« 「『叱らない』しつけ」 親野智可等著 | トップページ | 「武士道」 新渡戸稲造著 »

2006年6月 8日 (木)

「ホスピタリティが日本の教育を変える」 馬場信治著

書店の店頭で、表紙の子どもの笑顔が可愛かったのと、タイトルが気になったのとで購入してみたのですが。

「ホスピタリティが日本の教育を変える 生徒も講師も生まれ変わる感動のエピソード 

馬場信治著 出版文化社

評価 ★★★☆

不勉強なので全く知らなかったのですが、著者の馬場氏は「東京個別指導学院」という東証一部上場の塾の経営者の方だそうです。
私は関西に住んでいるのでこの名前自体は目にしたことがありませんが、どうやら最寄の駅前にある「関西個別指導学院」は同じ系列の塾のようだなということはわかりました。

著者はタイトルの「ホスピタリティ」という言葉を「サービス」とは異なる「無償の心からのもてなし」という意味で使っているようですが、世の中の人みんなが相手を思いやり、相手のために何ができるかということを常に心がければ、「教育」が変わるだけでなく、社会全体が変わるだろうと思います。

また、著書で紹介されている数々のエピソードは、それぞれ素晴らしいものですし、それなりに感動もするのですが、本来涙もろい私の涙腺はこの本では殆ど緩むことはありませんでした。
その理由はなんだろうと考えたのですが、どうも「宣伝色」が見えてしまうような気がしたのです。

これは偏見かもしれませんが、著者の経営する塾は全国で約3万人の生徒を抱えており、講師の数も7千人ほどになるそうです。それだけの人間がいれば、ここに挙げられているようなエピソードはそれこそもっともっと数え切れないぐらいあったとしても何の不思議もありませんし、この中では不満に思っている子ども達の姿は全く紹介されることがなく、また、熱心ではない講師のことも書かれてはいないのです。

ここで紹介されているような講師ばかりであれば、そんな塾を作り上げられたことを心から尊敬しますし、そこで学べる子ども達は幸せだと思いますが、割合としてどの程度がこんなに素晴らしい講師なのかということは正直言って気になりました。

もちろん、それだけの規模に発展させられたのですから、間違いなく素晴らしい面がたくさんあるのだと思いますが、例えば、子どもの学習面で何か悩んでいることがある保護者の方がこれを読んで得られる情報は「うちの塾にきてください」というものでしかないような印象を受けてしまうのです。

というのも、結局突き詰めると全てのエピソードが室長や講師達が生徒達に対してどれだけ心から応援し、時間を割いたか、力を尽くしたかということなのです。やる気のない子のために時間外でも力をした講師がいる、手が届かないといわれた学校に子どもと共に諦めずに努力を続け合格させた講師がいる、学校の理不尽な対応に自ら校長に掛け合って子どもの希望を貫かせた室長がいる。。。そんなエピソードに終始しているため、では、家庭で何ができるのか、よその塾に通っている子はどうすればいいのか、そんなことへの答えは「熱心で誠心誠意子どものことを考えてくれる先生を探しなさい」ということしかないようです。(まあ、それには特に異論はありませんが。)

塾選びの際、「東京個別指導学院」がどんなシステムの塾なのかを知るには役に立つと思いますし、例えば個別指導塾でアルバイトをしている学生講師の方なども参考になることもあるのかなと思いますが、個人的にはわざわざ買わなくてもよかったかなぁと(内容が嫌いとか面白くないということではないのですが)感じました。

|

« 「『叱らない』しつけ」 親野智可等著 | トップページ | 「武士道」 新渡戸稲造著 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/96750/10433326

この記事へのトラックバック一覧です: 「ホスピタリティが日本の教育を変える」 馬場信治著:

« 「『叱らない』しつけ」 親野智可等著 | トップページ | 「武士道」 新渡戸稲造著 »