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2007年1月15日 (月)

「教室の悪魔」 山脇由貴子著

こういうのを読むと、また気持ちが重くなるかもと思いながらも、気になる新刊だったので読んでみました。

「教室の悪魔 見えない『いじめ』を解決するために 

山脇由貴子著 ポプラ社

評価 ★★★★

著者の山脇氏は東京都児童相談センターで心理司をしておられ、また、ベトナム政府からの依頼を受け、児童相談所のスタッフの養成のための講演をされるなど、国内外で活躍されている若手臨床家と紹介されています。

いじめなどがテーマの本はしばしば見た目が重苦しかったりするのですが、こちらもその点は例に漏れず、白黒模様の表紙に白文字でのタイトル。薄いグレーの帯に書かれた「悪魔」だけが赤文字という、なんともまあ、見ただけで手に取るのをやめようかなぁと思ってしまいそうな外観です。

しかし、こちらの本は、前回ご紹介した本と比べ、内容がかなりマイルドで、だからと言って中途半端で役に立ちそうにないということはなく、こういうテーマを扱った本としては、比較的すんなり読める上、いじめの現状についても個々の例をあまり強烈にならないところまで紹介してあり、また、どういう対処をしていけばよいのかなど、大人が取り組むべきこともすっと受け入れられるような書き方をしてあるように思います。

本書は5章からなっており、第1章は「『いじめ』は解決できる」として、実際の相談事例を紹介して、著者と親がどういう対応をしていじめを解決したかが書かれています。
最初にその事例から書かれており、また、文章にも穏やかさと愛情が感じられ、いじめ自体はとても残酷でグロテスクなものでありながらも、読んでいて気分が悪くなったりということがありませんでした。

第2章はいじめの事例を9つのケース紹介し、それぞれの事例について解説をしてあります。
現代のいじめには携帯を使って嘘のメールをばら撒くというようなものもあるそうで、例えば、全くのでっちあげでいじめのターゲットにされた子の名前と顔写真で援助交際の相手を募集するメールがばら撒かれるなどのケースが紹介されています。

また、昔と違い、いじめのやり方がどんどん巧妙かつ悪質になっていて、いかに大人にばれずにやるかということを考えているということも繰り返し書かれています。

読んでいてやはりぞっとするところはありましたし、何よりも、子ども達がこんな風にまでなってしまったのは、間違いなく私たち大人が作り上げた社会に問題があるということなのだろうと、まずは私たち自身が今のいじめの現状を正しく把握するところから始めなくてはいけないのではないかと感じました。

第3章では「なぜクラス全員が加害者になるのか?」と題して、今時のいじめのパターンを紹介していますが、まずこの章の最初に書かれている部分を引用します。

いじめというのは、特定の個人に起こる問題ではない。いじめられる側に原因があるからいじめられるのでもない。誰でも被害者になり得るし、誰でも加害者になり得る。いじめは循環する。些細なきっかけで、そのターゲットは替わり、次々と移行してゆくのだ。だから、いじめ被害の体験があると同時に、加害者になった体験もあるという子は実は非常に多い。
 現代のいじめに、理由はない。だから被害者と加害者の地位は簡単に入れ替わる。
その事を理解してもらうために、消極的加害者が被害者になってしまった事例を紹介しておきたい。

こう書かれた後、クラス全員が誰か一人をいじめのターゲットにし、それがある日あるきっかけでターゲットが変更された事例を紹介しています。

とにかく、読んでいて驚くのが、まるでゲームのように、特に理由があるわけでもないのに誰かがクラス全員からいじめられ、嵐が過ぎるとまた別の子がターゲットとなり、それまでいじめられていた子が今度はいじめる側に回るということが珍しくないらしいということでした。

もし私が今の時代に子どもだったら、ここで紹介されている事例などから考えると、ずっといじめられ続けたかもしれません。ここで紹介されていることが多くの場合に当てはまる事実なのであれば、正義感の強い子、間違っていることは間違っていると主張する子、みんなと群れるのが嫌いな子、そういう子たちがターゲットになりやすいような気がするのです。
今の学校は本当にそんなことがあちこちで起きているのでしょうか・・・。

第4章は「『いじめ』を解決するための実践ルール」と題し、親ができること、すべきこと、絶対してはならないことについての著者の考えを紹介しています。

最後の第5章では「いじめに気づくチェックリスト」がついています。

お子さんがおられる方はもちろんですが、子どもに関わる大人は一度読んでみて頂きたいように思います。
「いじめ」の本ばかり読んでいると、気持ちが滅入ってくるので、当分は読まずにお休みにしようとは思っていますが、この本はそういう意味では比較的読みやすいのではないかと思います。  

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