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2006年11月27日 (月)

「バカをつくる学校」 ジョン・テイラー・ガット著

なかなかインパクトのあるタイトルに、思わず購入してしまいました。

「バカをつくる学校 義務教育には秘密がある」 

ジョン・テイラー・ガット著 高尾菜つこ訳 成甲書房

評価 ★★★★

先月だったか、たまたまネット書店でこの本のタイトルが目に留まり、なんとも気になるタイトルに、外国の本の和訳であるにもかかわらず購入してしまいました。

本の帯には「全米覚醒のベストセラー」と書かれており、著者であるジョン・テイラー・ガット氏はアメリカの公立校教師で、ニューヨーク州の最優秀教師に選ばれた方だそうです。
1990年にニューヨーク市で、1991年にはニューヨーク州で最優秀教師に選ばれたようですが、翌1992年にはこの著書をアメリカで出版し、今年の9月に日本でも出版されるに到ったようです。

アメリカの学校の現状について書かれているため、日本にそのまま当てはまるとは思えない部分も少なくはないのですが、私にとってはこれまで考えてもみたこともなかった視点で書かれている本で、先日ご紹介した「いじめ」に関する本に続き、また何かに気づかされた、目を覚まされた、そんな感じを受ける本になりました。

著者が著書の中で「義務教育における七つの大罪」と題し、こんなことを書いています。

① 一貫性のなさ
② クラス分け
③ 無関心
④ 感情的な依存
⑤ 知的な依存
⑥ 条件つきの自尊心
⑦ 監視

それぞれについて簡単にまとめると、①は授業や時間割が細切れで順序もめちゃくちゃであるということ。②は子ども達には無条件に年齢別、成績別などのクラス分けがなされ、異なる年齢の集団にはまず属せないということ。③はどんなに盛り上がっていても、チャイムが鳴ればそこでおしまい、すぐに次の授業の準備をさせるということ。④は子どもに「教師に褒められたい」「怒られたくない」という感情的依存をさせるということ。⑤は子ども達は何事も自分で判断せず、教師の指示を待つよう教えられるということ。⑥はテストの成績などによって得られる「条件つき自尊心」を教え込むということ。⑦は言葉通り。

この7つに関して著者が述べていることで、特に印象に残ったことがいくつかあるので、それについて、もう少し詳しく引用しますと・・・。

①より引用。

 実際、私の教えることにはまったく脈絡がない。何もかもがばらばらで、めちゃくちゃである。惑星の軌道、大数の法則、奴隷制、形容詞、設計図、ダンス、体育館、合唱、集会、びっくりゲスト、避難訓練、コンピュータ言語、保護者会、教員研修、個別プログラム、ガイダンス、実社会ではあり得ない年齢別のクラス・・・・・・。(中略)
学校の論理は、生徒が何か一つのことに熱中するよりも、たとえ表面的であれ、経済学や社会学、自然科学といったひと通りの専門知識をもっていた方がいいというものだ。(中略)
 まともな人間が求めるのは、ばらばらの事実ではなく、意味である。教育とは、生のデータから意味を引き出させることなのだ。パッチワークのような時間割や、事実と論理ばかりを優先する授業の中では、意味を模索することなどできない。これは小学校ではもっとむずかしい。そこでは、子どもにできるだけ多くの体験をさせることが望ましいとされ、親たちはまだその嘘に気づいていない。(後略)

②より引用。

 こうした年齢別の区分があるのは学校だけで、大人の世界には絶対存在しない。五十五歳の社員を全員同じ部屋で働かせるような会社があるだろうか。
 義務教育が導入される前の時代は、あらゆる年齢の子どもが一つの教室で学んでいて、年長の子どもが年少の子どもを教えるようになっていた。(後略)

③より引用。

(前略)しかし、いったんチャイムが鳴ると、子どもたちにはそれまでやっていたことをすべて中止させ、ただちに次の授業の準備をさせる。彼らは電気のスイッチのように、素早く頭を切り替えなければならない。(中略)子どもたちはチャイムを通して、やり遂げるだけの価値のある仕事はないと教えられる。そのため、何かに深く興味を持つこともない。何年間もチャイムに従って過ごすうち、一部の耐性のある子を除いて、もはや社会にはやるべき重要な仕事はないと思い込むようになる。(後略)

⑤より引用。

 「優等生」とは、教師が示した考えにほとんど抵抗せず、適度な熱意をもって、それを受け入れる生徒のことである。何をいつ学ぶのか、「影の雇い主」が決めたことに従順で、他のことには興味を抱かない。
 一方、「劣等生」とは、教師の示した考えに抵抗し、何をいつ学ぶのか、自分でそれを決めようとする生徒のことだ。教師としては、そうした生徒を野放しにしておくわけにはいかない。そこで、彼らの意志を砕くため、親に連絡するという効果的な手段を使う。(後略)

⑥より引用。

 親から無条件に愛されている子どもは、自尊心が強く、従わせるのがむずかしい。しかし、こういう自信家が大勢いては、社会は維持できない。そこで私は、子どもたちに、自分の価値は専門家の意見に左右されるということを教える。つまり、彼らはつねに教師に評価され、審査されるのである。

これらは、もちろんすべてその通りだとは思いませんが、何か大きな問題提起をしているように感じます。

また、ここに書かれていることも、今の日本でも考えさせられることが多いように感じました。

そして子どもはこうなった

①「大人の世界に無関心になる」
②「集中力がほとんどなく、あっても長続きしない。」
③「未来に対する認識が乏しく、明日が今日とつながっているという感覚がない。」
④「歴史に関心がない。」
⑤「他人に対して残酷になる。」
⑥「親しさや正直さを拒絶する。」
⑦「物質主義的になる。」
⑧「依存的で、受け身で、新しい挑戦に臆病になる。」

そして、何より強烈な印象に残ったのは、「ロックフェラーの『特別書簡』」という項目でした。

ロックフェラー総合教育委員会の最初の使命記述書(マニュフェスト)の抜粋として紹介されているのだが、皆さんはどうお感じになるでしょうか。

 われわれの夢は、人びとがわれわれのつくる型におとなしく身を委ねることである。もはや現在の教育の慣習〔知的・人格的教育〕は色あせ、われわれは伝統に制約されることなく、人びとに善意をもたらし、その感謝と共感を得ることになる。われわれは彼らやその子どもたちを哲学者や学者、科学者にするつもりはない。また、彼らの間から作家や教育者、詩人や文学者を育てるつもりもない。われわれは彼らに偉大な芸術家や画家、音楽家の卵を求めるわけでも、弁護士や医師、牧師や政治家を求めるわけでもない。そうした者はもう十分にいるからだ。われわれの使命はごく簡単である。子どもたちを組織化し、彼らの親が不完全な方法でやっていることを、彼らには完全な方法でやるように教えることだ。

アメリカでは一部の実業家や資本家が、義務教育に政府以上に寄付や助成金でお金をつぎ込んだと書かれており、ロックフェラーはカーネギーと共にかなりの投資をしたようです。
その背景に上述のような目的があったということは、とても恐ろしいことだと感じます。

著者は、これ以上学校はいらないという主張をしておられ、ホームスクーリングを支持しておられるようです。
もちろん、アメリカと日本では違いが多いと思いますが、今日の日本の義務教育を見たとき、著者の述べていることと重なる部分も決して少なくないように思えるのは私だけでしょうか。

教育関係者はもちろん、世の大人に読んでみて頂きたい1冊です。

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