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2006年8月 7日 (月)

「図解 フィンランド・メソッド入門」 北川達夫著

先日もフィンランドの教育に関する書籍(小冊子)をご紹介しましたが、こちらは書店の店頭でペラペラと中を見たところ、ちょっと気になり、購入してみました。

「図解 フィンランド・メソッド入門」 北川達夫著 経済界

評価 ★★★★☆

B5版サイズで全85ページ、しっかりした紙にカラー印刷、写真も使ってあるものの、このページ数にしては若干高いなぁと思ったのですが、読み終わった感想としては、買ってよかったと思えました。

本書の初めにはフィンランドという国がどんな国なのか、とても美しい写真を沢山使って紹介してあります。
「森と湖の国」とも呼ばれるらしく、本当に自然の美しい国のようです。しかし、北極圏に近いため、北部では白夜やオーロラなども見られるそうです。
また、フィンランドは税金は日本より高いものの、医療費や教育費はかからず、老後の心配もない、「生活水準の高い福祉国家」でもあるそうです。

そんなフィンランドの教育について、元外交官の著者が具体的に、とてもわかりやすく紹介しているのがこの本なのですが、これに沿って、ご家庭などでも実際に「フィンランド・メソッド」を取り入れた学びをすることが可能なものになっています。

最初に国の紹介をしたあと、「フィンランド・メソッド」についての説明をし、その後は具体的に5つのメソッドを紹介しています。
その5つとは、「発想力」「論理力」「表現力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」となっており、実際にフィンランドでなされている、それぞれの能力を伸ばす指導が具体例を挙げながら、読みやすくまとめられています。

「発想力」としては「カルタ」が紹介されています。
「カルタ」とは英語でいえば「マインド・マップ(シンキング・マップ)」と説明されていますが、「ドラゴン桜」で出てきていた「メモリーツリー」に似たもののようです。
小学校3・4年の授業で徹底的に「カルタ」の書き方・使い方を練習するそうですが、ひとつのテーマに対して、自由な発想でどんどん枝を伸ばすという練習をするようです。(先日ご紹介した「合格力は考える勉強で伸びる!」にもよく似たものが紹介されていたように思います。)

この方法は発想力を育てるのにもちろん役立つと思いますが、今の時期であれば、夏休みの作文や感想文を書いたりするのにも役立ちそうです。

「論理力」としては「『ミクシ?(どうして?)』攻撃の秘密」という見出しで書き始められていますが、フィンランドの小学校では、とにかく先生は生徒の発言に対して即座に「ミクシ?(どうして?)」と尋ねるのだそうです。
小さい頃から「どうして?」と尋ねられ続ける子どもたちは、自然といい加減な発言はしなくなり、自分の発言を常に客観的に見直さざるを得なくなるといいます。とても納得できますね。

また、意見には必ず理由を答えるということをしっかり身につけるために、小学校のうちに「一定のフォーマット(論理型)」に沿って意見を言う練習をするそうです。
ひとつの意見に対して、「なぜなら」「それに」「また」と理由を3つぐらい考えるよう促されるそうですが、これも、理由もひとつぐらいなら簡単に思いつくけれど、2つ、3つとなるとやはり自分の意見を客観的に見直すことに繋がっていくのだそうです。

次に「表現力」については興味深いのが作文練習法。名詞や動詞、形容詞など色々な単語を15個ぐらい板書したあと、先生が生徒に向かっていうのだそうです。

「さあ、これらの単語を全部使って、作文を書いてみましょう。できるだけ短く書くこと。いちばん短い作文を書けるのは誰かな?」

このように、単語を10~20個指定して、できるだけ短く作文を書くというのは、フィンランドの小学校ではごく一般的な作文練習法なのだそうです。
動詞などの活用があるものは活用させて使ってもいいルールだそうで、この練習法は「言葉を巧みに使いこなす技術」を習得するのに最適だと筆者は述べておられます。

また、作文指導はやはり一定のフォーマットに従って書くというところから始まるようで、基本的な型が身につくまではフォーマットに従って書き続けるそうです。何もかもがとても理にかなっていると思いますよね。私は感心しっぱなしでした。

「批判的思考力」についてはこれもまたすごい。
まずは班でテーマに沿って「カルタ」を書き、話し合いに沿ってひとりの書き手が作文を書き上げると、その作文を班員全員が読み、それぞれに作文のいいところと悪いところを10個ずつ挙げるのだそうです。
そうして挙げられたものを話し合ってそれぞれ10個にしぼりこみ、悪いところを改善しつつ、書き手が再度書き直します。しかし、ここで終わりではないのです。
今度は書き直した作文をとなりの班に渡し、先ほどと全く同じ作業をしてもらったあと、更にそこで挙げられた悪いところを改善しつつ、書き直し。ここで完成の場合もあれば、全ての班にまわして作業を繰り返す場合もあるのだそうですが、すごく興味深い授業です。

また、必要な情報を見極める訓練として、算数の文章題を国語の時間に「読解」するという授業もあるようです。
文章題に書かれている内容からいくつかの言葉を挙げ、問題を解くのに必要なものはどれかを考えさせる。例えば、金額について考える問題であれば、買い物をした場所や曜日などは問題を解くのには必要ありませんが、そういうことを「読解」として考えさせていくのだそうです。これも、文章題が苦手な子どもの指導には参考になりそうですね。

最後に「コミュニケーション力」ですが、こちらは班活動での議論について紹介されています。子供同士の議論ですが、ルールがきちんと決められており、「他人の発言をさえぎらない」「話すときには、怒ったり泣いたりしない」「どのような意見であっても間違いと決めつけない」など10のルールがあるようです。こちらも全て本当によく考えられているなと思うことばかり。

小学生のうちからこういう教育を受けていれば、そりゃ世界トップクラスの学力を有する国になっても何の不思議もない気がします。
とても読みやすく、わかりやすい上、具体的な方法が書かれていますので、ご家庭でも、学校の先生などでも参考にしやすいのではないかと思います。
私も読みっぱなしではなく、しっかり読み直しておきたいと思える1冊でした。

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