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2007年1月22日 (月)

「なぜ勉強するのか?」 鈴木光司著

怖い話は嫌いで、当然怖い本も読まなければ、そういうテレビも映画も見ない。そんな私は鈴木氏のことを「ホラー作家」だと思っていたのですが、お知り合いのある塾長先生がなんと鈴木氏と直接のお知り合いで、その鈴木氏が教育に関する本を出されたと伺いました。それはあまりに意外な!?と思ったのですが、せっかく教えて頂いたので読んでみました。

「なぜ勉強するのか?」 鈴木光司著 ソフトバンククリエイティブ

評価 ★★★★☆

本書はインタビューに答えるという形式で書かれているのですが、鈴木氏に対する私の先入観と偏見はこの本を読み始めて間もなくガラガラと音を立てて崩れていきました。(苦笑)
どうやら鈴木氏は非常に博識で、色々なことをしっかり学んでおられ、それに基づいて小説なども書いておられるようだということがしみじみよくわかりました。

お知り合いの先生に思わず「紹介してください!」と言いそうになったぐらい、どうも素晴らしく頭のよい、そしてきっと人間的にも素晴らしい方のようです。

慶応の仏文をご卒業されたそうですが、作家を目指しておられたので、生活費を稼ぐために家庭教師や塾でのアルバイトをされたようで、そのご経験や、「主夫」として子育てをしてきたご経験なども踏まえてこの著書は書かれているようです。

しかし、非常に論理的で読んでいて何度も自分の考え方の甘さ、いい加減さを思い知らされたりもしましたし、「へぇ~っ、すごいなぁ」と何度も感心もしました。
新書で手頃な価格ですし、是非皆さんに読んでみて頂きたいと思いました。

読み始めたときには、文字がびっちりだし、これはなかなか読み進められそうにないなぁと思ったのですが、難しい話が苦手な私でもなんとか読めましたし、内容はしっかり詰まっているなと感じます。
5章からなっていますが、それぞれの章のタイトルは以下のようになっています。

第1章 すべてに通じる理解力、想像力、表現力
第2章 明晰に、論理的に、分析的に
第3章 正しい学習法
第4章 世界に通用する論理
第5章 未来をよりよくするために勉強する

印象に残ったところを紹介しますと・・・。(実は殆ど全てを紹介したいぐらいなのですが)

第1章より

 大学に入るまでに、学ぶ基本能力を身につけ、大学に入ってからはもっと広く学ぶというのが正しい勉強の仕方であって、そうやって勉強したものは必ず社会に出てからも役に立ちます。
 ところが、勉強する意味を考えずに、ただ受験勉強に追われていると、大学に入学した途端、目標はクリアされたことになる。もったいないだけでなく、これではちゃんとした教養人、知識人が育っていきません。日本にはたくさんの大卒者がいるのに知識人が少ないのは、多くの人が大学に入ってから勉強しなくなるからでしょう。学べるチャンスを手にいれ、勉強する能力も余力もある人たちが勉強をストップさせてしまうのだから、知識人が育っていくはずがない。
 また、そういう人は自分の子どもに受験勉強はさせても、勉強する意味は教えようとしません。「学校の勉強なんて社会に出ても何の役にも立たない」と、自分の子どもに対しても必ず言うようになるでしょう。
 日本はもう少し本物の教養人、知識人を増やし、その知恵を結集することを考える必要があると思います。(後略)

第2章のはじめには「UFOは存在するかどうか」という質問を投げかけ、それについて論を展開しておられるのですが、これはもう不勉強な私には耳が痛い、そして、非常に感動すら覚える内容でした。
私はずっと、宇宙には数え切れないほどの星があるのだから、他にも地球のような星があっても不思議はないと思ってきたのですが、その論の甘さみたいなものをズバッとびしっと書いておられます。

もちろん、絶対に存在しないとおっしゃっているのではないのですが、議論をするのであれば、どれだけの根拠があって述べるのかということの大切さのようなものを述べておられます。

また、「サルは言葉をしゃべれるか」という質問を投げかけ、それについても論じておられますし、「脳死」についても鈴木氏の論理的な説明がなされており、とにかく私は頭をがんがん殴られているような状態に陥りました。(苦笑)

2章の最後にこう書いておられます。

 日本人はもっと世界に通用する論理を身につけるべきですし、理解力・想像力・表現力はそのための基礎となる。勉強でこの三つの力をしっかり養い、さまざまな問題を合理的、論理的に判断する人が増えていけば、社会の幸福度がよりアップする確率が上がると信じています。

第3章の「正しい学習法」に書かれていることも非常に素晴らしい内容なのですが、特に印象に残ったのはここでしょうか。

 教育の場や家庭においても、教師や親が絶対に言ってはいけないことが一つあります。それは「競争社会」という言葉です。「勉強しなさい」と激励するのはまだいいとして、その理由として「世の中は競争社会なのだから」「社会に出たら競争なのだから、負けてはいけない」と言うのは、子どものためにならないだけでなく、間違っています。世の中は断じて競争社会ではないからです。
 現代社会に競争の要素がないとは言いません。サル山のボス争いと同様の現象は確かに起きうる。しかし、これは社会全体を見れば、ほんのわずかなことにすぎません。同じ種の内部、人間なら人間社会においては、競争より協力することによって、生き延びるケースの方がずっと多いのです。

しかし・・・本当に全てを紹介したい・・・。
第4章も是非読んで頂きたいという内容です。

日本社会は母性か父性かで言えば、非常に母性の強い社会だと鈴木氏は述べておられますが、(もちろん、全て論理的に根拠を挙げながら書いておられます。)確かに白黒はっきりさせずに、曖昧な表現を好み、他者との争いを好まず・・・などと挙げ、欧米などと比較すれば明らかにそうなのだろうなと思わざるを得ません。
鈴木氏は母性や父性のいずれかが素晴らしいとかダメだとか言うのではなく、そのバランスが大切だと述べておられます。

すごいなぁと思ったのは、少子化問題の原因のひとつに母性への偏りが挙げられるのではないかというご意見です。
男女平等が叫ばれ始め、ジェンダーフリーの考えが広まる中で、男らしさや女らしさがだんだん失われ、その結果、男女の差がだんだんと縮まっていく。すると、セックスレスになり、次世代が生み出されなくなるおそれがあると鈴木氏は述べておられます。

とにかく、この本では自分がこれまで思ってもみなかったことや、情緒(感情)で何となく流されて考えていたところなどをズバズバと指摘された感じがします。

そして、最後の第5章でも素晴らしいご意見が書かれています。

 アンケート調査で日本人に「世界はよくなっていると思いますか、悪くなっていると思いますか」と尋ねると、八割が「悪くなっている」と答えるそうです。アメリカ人に訊くと、「よくなっている」と「悪くなっている」が五分五分か、「よくなっている」が少し上回るぐらい。日本人がいかに未来を悲観しがちかがうかがえます。

第5章はそういう書き出しで始まるのですが、ここがまた素晴らしいと感じました。鈴木氏は、世界はよくなっているのだとおっしゃっているのですが、悪くなっていると言う人は何を根拠にそんなことを言うのだと、また論理的に意見をまとめておられます。

一番端的に書いておられるのはここでしょうか。

 人間は天国ではなく、地獄の中から這い出してきました。辛い暮らしに満足しなかったからこそ、社会システムを変えてきました。もしも、人間が過去の時代に満足していたら、現在でもサルと同じような生活スタイルを続けていたに違いありません。サルもライオンも鳥もその暮らし方は昔から変わっていません。しかし、人間だけが過去に安住せず、住みよい居場所を求めてここまで来たのです。

まだまだ紹介したりない気がしますが、ご興味を持たれた方は是非読んでみてください。きっと読んで損はないと思います。

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コメント

ashibeさん、こんにちは。
コメント&トラバありがとうございます。
鈴木さんの本、読まれたんですね~。なかなか素晴らしい本ですよね。
ブログ始められたのですね。また覗かせていただきます。
ありがとうございました!

投稿: TOH | 2007年2月17日 (土) 14時54分

TOH先生、以前、もうひとつのブログにコメントしたashibeです。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックが何なのかもよくわかっていないブログ初心者なのですが・・・(~_~;)
いつもこちらを参考にさせていただいて本を選んでいます。
ありがとうございます。

投稿: ashibe2 | 2007年2月17日 (土) 07時14分

Sママさん、こんばんは~。
本、注文されたんですね~。
ここの感想文は完全に私の主観で書いていますものですから、
読まれて「なんか違う・・・」と思われることもあるかもしれません。
そのときは何卒ご容赦のほど。(苦笑)
またご感想などお聞かせ頂けたら嬉しいです。
ありがとうございます。

投稿: TOH | 2007年1月29日 (月) 22時39分

TOHさん お返事ありがとうございます。
なるほど、仰りたい感じ、なんとなくわかります。
鈴木氏の著書、さっそく注文しました。
ご紹介くださっている文を読んでみると、
なかなか小気味よいことが書かれているようですね。
ズバズバっと書かれていながらも、イヤミのない本って大好きなんです。
TOHさんのこちらのブログも同じように思いながら拝読しています。
本…届くのが楽しみです。

これからもどうぞよろしくお願い致します。(^_^)

投稿: Sママ | 2007年1月29日 (月) 16時17分

Sママさん、初めまして。コメントありがとうございます♪
おまけに、以前から覗いてくださっていたとのこと、
重ねてお礼申し上げます。
星4つの理由ですか?(笑)
それはただ単に私の脳みそが足りないからということ
ですね。(苦笑)
素晴らしいことも本当に沢山書かれているのですが、
素晴らしすぎて、話が高度だったりして、イマイチよく
わからないというか、消化はできなかったというところ
があるんですよね、私には・・・。
もちろん、それは内容が悪いとかではなく、あくまでも
私の気持ちの中にストンと完全に落ちたかどうかという
ようなことで、おまけに最高評価が星5つなものですから、
あまり頻発するとなぁというのもあったりしまして。(苦笑)
その程度の理由ですので、内容は本当に十二分に読む
価値があると思います。
スイマセン、何か考えさせてしまいまして・・・。(苦笑)

投稿: TOH | 2007年1月27日 (土) 20時41分

初めまして。小学6年生の子を持つ母親です。
偶然こちらを知りましてすっかりファンになり、少し前からおじゃましています。
TOHさんのお書きになる文章は 読みやすく整理されていて且つ、
情緒の面でも自分と似たものを(勝手に^^;)感じています。
ご紹介くださる本も、どれも手にとってみたいものばかりです。

今回のこの鈴木氏の著書、すごく興味を持ちました。
ぜひ手にとって読んでみたいと思っているのですが、
TOHさんが☆を5つでなく、4つになさったのはどうしてなのでしょうか?
単にちょっと、どうしてかな?と思ったものですから…
もし差し支えなければ、お聞かせいただけませんか。

これからも、更新を愉しみにしていますね。^^

投稿: Sママ | 2007年1月26日 (金) 22時57分

寺子屋師匠、コメントありがとうございます。
なんだか別人のように格調高い(殴)コメント、感激です。
ブログでまで取り上げてくださったのですね。
本当にありがとうございます。
で、いつ紹介してくださるんですか?(殴)

投稿: TOH | 2007年1月26日 (金) 13時19分

世の中は断じて競争社会ではない。

世界はよくなっている。
人間だけが過去に安住せず、住みよい居場所を求めてここまで来た。


ものごとなにかと悲観的に受け止めがちですが、確かにそうですね。

その視点で見ると、色んなことが見えてきます。
繁栄ゆえの問題も、きっと人類の英知で克服できるような気がしてきます。


投稿: 寺子屋ありがとう | 2007年1月25日 (木) 23時22分

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