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2007年8月16日 (木)

「すこしの努力で「できる子」をつくる 」 池田清彦著

教育系雑誌の別冊で、色々な著名な方が「できる子」について意見を述べておられるのですが(そちらはまだ読みかけ・・・)、その中に池田先生が出ておられ、先生のご意見がなんだかすっと入ってきたので、本を読んでみたくなりました。

「すこしの努力で『できる子』をつくる 」 池田清彦著 講談社

評価 ★★★★☆

池田氏は、著者紹介によると、

1947年生まれ。東京教育大学理学部生物学科卒業。東京都立大学大学院で生物学を専攻。早稲田大学教授。
進化論、科学論、環境問題から脳科学、発達心理学まで幅広く論じるサイエンティスト。また、父親としても、三人の子どもを育て上げた。最近は、子どもを里山で遊ばせて鍛えようという運動にも意欲的に取り組んでいる。

と書かれています。もともと生物学がご専門の先生の子育て術。どんなことが書かれているのか楽しみにページを開きました。
本文は話し言葉で書かれており、一部専門的な話も出てきますが、非常に読みやすく、また、個人的にはとても好きな感覚をお持ちの先生だなと感じました。

本書の構成は以下のようになっています。

はじめに 脳の不思議と子育て
第一章  母親が世界である 胎児期
第二章  脳の基本構造を作る 乳児期
第三章  人間のはじまり 幼児期
第四章  暗記のすすめ 小学校前半
第五章  読書と学習の習慣を 小学校後半
第六章  勝ち組移行のラストチャンス 中学校以降
おわりに 子どもは親の背中を見て育つ

そして、「はじめに」にこのようなことが書かれています。

 では、遺伝子が、形質をすべて決定するのでしょうか?だとすれば頭のいい遺伝子を持つ親の子は賢くなるし、運動神経のいい遺伝子を持つ親の子はやはり運動が得意だ、とうことになってしまいますね。
 もちろんある程度、親の資質を受け継ぐ傾向はあります。しかしいろいろな研究の成果や実験データを見ていくと、「遺伝子だけが、形なり、性質なりを作っている」という考えは、どうやら間違いだということが分かってきました。
 そこで、どういう環境に置かれたらどういう遺伝子がどういう反応をするのかということが、生物学的にひじょうに重要な問題になってきたわけです。
 つまり「同じ遺伝子を持っていても、環境によって違う形質が出現することがある」んですから、遺伝子だけではなく環境もまた重要なのだ、ということになります。
 人間でいうならば一番決定的な環境は、胎児期から乳児期の発育環境と幼児期から小学校低学年ぐらいまでの教育になると思います。というのもこの時期までに脳の構造と機能が大体決まるからです。
 それではこの時期に、「どういう環境においてどういう教育をすれば一番理想的な大人が作れるのか?」ということをいろいろ調べてみましたが、実はよく分かっていないのだ、ということが分かったんです。
 そこでそれをいままで自分が蓄積してきた生物学、進化論、脳科学、科学論の知見、そして自分の子育ての経験などを総動員して、理想の子ども、さらには理想の大人の作り方を探っていこうと思います。

また、こんな風にも書いておられます。

 お母さんがあまりにも周りに「一生懸命にやらなくてはならない」と言われてしまうと、それがストレスになって、かえってノイローゼになったりして子どもにもあまりいい影響を与えないでしょう。だからやっぱりお母さんが元気であることがまず大事で、その上で少し余裕を持って子育てをすると、うまく行くと思います。そういうこともあって、「なるべく手抜きを」と言いたいんです。あんまり一生懸命にやらないで、それでまっとうな子どもが育てられれば、それが一番いいわけですからね。と、そういうようなことを考えています。

個人的に、こういう感覚はとっても好きですね。
また、先生は小学校に入ったとき、字が書けず、ひらがなも読めなかったそうですが、こんなことも書いておられます。

 だから小学校に入るまでは、字がかけなくてもなんとかなるのかもしれないな、と自分の経験から思います。言葉をうまく喋れるようになる時期と文字を覚える時期がすこしばかりずれたとしても、別に構わないと思います。
 もっといえば、喋りや文字、計算などの基本的な知能に関することを習得するにはいつの時期が一番適切なのか、という「時期」があるのだと思います。適切な時期に習得させるのが一番効率がいい。その時期よりあまり前や後に習得させようとしてもうまくいきません。
 つまり一番いいときに教育をするというのが、一番省エネで一番効率のいい教育の方法なんです。一歳児に足し算や引き算を教えても、子どももイヤだろうし効率も悪いでしょう。

以下も共感できますね。

 だめな子っていうのは、大ざっぱにいえば、大人になってからも自分で生活できなくなってしまうような子どもですね。よっぽど変人っであっても自分で生活できるんであれば、まったく問題はないと思いますよ。社会ときちんと折り合いがつけられる人間が「ちゃんとした人間」だと私は思います。大金持ちになるとか有名人になるとか、そういうことをめざす前にまず「だめな子」にならないことが大事です。

読みながら、納得、共感できることがとても多く、小学校低学年期にとにかく「読み・書き・そろばん」をと書いておられること以外はほぼ全て「うんうん、そうよね」という感じでした。
もちろん、「読み・書き・そろばん」と書いておられるのも、きっと池田先生のおっしゃる感覚であれば問題ないのだろうとも思うのですが、昨今の色々なブームを鑑みると、その点だけはちょっと賛成しかねるところがあるかなと。

さすが生物学がご専門というだけあって、胎児の頃からの子育てについて順を追って書かれています。
今からお子さんがという方、今おなかに赤ちゃんがという方はもちろん、小さいお子さんを持つ方には大いにお勧めできる内容のように思います。

頑張りすぎない、楽な子育て。
そういう視点から書かれた本ですので、溢れる情報に振り回されてどうしていいか困っておられる方などにお勧めできる1冊です。

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