「東大医学部生が書いた頭がよくなる勉強法」 石井大地著
ネット書店でタイトルが目に留まり、他の本を注文するついでに頼んでみたのですが・・・。
石井大地著 こう書房
評価 ★★☆
普通、こういうタイトルだと、学生が試験などでいかに得点するかとか、とにかく、学生にとっての「勉強」(成績や合否などが付けられる類のもの)に関して参考になることが書いてあると想像しても不思議ではないのではと思うのですが、そういう意味では、まあ見事なまでに外されたという印象です。
また、アマゾンに3人の方がレビューを書いておられるのですが、星3つ、星5つ、星1つと、ここまでばらけるか?という評価。
ただ、個人的には星3つの方の書いていること、星1つの方の書いていることに共感という感じがします。
特に、星1つの方が「学生にここまで偉そうに・・・」というようなことを書いておられますが、正直なところ、私もそれに近い印象を受けました。
偉そうに言われているというのとは若干ニュアンスが違うのですが、どんなにIQが高かろうと、華々しい学歴を持っていようと、人生経験という意味ではやはり、まだ二十歳そこそこの学生さんなわけですから、書いておられる内容が間違っているとかいうことではなく、どうも何か薄っぺらに感じられたり、何かで読んだことがあったり、誰かの受け売りっぽかったりという印象が否めませんでした。
また、以前何の本だったかで、人は一般に、断言されたり、他に意見を押し付けられることに抵抗を感じがちなので、伝えたいことは断言するのではなく、第三者の意見として言ったり(○○さんが・・・と言っていた、であるとか、△△の本に・・・と書かれていた、であるとかのように)する方が抵抗なく受け入れてもらえるというようなことを読んだ記憶があるのですが、正にそのことを改めて納得したという感じです。
間違いなくとても勉強のできる方でしょうし、色々なお仕事もしておられるようですから、仕事もできるのかもしれません。
ただ、ご自身で実際に経験されたことはまだ決して多くないでしょうし、書籍などから得た知識を元に書いているのであれば、ご自分の意見のように断定的な書き方をされるのは少し抵抗がありました。
おまけに、「勉強法」というタイトルなのですが、読んでみても、この本のターゲットは誰なんだ?という印象はぬぐえません。
少なくとも学生が学校の勉強でいい成績をとるために参考にするということには使えなさそうです。
というか、せめてタイトルを「頭をよくする方法」とかにしてあれば、まだかろうじて納得できたかもしれませんが・・・。
因みに、4部、10章からなっているのですが、それぞれのタイトルは以下の通りです。
第1部 「頭がいい」を科学する
第1章 「頭がいい」とは何なのか?
第2章 頭のいい人はどう頭を使っているのか?
第2部 「意識」改革を進める
第3章 「目的志向」で人生が輝く!
第4章 「現状認識」で自分に目覚めよ!
第3部 「思考」メソッドを確立する
第5章 「思考の深さ」で論理力が劇的アップ!
第6章 「アイデアの広がり」で誰もがクリエイティブ!
第7章 「スピード」スターになれるこのやり方!
第8章 「投入時間」でベタに強くなる!
第4部 「知識」を自分のモノにする
第9章 「知識量」がこれで倍増!
第10章「理解度」を上げるこのテクニック!
しかし、こうやってもう一度目次を眺めても、印象に残ったところ、おぉ!と思ったところなどが思い浮かびません・・・。
正直なところ、人によっては共感されたり、参考になったりするんだろうとも思うのですが、個人的に、この方とは根本的な価値観が違うのだろうなと読んでいる途中で感じました。
一番それを感じたのがこちら。「無知のジレンマに気をつけよう!」と小見出しが付けられているところから一部引用します。
同じ大学を卒業した、2人の社会人がいたとします。片方は残業を全くせず年収1000万円。一方は倒れるまで働いても年収300万円。こういうことが実際に起きます。この差は何で生まれるか分かりますか?
答えは、努力でも、能力でもありません。年収は「就職した業界と、会社と、職種」によってほぼ決まります。そのことを知らないで就職活動をすると、倒れるまで働いたのに給料が安い、ということになって、本当に死にたくなるかもしれません。
これが「無知の恐ろしさ」なのです。何十年も同じ会社であくせく働くのは、そもそもしんどいことです。年収に関する真実を知らずに「自分にあった会社」などというものを闇雲に追い求めるのは、まさに自殺行為でしょう。
私は東大の医学部で学んでいますが、医者という職業は稼げないという事実を知っています。働き始めるのが遅いので生涯賃金が少ないし、労働時間が長いので時給が安い。開業すれば年収は増えますが、そもそも何千万もの開業資金、普通は払えませんよね。
昔と違って、医療訴訟も急速に増えています。平均年収500~600万くらいの会社に勤めることができるなら、そちらの方が絶対楽で得な人生です。(後略)
この内容に共感できる方は読まれたら参考になることも多いのかもしれません。
ただ、個人的には「楽であること」、「得であること」と「幸せであること」は必ずしもイコールではないし、所得の高低もそのまま幸せかどうかを左右するものでもないと思っていますので、彼の主張は全く心に響きません。
また、仮にこれが事実で、医者になるのは馬鹿馬鹿しいという人が増え続けたら、誰が医者として病気を治したり、手術をしてくれたりするのでしょう?
ほんの1ヶ所だけの引用ですが、ここに著者の価値観が現われていると思いますので引用しました。
というわけで、テストに役立つとかそういう本でもありませんし、上述の内容に共感できない方にも参考にならないのではと思います。
著者には何の恨みもありませんが、これまでご紹介した本の中でも買うんじゃなかった・・・と思う1冊になってしまいました。
※読みたい方がおられましたらお譲りします。(苦笑)
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コメント
有名進学校から難関大学に進学した人にはこういう価値感に共感を覚える方が多いように思います。最近の勝ち組負け組の発想も同根でしょうね。私なんか世代が違いますからもちろん共感は全く覚えないですが,優秀な若い人たちにはごく自然に受け入れられるような思考回路(別の言い方をすると,計算高いということでしょうか。)ですから,頭から否定しても意味はないと思っています。それはともかく,表題に「東大」とか「医学部」とかいう言葉を使っていかにも売れれば良い式の魂胆が見え見えの本には得るところが少ないのは事実ですね。簡単に釣られる人が多いのも事実ですが。
投稿: | 2008年7月 7日 (月) 22時30分
どなたかわかりませんが、コメントありがとうございます。
私的には、この著者が10年、20年と年を経た後にも、やはり同じ価値観でいるのかなということに少し興味はあります。
投稿: TOH | 2008年7月 9日 (水) 20時37分