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2006年4月 2日 (日)

「脳内汚染」 岡田尊司著

このところ忙しかったため、読み終わるのに予想以上に時間がかかってしまいました。
読んでいる途中で何度ご紹介しようと思ったかしれません。
ようやくのご紹介です。

「脳内汚染」 岡田尊司著 文芸春秋

評価 ★★★★★
(面白いとかためになるとかは一旦置いておいて、とにかく読んでみてほしいと思います。)

以前、この本を読み始めたときにコメントを頂きました。「多分洗脳されるだろう」というものでした。
また、アマゾンの書評を見ても、見事に賛否両論。低い評価をしている人の受け止め方を心に置きつつ、なるべく客観的に、冷静に読むよう心がけたつもりです。

しかし、どこをどう読んだって、酷評されるべきことはどこにも書かれているようには思えないし、何より岡田氏が「お金儲け」のためにこの本を書いたなどというとらえ方などできようもありませんでした。

この本を読みながら一番感じたのは、結局早い段階で危険を感じた誰かが警鐘を鳴らしても、科学的根拠がない、金儲けだ、思い込みだ、証拠を出せ、そんな言葉を並べ、危険性を直視しない人は、悲しいことに大勢おられるのだなということです。

霊の存在、生まれ変わりの存在を科学的に証明しろと言われたら、結局は不可能で、だから霊などいないのだ、生まれ変わりなど存在しないのだ、そういう意見を持っている人がいることは知っています。
もちろん、霊や生まれ変わりは信じない人は信じなくていいでしょう。直接他人に迷惑をかけるわけでも、自分の心身に害を及ぼす訳でもありませんから。

ただ、多くの先生方が機械的反復学習が危険だと言っても、本当に危険なら規制されるだろう、科学的な証拠がないじゃないか、うちの子は大丈夫だった、そんな反論で耳を貸してくださらない方と、この本に対して酷評をしている方とがなんだか重なる気がしました。

この本に書かれているのは、ゲームをはじめとした、テレビ、ビデオ、携帯電話などのメディアによる脳への悪影響についてです。
しかし、岡田氏の主張は常に「危険性がある」「悪影響を及ぼす可能性が高い」などの表現に留まっており(また、現段階では科学的に実証しきれるものでもないだけに、尚更断言のしようがないのだと思います。)、ただ、大切な子ども達のために、大人達がその危険性に目を向けてほしいというものなのです。
この主張のどこが「金儲け」のためだったり、「いたずらに恐怖心を煽るもの」だったりするのでしょう?
私にはどうしてもわかりません。

私が何度も幼児・低学年期の機械的反復学習は危険性が高いと言っているのと同じで、脳が完成していない幼い時期に刺激の強いものを与えると危険性が高いという著者の主張のどこがおかしいのでしょう?

私はむしろ、この本を世に送り出すこと自体、かなりの覚悟が必要だっただろうと思います。今や私達の生活には欠かせないものとなってしまっているテレビやビデオ、携帯電話、更に最近では大人まで巻き込んで大流行しているテレビゲームなどのゲームに対し、真っ向から危険性を指摘することで、著者自身、恐らく誹謗中傷、場合によってはそれ以上の被害を被る可能性だってあると思うのです。
精神科医である著者がそんなことぐらい予想しないはずはないと思うのです。

世の多くの大人が薄々は感じているのではないかと思うのです。テレビやビデオ、ゲームを長時間子どもにさせていては何か悪影響があるのではと。
ただ、私達自身、テレビがあるのが当たり前の環境で大きくなり、少し後の世代では、子どもの頃からビデオやゲームも当たり前のようにある環境で大きくなっているだけに、その危険性を認めることを躊躇ったり、自分達が大丈夫なんだからと特に意識をせずにいたり(気にしないようにしたり)するのではないかと思うのです。

著書の中には色々なデータや専門的な言葉、難しい言葉なども沢山出てきます。
正直言って、私にはわかり辛いこともありましたが、データや難しい表現を全部読み飛ばしたとしても、それでも読んでみる価値はあると思うのです。

著書の中で岡田氏は、メディアの脳に対する悪影響について、アスベスト被害や水俣病被害などを例に挙げておられますが、科学的データが出揃って、やはり危険だとみんなが認識する頃には取り返しのつかない大きな被害が出ているというのが大抵のパターンです。
大切な子ども達が取り返しのつかない状態になって初めて気づく不幸は当然ひとりでも少ない方がいいに決まっているのです。

読んで共感するかしないかはわかりません。どう評価・判断されるかもわかりませんが、情報のひとつとしてひとりでも多くの方に是非読んで頂きたいと切に思っています。

ご紹介したいところはいくらでもあるのですが、キリがないのでごく一部抜粋でご紹介します。(以下青字部分引用)

 本書で取り上げた問題には、水俣病をはるかに凌ぐ規模の、膨大な数の人々の健康や人生がかかっている。だが、その一方で、はるかに莫大な利益がからむ問題でもある。その影響は、日本だけでなく、アメリカやヨーロッパやアジア、オセアニアの国々までを覆う。多くの企業と利害関係者がもつれあっている。学者や研究者といえども、当然その利害の渦に巻き込まれている。政治家やマスコミさえ、その柵から自由ではない。中立性を保ち、利益集団の利害と無関係に発言することは、非常に難しく、勇気がいるのである。
 いくら論理的に、客観的に証拠立てて論証しようとしても、さまざまな中傷や反撃が襲いかかってくる。もっと権威ある存在を担ぎ出してきて、事実を巧みにねじ曲げようとするだろう。だが、それに気づいた者が一人でも多く、真実の叫びを上げるしか、これ以上の不幸を押しとどめる手だてはないのである。

 逆に、ゲーム産業の側から見れば、幼いユーザーを獲得することは、末永く利用してくれる固定客を獲得することにほかならない。しかも、こうしたコアなユーザーは、ゲームの強い擁護者であり、支持者でもある。早い段階で「洗脳」して「信者」にしてしまうようなものなのである。その快感を組み込まれ、「信者」となった幼い脳は、親や教師の言うことにも耳を貸さない。その点は、カルト宗教の「信者」に近いものがある。幼い頃に、一旦できあがった「信仰」は、生涯変わらない刻印を心に残すともいえる。彼らは、大人や他人を信じなくても、「ゲーム」を信じるのである。

 そうした状況(テレビやビデオ漬け)を作り出してしまう原因の一つは、ある思い込みによる。それは退屈させることが悪いことであるという思い込みである。子どもが退屈したらいけないので、すぐに気を紛らわすものを与えようとする。そこから、メディアへの依存も生まれてしまうし、将来のさまざまな依存症の種を蒔くことにもなる。(中略)
 子どもを退屈させることが悪いことだと思ってはいけない。むしろ、逆である。子どもをほどよく退屈させることは、心の発達にとっても必要なのだ。退屈し、子ども自身が何かをしようとすることが自発性の原点なのである。

 悪循環を止め、メディア漬けの状態を一週間だけでもやめてみればいい。そうすれば、あなたはどれほど自分の脳に、余分な情報負荷がかかっていたかを感じるようになるだろう。過負荷から解放された脳は、徐々にダメージから回復を始め、リフレッシュしていく。過剰な情報がどれほど心に無理を強いていたかを実感するようになるはずだ。
 これからの新しいライフスタイルは大量の情報をむやみに取り込むことではない。むしろ、質のいい情報を、ほんの少しだけ嗜むスタイルの洗練が求められるのである。だらだらと情報のシャワーを浴び続けることをやめ、脳に空白とゆとりを残すことが、心の健康のためだけでなく、真の意味で豊かな生活を送ることにもつながるのである。

300ページあまりの内容の極々一部の抜粋ですが、この文章のどこに「お金儲け」のために書いたと感じられるところがあるのか、私はやはり不思議でなりません。

私自身、忙しくてテレビはほとんど見なくなりましたが、ネットなどに取られている時間をもう一度しっかり見直してみなくてはと思ったりしています。

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コメント

元・学生さん、初めまして。
大変有意義なコメントありがとうございました。
ご紹介くださった本、すぐには無理ですが少しずつ読んでみたいと思います。
(手持ちの本を昨日リストアップしたところで、新たな本はなかなか読めそうに
ないのですが。。。)
このコメント、記事に引用させてください。もしも不都合がありましたらお手数
ですがお知らせ頂けると幸いです。

投稿: TOH | 2006年4月14日 (金) 01時56分

「お子さんを持つ方」に紹介するには、やや適していない本なのではないかと思います。
岡田氏の著書は話題を呼んでおり、複数のブログなどで大勢の方が感想を書いておられますが、書の内容に対して否定的でない方は、必ず感想に「怖い」の一言があります。岡田氏の意図がどうあれ、この書籍は読んだ人に恐怖を覚えさせる書き方をしてしまっているということです。
人間、恐怖を感じるものに対しては冷静な判断はできないものです。この本を読まなければゲームとうまく付き合えていたかもしれない親御さんが、無理に子どもからゲームを遠ざけようとして口論になり、親子関係にひびが入る・・・などという弊害が起こることも、ありえないとは言い切れないでしょう(極端な例ではありますが)。

また、久保田競氏の『バカはなおせる』によると、「ゲームをやっていると脳に悪いのでは?」などと不安や罪悪感を感じながらゲームをするのは脳に悪いそうですが、ただ「このゲーム面白いなあ」と楽しみながらするのなら、脳の発達にはいいそうです。
この説が正しいとするなら、岡田氏の著書を読んでゲームに対して悪い印象を持つことそのものが、脳にとって良くない影響を及ぼすかもしれません。

子どもを持つ親御さん方に紹介するのなら、ただ「ゲームが悪い」と主張するだけの書籍ではなく、「どうすればゲームと上手に付き合えるか」を述べた書籍の方がよろしいのではないでしょうか。
例えば、二階堂正直氏の『テレビゲーム時代の子育て』や香山リカ氏の『テレビゲームと癒し』などでは、精神科医としての立場から、ゲーム好きな子どもにどう対応すればよいのかが語られていますし、前述の『バカはなおせる』では、子どもも含め全年齢帯で「脳にいいこと、悪いこと」が紹介されています。
また、家庭での応用は難しいかもしれませんが、倉戸直美氏らの『コンピュータを活用した保育の実際』では、幼稚園での保育カリキュラムに簡単な手作りのゲームを用いたことと、その様子を記録されています。

長くなってしまいましたが、何らかの参考になれば幸いです。

投稿: 元・学生 | 2006年4月14日 (金) 01時26分

水俣病は、御用学者が「科学的でも何でもない似非科学」を押し立てて、
世界の常識である検証・対策を無視してのけたことが、被害の淵源です。
だから今でも、旧環境庁の審議会でのさばっていた連中の論文は、
関連学会で全く取り上げられません。と言うか、学会に論文を送らず、(そもそも「論文」なんて書いてないけど)
検証を逃れることで、未だに「自分たちは間違っていない」とほざき続けているのです。


水俣病をモデルケースにするなら、
批判すべき相手が誰になるかは、自ずから明らかなはずなのですがね…


投稿: 別に反論しなくてもいいけど異見として | 2006年4月13日 (木) 23時52分

ハンドルネームすらお書き頂けないコメントにどうお返事をしていいものか
正直悩んでいます。
ブログのタイトル下に書いておりますように、私は子どもを持つ親御さんや
仕事で子どもに関わる大人(私がいう「子ども」は主に幼児・小学生ですが)
の方に何か参考になるかもしれないと思う本をご紹介するために書いています。

あくまでも私の主観的な読み方ですので、反論や批判をご紹介頂くのは他の
皆さんにも参考になるかと思いますし、そのまま残しておくつもりですが、
限られた文字数で私の気持ちをきちんと理解して頂くことは恐らく無理だと
思いますので、ここでの反論その他は差し控えさせて頂きます。
どうぞ宜しくご理解の程お願い致します。

投稿: TOH | 2006年4月13日 (木) 01時43分

通りすがりですが気になったのでコメントさせてください。
読んではじめは違和感を覚えましたが、「ものすごく乱暴な言い方をすれば、データが全て嘘でも、または一臨床医の立場で感じたことを書きましたと言われても、私の感じ方は同じだと思います」を読んで理由がやっとわかりました。
あなたは読んだ本の内容を検討・理解したいのではなく、そこに自分の代弁者を探しておられたのですね。
だから極端に言えば内容の妥当性などはどうでもよく、結論が自分の思いと同じでさえあればそれでいいわけです。占いに根拠が必ずしも必要でないのと同じです。
インテリジェスさんは考えながら、管理人さんは思いながらこの本を読む。
感想が前提からして異なるのは自明の理というわけです。

投稿: なるほど | 2006年4月13日 (木) 00時48分

こんな批判をする臨床医もいますね。

http://childdoc.exblog.jp/3146908/

教育学者の広田照幸氏の著書「教育依存と教育不信の時代」という本を読めば
岡田氏の手法の一端が垣間見れます。

後は精神科医・滝川一廣氏の「こころはどこで壊れるか」も岡田氏の著書のいい反証になりうる新書だ。

投稿: こんな批判も。 | 2006年4月11日 (火) 23時22分

色々な方の批評までご紹介頂きありがとうございます。
私が言わんとすることがうまく伝えられないことが残念です。
ものすごく乱暴な言い方をすれば、データが全て嘘でも、または一臨床医の立場で
感じたことを書きましたと言われても、私の感じ方は同じだと思います。
全てのゲームが危険だとも思いませんし、危険性が高そうなゲームでも大丈夫な人も
いると思っています。
うまく言えませんが、別に私は立派な人間じゃありませんし、「たかがそれだけ」の人間
なのだと思います。
だけど、科学的データでは説明のつかないものが世の中には沢山あると思っています。

投稿: TOH | 2006年4月11日 (火) 01時41分

作家・川端裕人氏の書評
http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/2006/02/post_ade9.html
精神科医・風野春樹氏の書評
http://psychodoc.eek.jp/diary/?date=20060202#p02
評論家・松沢呉一氏の書評
http://www.pot.co.jp/matsukuro/archives/2005/12/18/109726
たこの感想文(書評)
http://takoyaki-tako-tako.de-blog.jp/takotako/2006/01/post_545e.html
東北大生・後藤和智氏の書評
http://kgotoworks.cocolog-nifty.com/youthjournalism/2006/01/post_23e1.html

やはり筆者の危惧のとうり洗脳されましたか・・・・
金儲けとかそういった批判じゃないのですがね。少年犯罪の実態やドーパミンの研究などあまりにも科学的に誤った記述があるのが問題なのですが。
このような本を批判的に読解する能力がなかった・・・貴方はそれだけの人だったということですか・・・残念でならない。

投稿: インテリジェンス | 2006年4月11日 (火) 01時20分

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