随分前、もしかしたら半年とかもっと前なのではと思いますが、教育系の雑誌の「おすすめ本特集」の中にこれが紹介されていました。
そのときに紹介されていたものの中から何冊か注文したのですが、仕事に直結しそうなものを優先して読んでしまうもので、随分長い間手元に置きっぱなしになっていました。

「小川未明童話集」 小川未明作 新潮文庫

評価 ★★★☆

紹介の文に「グリム、アンデルセンに比肩する児童文学」と書かれており、また、昔の言葉で表現されているような紹介もあったので、早速読んでみることにしたのですが、この文庫の初版は昭和26年。最初に収められている童話が書かれたのは今から90年近く前のようで、私はまだ影も形もなかったどころか、私たちの祖父母の世代がまだ幼子の頃というほど前のことです。

児童文学にしては漢字もたくさん出てきますし、今の時代の子どもたちにそのまま読んで聞かせても、意味がわからないかもという表現もあちこちに出てきます。

作者紹介によると、

早稲田大英文科在学中に書いた小説が坪内逍遥(この方の名前自体が既に「歴史」で習ったような方ですよね・・・)に認められ、十数編の短編小説集を刊行。大正デモクラシー時代は社会主義運動に参加する一方で、童話を積極的に書くようになり、多くの童話集を出版。戦前の日本児童文学界で最大の存在となる。’53年文化功労者に選ばれる。

となっています。

1冊の中に25の短編童話が収められていますが、心温まるほのぼのしたものもあるにはあるものの、もの悲しいもの、少し怖いものの方が多いように感じます。(時代背景などもあるのかもしれませんが。)

今の時代に大人の私が読んで、昔の日本語の響きの美しさのようなものを感じるところはありましたが、童話として読んだときに感動するか、面白いかと聞かれるとちょっと判断を迷うところもあります。

ただ、小さい子でも論語など日本の古典を声に出して読むことを楽しんでいるということもあるようですし、そう考えると、大人が子どもに読んで聞かせてあげると案外気に入るのかもしれないと思ったりもします。

本書の最後に坪田譲治という方(小川氏のことを「先生」と表現しておられるので、お弟子さんとかなのかもしれませんが)が解説を書いておられます。
そこから一部を引用します。

 童話は文学でしょうか。こんなことを考えている人があるかと思って、これについて一言書いて見たいと思います。
 こんな質問をする人は、童話を玩具同様に考えているとしか思えません。そういう人は、或いは小児科のお医者さんはオトナの、即ち内科なんかのお医者さんより低級な専門家と思っているかも知れません。だが、中国シナのことは知りませんが、アンデルセンを出したデンマークや、グリムの生まれたドイツや、ロビンソン・クルーソーの出たイギリスなどでは、そんなことを考えてる人はインテリの中にはいないと思います。フランスだって、ロシヤだって、アメリカだって同様です。というのは、みな次の時代を嗣ぐ児童のための文化を非常に真面目に考えているからです。そして、その真面目な考え方からですか、童話作家に偉い人が、世界的に偉大な人が、それぞれの国から生まれて居ります。吾国からは今まで、小川先生がその童話を完成した、今から二十年前くらいまでは、そんな人はまずいなかった訳であります。だから、吾国は児童文化を軽視していたのか。それとも、その軽視のために、児童文学の傑作が生まれなかったのか。どちらとも言えるでしょうが、とにかく、ここに小川未明先生という人が現われ、文学としての童話を完成した訳であります。(中略)
 然しまだまだ童話となると、オトナの小説ほど、インテリが敬意を表せず、重くも見ていない感じがあって、私たち童話作家はフンマンに堪えない次第であります。これが改められない限り、吾国の文化は外国に追いつくことが出来ません。児童文化の軽視というものは、民族の将来を軽視すると同様で、無考えも甚だしいものであります。このような民族にいい将来がある筈のものではありません。寒心に堪えずと言っても過言ではありません。恐らくこのままで行ったら、吾国、日本民族は滅びるかも知れません。
 私がここに小川先生の童話を斯様に高い声で叫ぶようなことをするのも、児童文化に関心をもてと、世の人々に言い知らせたいためであります。

これが書かれてから50年以上経ったわけですが、坪田氏の危惧は杞憂に終わっているでしょうか。

お盆で里帰りなどされている方は、おじいちゃん、おばあちゃんがこの童話をご存知かもしれませんね。
ご興味のある方、ご家族で一緒に読んでみられてはいかがでしょう?

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